これからの時代を生き残るコンテンツとは?【SENSORS IGNITION 2017 INNOVATORS SESSIONレポート】
03MAY

これからの時代を生き残るコンテンツとは?【SENSORS IGNITION 2017 INNOVATORS SESSIONレポート】

編集部 2017/5/3 08:00

虎ノ門ヒルズにて、3月23日(木)に「SENSORS IGNITION 2017」が開催。メインホールで行われたINNOVATORS SESSIONでは、メディアの分野で活躍する先駆者たちが、クリエイティブ、AI、コンテンツ、TVCM、未来への投資などをテーマにトークセッションを繰り広げたほか、EXHIBITION BOOTHでは「映像×AI顔認証」「分身ロボットOriHime」など、スポンサーを含めて40ブースが出展した。

Screensではその中から、テレビなど映像メディアの未来が語られた2つのセッションをレポートする。1つ目に取り上げるセッションは、「これから生き残るコンテンツ」について。

中村洋基氏(PARTY Creative Director/Founder)がモデレーターとなり、古田大輔氏(BuzzFeed Japan 創刊編集長)、佐藤ビンゴ氏(Vice Media Japan inc.CEO.General Manager)、栗原甚氏(日本テレビ 演出・プロデューサー)から、コンテンツをどのように作るのか、また何を考えて作っていくのかを伺い、タイトルの問いに対する答えを探っていくといったスタイルで進行した。

■「人の心が動くのは何か」という問いを科学する

中村洋基氏(PARTY Creative Director/Founder)

まずは中村氏が古田氏に“バスフィードの裏側”について質問。中村氏は、「『BuzzFeed』は、まずはアメリカで、それ以降は世界、そして日本へと展開しています。飽和するウェブメディア業界のなかで、彼らのシェアされる記事の多さに注目が集まっていますが、世界にこういうことをして勝ってきたという戦略はありますか? また、日本では“こう切り替えてやってきたと”いうものがあるのでしょうか?」

これに対し古田氏は、まず“Buzzることを科学する”という言葉を使い、以下のように回答した。

古田大輔氏(BuzzFeed Japan 創刊編集長)

「グローバルな戦略についてですが、“人の心が動くのは何か”というのを分析してやってきました。具体的には、ある人が何かを見ていて、それをシェアしたいと思うのはなぜなのか、ということを科学していくということです。そもそも私たちは“Buzzる”というものを、〝読んでもらった人にシェアをしてもらう、そこにコメントをしてもらう、いいね! をしてもらって広がっていく″ことだと定義しています。だからこそ“こういう見出しって流行るよね”“こういうテーマのコンテンツが読まれるよね”で終わるのではなく、そこから“何が人をシェアさせたいとかりたてるのか”というところを常に考えてきました」

「読んでもらうにはどうしたらいいか」を考えるメディアが多い中、「BuzzFeed」はそこからさらに「シェアしてもらう」「コメントをもらう」ことを狙ってきた時点で個性を出してきたのではないだろうか。さらに古田氏は、

「それを日本で展開したときには、“何に動かされるのか”について、世界との違いを見つけ、そこを日本人向けにチューニングするようにしました。そもそも人の心が動く根本的な部分は他の国と変わりませんが、何に動かされるかというのは違うことに気づいたからです」

確かに世界に目を向けたとき、何が正しくて何が間違っているかというような価値観に大きな相違はないだろう。しかし文化や宗教、慣習の多様さを鑑みると、海外と日本では関心の大きさに偏りがあるのは想像がつく。そこを曖昧にするのではなく、コンテンツごとの反応をチェックし、次に反映させるという徹底した分析が、読者が『BuzzFeed』記事のシェアをする量を支えているのかもしれない。

[BuzzFeed]

■「作るのが好き」という想いを貫いてドキュメンタリーをつくる

続いて中村氏は、イスラム国やイスラエルを取材し、日本人ではなかなか考えられない取材力を見せて、ユーザーを驚かせている佐藤ビンゴ氏に話を聞いた。

佐藤ビンゴ氏(Vice Media Japan inc.CEO.General Manager)

「今の日本は、とにかく(インターネット上での動画の尺は)短くという文化じゃないですか。それに対してVICEは10~15分くらいの尺の動画を配信していますよね。あえて長くて濃いものをやるというのはなぜなのでしょうか?」

中村氏の質問に対し佐藤氏は、「作るのが好きだからつい長くなっちゃうんですね」と笑うが、「ある国に侵攻される前と後の現場を取材していれば、字幕などがなくとも生活が変わっていたり、住民の目つきが鋭くなっていったりするのが映像を通して伝わるんです」。

