テレ東・TBS担当者が語る「デジタル媒体へのコンテンツの出し方」 〜ブライトコーブ株式会社『REC ONE』レポート
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テレ東・TBS担当者が語る「デジタル媒体へのコンテンツの出し方」 〜ブライトコーブ株式会社『REC ONE』レポート

マーケティングライター 天谷窓大 2019/11/11 07:00

2019年9月4日、東京・渋谷のTECH PLAY SHIBUYAにてブライトコーブ株式会社主催のイベント『REC ONE』が開催され、動画メディアを中心としたコンテンツホルダーの担当者が「可処分時間の奪い方」をテーマに様々なトークセッションを繰り広げた。

本稿ではテレビ局担当者によるデジタル媒体へのコンテンツ展開というテーマのもと、株式会社テレビ東京ホールディングス 技術IT統括局次長の蜷川新治郎氏による「FREE STYLE PITCH(短時間プレゼンテーション)」と、株式会社東京放送ホールディングス 総合編成局 総合編成部 部次長の岡野 恒氏が登壇したセッション「CCIが放送局に少しだけ聞いてみる 可処分時間の奪い方とデジタルトランスフォーメーションへのチャレンジ」の模様をレポートする。

■「コンテンツ、出せる媒体に全部出す」テレ東・蜷川氏

株式会社テレビ東京ホールディングス 技術IT統括局次長の蜷川新治郎氏は、15分の短時間プレゼンテーション「FREE STYLE PITCH」を通じ、テレビ番組のデジタル展開に向けて意見を述べた。

蜷川 新治郎氏

蜷川氏:ネット上における番組の違法アップロードが多いのは、私たちが十分にコンテンツを供給しきれていないから。一番の違法コンテンツ対策は、私達がちゃんと(デジタル)コンテンツを出していくこと。動画やエンタメに触れたい人がすぐにアクセスできるところにコンテンツをおかなければいけない。

蜷川氏は、「TVer」をはじめとするキャッチアップサービスのほか、「Amazonプライムビデオ」や「Netflix」などのSVODサービスへのコンテンツ供給にも強い意欲を見せた。

蜷川氏:視聴者の認知をとにかく確保することが大事。これまでテレビは、「どんな場所にもあるもの」だったが、いまはその前提が崩れてきている。「何人に届いた」という人数だけで効果を測るのではなく、ユーザーの「ロイヤル化」を進め、エンゲージを深めていかなくてはならない。出せるところに全部出し、まだ見ていない人に番組を届ける。そして、番組を見てもらった人を、さらに引っ張り込んで、つながりを強くしていく仕組みが不可欠だ。

SVODサービスをはじめ、外部サービスとの連携については各局で対応が分かれているが、蜷川氏は「(外部サービスへのコンテンツ供給は)“性善説”でやっていくべき。新しい所と組んで、すべての媒体に出せば認知は最大化する。そこから、どうやってロイヤルユーザー化を進められるかこそがカギ」と強調した。

■「地上波への導線や広告媒体として位置づける」TBS・岡野氏

國分 寿隆氏
岡野 恒氏

「CCIが放送局に少しだけ聞いてみる 可処分時間の奪い方とデジタルトランスフォーメーションへのチャレンジ」は、株式会社サイバー・コミュニケーションズ(CCI)の主宰によるセッション。同社ブロードキャスティング・ディビジョン エグゼクティブ・スタッフ兼グループ・マネージャーの國分寿隆氏がモデレーターを務め、スピーカーとして株式会社東京放送ホールディングス 総合編成局 総合編成部 部次長の岡野 恒氏が登壇した。

岡野氏は、無料キャッチアップサービス「TBS FREE」や「TVer」、今年7月より有料動画配信サービス「Paravi」を担当。最近は動画プラットフォーム全体での視聴者数の増加を実感しているという。

岡野氏:「TBS FREE」は、アプリのダウンロード数をふくめユーザーを増やしている。民放合同の無料キャッチアップサービス「TVer」については、番組再生数が自社サービスよりも大きく伸びている。現状、TBSとしては「TVer」へのコンテンツ供給に注力する方針をとっている。

無料サービスの「TVer」と有料サービスの「Paravi」。両者の棲み分けについてTBSではどのように考えているのか。岡野氏は次のように述べた。

岡野氏:地上波でのドラマを放映後、“見逃し配信”として「TVer」と「Paravi」へ案内したのち、「Paravi」でのみオリジナルコンテンツを展開している。「TVer」は次回の放送までのあいだ番組を楽しんでもらうための場所として機能させ、(サイドストーリーや過去回などの)他エピソードは「Paravi」で配信するという棲み分けを行っている。

外部SVODサービスとの連携については「現状検討していない」と岡野氏。その一方で「自社で広告セールスできるプラットフォームがあるならばやってみたい」とも述べ、可能性をのぞかせた。

ユーザーを引きつけるためのマーケティングについては「番組を見ていない人にどうプロモーションするかが大事」と岡野氏。テレビ東京・蜷川氏と同じ見解を述べた。

岡野氏:いま一番知りたいのは「テレビ(視聴率)と配信(視聴者数)の相関関係」。放送とネット配信のそれぞれにおいてUU(Unique User:実ユーザー)数の拡大をどうやれば良いのかを考えている。現状、ネット配信をすれば地上波の視聴率も連動して上がるとは必ずしも言い切れないが、番組を見てもらうための手段は着実に出来てきていると思う。(ネット配信を通じて獲得した視聴者が)のちのち地上波(での視聴)に帰ってくるかもしれないし、配信に広告を出そうと思う人が今後出てきてくれるかもしれないと思いながら、デジタル媒体へのコンテンツ展開に取り組んでいる。

岡野氏は、2019年度中にNHKが予定している地上波のネット同時配信についても言及。民放としての期待を述べた。

岡野氏:ネット同時配信については民放各社がそれぞれのやり方で慎重に検討している。TBSでは9月15日、東京オリンピック出場者選考を兼ねたマラソン大会『マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)』でのライブ配信を予定。これまでにないイベントを配信したときにどのくらいの視聴者数となるのか、期待をしている(※登壇した9月4日現在の発言)。今後の動画広告のセールス手法についても(枠を予め確保する)予約型広告以外の売り方を試すなど、同時配信におけるマネタイズの形を探っていきたい。

マスメディアとしてテレビ媒体そのものの認知を第一に考え、「テレビ番組を見てもらうための仕掛け作り」を念頭に置いた横展開の姿勢が印象的であったテレビ東京と、ビジネスの軸足を「新たな広告媒体の開拓」を念頭にデジタル配信を捉えるTBS。それぞれのスタンスの違いが鮮明に感じられる両セッションとなった。

■「CCIからDataCurrent、ターゲティング技術のアップデート」CCI・國分氏

最後の締め括りとして、CCIのセッション最後には、國分氏より、CCIのデータ提供やデータ基盤構築などのコンサルティング事業であるDataCurrent(データカレント)が、放送局の利用する広告配信プラットフォームSpotXなどと連携して、放送局で保有しない属性や興味関心データ等を使い独自の広告商品開発に活用できるようになったことや、ライブや同時配信を見据えたSSAI(Server Side Ad Insertion)でのcookieベースでのターゲティングも実験中であることを発表した。

メディアは、デジタルコンテンツの出し方、見せ方も重要であるが、広告収益化もテクノロジーを正しく理解と活用し、視聴者と広告主をエンゲージメントするために益々重要になってきていると感じた。

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