データ×AIが生み出す視聴者のニーズをとらえたテレビ番組
06OCT

データ×AIが生み出す視聴者のニーズをとらえたテレビ番組

編集部 2017/10/6 10:00

業界人によるトークセッション「シェイク!Vol.12」が、9月28日に株式会社IPG本社(東京都中央区築地)にて開催。今回は「AI」や「ディープラーニング」をキーワードに、NHK 人工知能×野球解説 「ZUNO(ズノ)さん」プロジェクトのNHK制作局 開発推進ディレクター・小国士朗氏、NHK編成局の有沢慎太郎氏、Dentsu Lab Tokyoのクリエーティブ・ディレクターの田中直基氏、そしてスポーツデータの収集・分析・提供や分析ソフトの開発などを行うデータスタジアム株式会社からは野球担当アナリスト・金沢慧氏の4名と、大の阪神ファンであるという博報堂DYメディアパートナーズの森永真弓氏をモデレーターとして、AIをどうエンターテイメントに組み合わせるかといったトークセッションが行われた。今後、テレビ業界でもAIがどう活用されていくのかを紹介したい。

■AIとの共生~ZUNOさん開発秘話~

ディープラーニングなどのデータテクノロジーを用いて、野球というスポーツに新しい視点(解説)を提供するというミッションのもとに誕生した“ZUNOさん(本名:頭野さん)”は、データスタジアム社提供の2004年から記録されている300万球を超える打席データを学習し、配球や勝敗、順位などを予測したり、データマイニングを応用したりすることで、これまで人間の解説者では見つけることのできなかった選手の傾向や試合状況に応じた投球の解析を行っている。そんなZUNOさんは、どのような経緯で開発されたのか、当時の様子を小国氏はこう語る。

小国士朗氏

「一般的にAIと聞くと、人間と相対する存在であり、時として脅威の存在と思われてしまうことがありますが、AIと人間どちらがより優れているかではなく、共生できるような試みをしたいねと田中さんと話し合いました。そして辿り着いたのが、その日のコンディションにも左右されるスポーツの野球であれば、面白いことができるんじゃないかとなり、ZUNOさんの開発に至りました」

田中直基氏

これまでにないAIとの共生をテーマにした今回のプロジェクトについて「AIにエンターテイメント性を持たせると面白いことができると思ったので、商業やビジネス向けとして活用されるAIではない、遊び心満載の取組みがしたかった」と田中氏も続けた。

■これまでにないデータ×エンターテイメントの創造

有沢慎太郎氏

ZUNOさんの開発・運用にも編成として関わった有沢氏は、本プロジェクトを打診された時のことを、「単純に面白そうと感じた」とし、「テレビを見てもらうには、誰もやったことがないこと、スポーツのジャンルで言えば、今まで中継してきた以上のプラスアルファが必要だと思っていた」と、当時からある課題を口にした。

ZUNOさんは、人間には扱えないほどの膨大なデータ量を解析することで、今まで見つけることが難しかった複雑な条件を組み合わせたデータ解析や隠されていた選手の傾向、能力などを発見するなど、データマイニングという手法も取り入れている。そのため、「特別なカウントで打率が上がる選手」「特別な出塁状況によって、三振率が上がる選手」「プロ野球選手全体的に、金曜日には打率が下がる」など、知ると少しだけ野球を見る目が変わるような事実の発見も解説してくれる。

森永真弓氏

そんなZUNOさんの特性に対し森永氏は「ひいきのチームが大負けしていても、ZUNOさんが“9回裏で●●選手がホームランを打つ”とか予測していたら、絶対に最後まで見ちゃいますよね」と野球の新たな楽しみ方を提案すると、金沢氏は「かつてデータは、チーム強化の目的で使われていました。しかし、インターネットでもデータが使われるようになり、テレビでも楽しむ人が増えてきていることがわかります」とコメント。それに対し田中氏は、「“その情報って今いる?”といったことをあえて大事にすることで、野球がよりエンターテイメント性を持ち、楽しんでもらっているのでは」と続けた。

金沢慧氏

事実、8月にNHK BS-1で生放送された阪神VS巨人戦でのリアルタイム配球予測では、テレビで生中継を見ながら、同時に手元のスマホのスクリーンでZUNOさんの配球予測を楽しんだという声が多く届いたという。そうした新しいテレビ視聴スタイルが浸透していくためには、今回のZUNOさんプロジェクトのようなエンターテイメント性といった新たな価値の創造が必要だと語られた。

AIによるリアルタイム配球予測

■AIをテレビ番組で活用するなら?

森永氏から、AIを活用した面白いテレビ番組ができないかといった問いが投げられると、一同「面白いことはできそう」といった意見が。例えば、番組の司会者やアナウンサーの相方役として利用したり、ディスカッション形式で利用したりする手もあるなど、それぞれ口々に語られた。

金沢氏は「どういう番組にしたいか要望があれば、それによりAIの演出、利用の仕方が変わるが、幅広く対応できると思う」とし、小国氏は「AIのいいところは場の空気を読まないところ」としたうえで、「相手が誰であれ問題提起できるし、答えを出すためにいるわけではないので、楽しい番組制作ができると思う。AIと聞くと、正しい答えを出すロボットというイメージを抱きがちだが、決してそんなことはない」と続けた。

というのも、昔から日本の人気アニメに出てくるロボットのキャラクター達は、どこか抜けていてお茶目だから慕われている。そうした点にこそ、諸外国にはない、日本の国民性であったり、特化している点だというディスカッションがなされた。

■2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて

最後に、2020年の東京オリンピック・パラリンピックではAIで何ができるかというお題に対し、日本ならではの取組みを世界に発信するチャンス! という意見があがった。昨今では、野球デジタルプラットフォーム「BASEBALL GATE」といった新たな取組みが行われたり、各種スポーツでもデータ集計や分析が当たり前のように行われるようになっている中、データで楽しむ施策が徐々に増え始めているのは事実だろう。それに伴い、視聴者のニーズも多様化しており、勝敗や結果を重視する従来のスポーツの楽しみ方に加え、結果の裏側にあるデータに注目したり、徹底して選手にこだわるなど自分なりの楽しみ方に惹きつけられ注目している傾向がうかがえる。そうした中、AI技術が加わることで、2020年東京オリンピック・パラリンピックでは、よりプレミアムな視聴体験が望めるのではないかという期待が寄せられる内容だった。訪れる2020年に向けて、どのような活用がなされ進化を遂げるのか、その動向を見ていきたい。


尚、次回(10月20日)の「シェイク!Vol.13」は、「どうしたら作れる、面白い企画 3rd」。過去2回同様、伊藤隆行氏(テレビ東京 制作局 CP制作チームプロデューサー)、米光一成氏(ゲーム作家 / ライター / デジタルハリウッド大学客員教授)、佐藤ねじ氏(アートディレクター / プランナー)が出演する。

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