これに古田氏は、「VICEの好きなところは“横から目線”です。一般の人がもつ疑問をそのままぶつけている。そこがこれまでのプロフェッショナルがやっているコンテンツとは違うところ」と付け加えた。

そして、佐藤氏は「アレッポでイスラム国に対抗している勢力のボスに取材に行ったときもそうなんですが、身近な付き合い方をしながら取材をするのがうちの特徴です。その場に行ってとにかく話す。どちらが正義かというところを検証するなどはないんです」

どのメディアも「独自視点」を持つことが一般的な中、こうしたプレーンな姿勢は一般のユーザーからすると珍しく映るのではないだろうか。

世界30ヵ国以上に支部を持つデジタルメディアVICEは、日本では2002年から2009年にフリーペーパーとして発行されており、2012年に映像分野を立ち上げた。これまでに戦闘地帯での取材、福島の20km圏内に滞在している男性へのインタビュー、沖縄のサメ狩りの様子など、一見すると社会問題への警告を示しているようなテーマを扱ってきたが、ユーザーからすると何かを押し付けられている感覚がしないのはなぜか。

それは「一般的にこのくらいの時間」という枠にとらわれず、佐藤氏らが作りたいものを作り、ありのままに見せているからだろう。

[VICE]アレッポの生霊① シリア反体制派の素顔

■世界をかけめぐる『マネーの虎』

日本でも根強いファンを持つ日本テレビの『マネーの虎』は、今や世界31ヵ国で放映されている大型番組だ。この企画・総合演出・プロデュースを担当した栗原氏が“バイブル”を作成し、それをもとに各国で番組が作られている。その際も、演出や監修などは栗原氏が担当している。

「栗原さんがプロデュースされた『マネーの虎』のフォーマットは、今や世界中に売りだしているんですよね?」と中村氏。

栗原甚氏(日本テレビ 演出・プロデューサー)

これに対し、栗原氏は「そうですね。今のところ31ヵ国でしたでしょうか? そもそも、最初に『マネーの虎』のフォーマットを買ったのは、イギリスのBBCだったというね。そのときのプレゼンでは、言葉が分からなくても伝わるような映像が必要だと考え、イギリスの文化に馴染み、かつインパクトのある映像を流したところ、プロデューサーらの関心を一気に引くこととなったんです」。

しかし、栗原氏は「フォーマットを売って終わりじゃない。アフターケアがしっかりしてないと続かない」と指摘。実際、今でも世界中から悩み相談が来るため、日々対応をしているという。先日、番組をやっているプロデューサーたちがロンドンで「マネーの虎サミット」を行なったところ、現場での悩み、視聴率に関することなどを皆で話し合うことができたとのこと。それによってこの先の10年も見えたと自信をのぞかせる。2016年の中国、メキシコ、ケニア、ブラジルに続き、今年も数か国で放映が始まる予定とのこと。

■これから生き残るコンテンツとは?

最後に今回のテーマである「これから生き残るコンテンツ」について中村氏が「これから生き残っていくんじゃないかな、もしくは生き残らせたい、というコンテンツを教えてください」と質問。

古田氏「人の心を動かすポイントは4つあると考えています。knowledge(人に知識を与える)、emotion(人の感情を動かす)、identity(自分はこういう人です、というのをそのコンテンツを通じて人に紹介できる)、aspiration(これをやってみたい)です。このように人が知識やインスピレーションを得たいという気持ちは未来永劫なはずなので、そこに迎合するコンテンツをつくっていきたいですね」

佐藤氏は、「(古田氏の発言に対して)すごいな……(笑)。私は、そうですね、攻撃性、笑い……ウォーリアーかな」。これに対し中村氏は、「攻撃性を笑いにということでしょうか(笑)。VICEをあらわしているようですね」とコメント。

続けてふられた栗原氏は、「オリジナルですね。これしかない。同じような番組の企画書を作ってもその場で跳ねられてしまうんです。ですからクリエイターたちはプライドを持ち、自分を信じて仕事をしています」

打ち合わせの段階で話が盛り上がりすぎたため、当初の時間よりも10分長く時間を設定したという今回のセッション。それにもかかわらず、さらに時間をオーバーしてしまうほどの盛り上がりを見せた。それぞれが「何を」「だれに」伝えるのかを徹底的に分析し、作り手として自分たちのアイデンティティを持ってコンテンツ作りに努力していることがわかった。

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