視聴ログをどう活かす?(1)「視聴ログを活用した取り組み 最新状況」【VR FORUM 2019】
22MAR

視聴ログをどう活かす?(1)「視聴ログを活用した取り組み 最新状況」【VR FORUM 2019】

編集部 2019/3/22 10:02

株式会社ビデオリサーチ(以下、ビデオリサーチ社)が、東京ミッドタウンにて開催した「VR FORUM 2019」(2月13日、14日)より、14日に行われた「視聴ログをどう活かす?(1)視聴ログを活用した取り組み 最新状況」をレポートする。実数(全数)のビッグデータである視聴ログ。それらを活用するために、どのような取り組みが行われているのか。その最先端を、株式会社テレビ朝日でビッグデータ担当部長を務める松瀬俊一郎氏、三井物産株式会社でデジタルマーケティングを手がける南原一輝氏、株式会社ビデオリサーチのデジタル企画推進を担当する藤森省吾氏が、テレビ、デジタル、調査会社、それぞれの立場から紹介した。

■精度の高い視聴データでテレビの過小評価を解消する

テレビの視聴ログの活用について、ビデオリサーチ社は、視聴ログデータと「視聴率」という代表性のあるデータをフュージョンし、生活者の家族構成、個人ごとのテレビ視聴状況を付与していくという。さらに、「ACR/ex(生活者をフラットに捉える大規模シングルソースデータ)」を活用することで、個人プロフィールをリッチ化し、視聴ログに「個人の顔」をつけ、マーケティングデータに活かそうとしている(※詳細は、テレビパート「テレビのメディアデータ整備の考え方」参照)。

藤森省吾氏

ビデオリサーチ社の藤森氏は、「視聴率のデータをベースにしているのが、当社らしいところ。代表性のある“率”と、ログである“実数”、両方のいいところを取るために、個人分離(推計)を行っている」と語った。

松瀬俊一郎氏

テレビ朝日の松瀬氏は、同局と在京民放5社も、視聴データの収集に力を入れている現状を語った。視聴データの収集方法は、テレビ朝日の場合、オプトアウト型で、ネット接続したテレビからデータ放送を通して収集し、それを外部DMPとデータ連携して属性を付与し、分析しているという。

これらのデータの活用は、編成や制作面では、番組の質の向上等による視聴者サービス。ビジネス面では、放送とデジタルメディアを組み合わせたビジネスの開発に役立てていくとのこと。また、営業面では、アドバタイザーのニーズに応える手段となるという。「視聴者プロフィールの明確化。CM出稿効果の証明。大量実数データによる集計・分析など、テレビのデータ不足や過小評価を解消していく」と松瀬氏。

また、在京民放5社が視聴データを集約・分析する共同技術実証実験を実施したことも報告。期間は、2019年1月21日~2月4日。実験の目的は、地上波放送とインターネットの同時配信についての技術的な検証とのこと。このときの視聴データの価値や活用については、今後の議論が待たれるところ。「テレビは公共性が高いメディアなので、リターゲッティング広告、第三者提供などへの活用は現在行っていない」と松瀬氏は現状を語った。

■テレビの視聴体験が、モバイルの広告出稿と連動する技術も

ビデオリサーチ社も、テレビ局も、視聴ログという塊からフィルターをかけて、個人を推計していくアプローチだった。しかし、三井物産の南原氏が関わっているDrawbridge社のクロスデバイスソリューション「Connected Consumer Graph(R)」は、まったく逆のアプローチ。

一つひとつのブラウザやデバイスから、個人を推計し、世帯を推計していく流れとなっている。ブラウザやデバイスが異なると、「別人」と認識されるのがデータの世界。それらに対し「Connected Consumer Graph(R)」は、ユーザーからログインを取得することなく、PC、スマートフォン、タブレット等の端末のIDを、独自の推定技術で「同一人物」に紐付けることを可能にした。

アメリカでのデータについては、その精度をニールセン社が97.3%と認定しているという。さらに、2018年には「個人」から世帯共有の端末である「テレビ」にも紐付けられるようになったとのこと。このソリューションは、2017年より南原氏らが日本にも展開。現在、約6,500万人分のデータを保持している。

南原一輝氏

これらのデータ活用の方向性について、南原氏は2つの例を紹介。一つは、「モバイルからテレビへ」。スマホやPC、タブレット等一人ひとりのデバイスのデータを基に、家族共有のテレビに広告を配信すること。もう一つは「テレビからモバイルへ」。テレビの視聴履歴を基に、家族それぞれのスマホやPCに対して広告を配信することも技術的には可能になる。位置情報を基にオフラインでのコンバージョンも計測可能とのことだ。実用化が進むアメリカでは、後者の利用が一般的と南原氏は語る。

ただし、視聴ログの活用については、日本ではまだ個人分離の精度向上や個人情報の扱いなどに課題がある。一歩先を行くアメリカでも、利用は始まったばかり。試行錯誤を続ける必要があるというのが、3人の一致した見解だった。今後の展開に注目していきたい。

ビデオリサーチが取り組む「新視聴率計画」の“現在地とこれから”【VR FORUM 2019】

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