5Gが放送ビジネスに与えるインパクト【InterBEE2019レポート】
10FEB

5Gが放送ビジネスに与えるインパクト【InterBEE2019レポート】

編集部 2020/2/10 10:52

2019年11月13日(水)〜15日(金)、幕張メッセ(千葉県)において開催されたInter BEE 2019。その会場内のカンファレンスエリア「INTER BEE CONNECTED」で行われたセッションプログラムでは放送・広告業界における最先端の取り組みが紹介された。

本稿では11月15日(金)に行われたセッション「5Gが放送ビジネスに与えるインパクト」をレポートする。高速・大容量・低遅延という面で既存の4G(第4世代)通信を大きく凌駕すると言われる5G(第5世代)通信だが、実際にこの技術が人々の暮らしやビジネスにどんな影響を与えるのか、という面についてはまだ全体的なイメージが描ききれていないようにも見える。そんななか、放送業界に与える影響というテーマを中心に、5Gによって生まれる新たな暮らしの形を探る。

パネリストは株式会社インフォシティ 代表取締役 5Gモバイル推進フォーラム アプリケーション委員会委員長の岩浪剛太氏と、スタイル株式会社 代表取締役・WirelessWire News 発行人の竹田茂氏。モデレーターを株式会社毎日放送 経営戦略室 メディア戦略部長の齊藤浩史氏が務めた。

【関連記事】INTER BEE CONNECTEDセッションレポートをまとめてチェック

■5G技術はどう役に立つ?

冒頭、岩浪氏が世界における5Gのトレンドを紹介。世界的通信機器会社・エリクソンの予想によると、2023年には世界人口の20%まで5G通信が普及。

同じく大手通信機器会社・シスコ社の予想によれば、全世界のモバイルデータトラフィックは2021年には現在の7倍に増加し、うち78%はビデオデータが占めることになるという。

岩浪氏:ビデオデータの用途も爆発的に広がっていく。コンテンツとしての映像はもちろん、レシピ動画やライブコマースといった「ツールとしての映像」やVR・ARなど「拡張現実としての映像」、バーチャルキャラクターやライブ実況など「コミュニケーションとしての映像」、そしてネットワーク接続された機器類をモニターする用途にも活用されていくだろう。

5G技術を実現するのは、700MHzから26GHzまでのさまざまな周波数帯の電波。電波が持つ性質として、周波数が低いほど広い範囲をカバーしやすく、高いほど多くのデータを伝送できる。それぞれが持つ特徴を組み合わせることで、求められる用途に応じた使い分けがなされていくと岩浪氏は語る。

岩浪氏:28GHz帯の電波は割当て幅が大きいため大容量のデータ伝送に適しており、スタジアムなど多くの人が集まる場所の通信やライブ配信などへ活用できる。周波数が高くなるほど電波の飛び方は光に近くなり、直進性を増す。裏を返せば周波数が高いほどカバーできる範囲が狭くなることを意味するが、比較的周波数の低い700MHz等では建物の影などにも回り込みやすい。これを活かして、都市におけるエリア通信において力を発揮するだろう。その中間にあたり、データでの伝送量とカバー量両方をあわせ持つ3.7・4.5GHz帯では、コネクテッドカーなど交通網での活用が広がるだろう。

5Gといえば公衆通信網のイメージが強いが、事業所内など限られたエリアに基地局を設置し、構内レベルで高速な通信を実現する「ローカル5G」も登場するという。

岩浪氏:これまでテレビ中継などの現場では膨大なケーブルで結線することで構築されてきたが、これらがワイヤレスになっていく未来もある。低遅延というメリットを活かし、機器をリアルタイムにモニターする用途にも5Gは活用できる。4Kカメラの映像を3箇所同時に制御することも可能になっていくだろう。

■5Gの肝は「低遅延であること」

発達めざましい5Gの現状だが、それがコミュニケーションをどう変革し、どう本質的なメリットを与えていくことになるのか。竹田氏が語る。

竹田氏:5Gのメリットは低遅延であること。高品質のコンテンツを一緒に楽しめる、同時性の担保という意味では大きな役割を果たすだろう。離れた場所同士でも同じ場所にいるかのようなコミュニケーションが可能になれば、特定の限られたエリアにおけるコミュニケーションの品質が高くなっていく。具体的には地域創生やローカルナレッジ(その土地ならではの環境によって生み出される知的資源)の共有に力を発揮していく。

大容量かつ低遅延な通信インフラによって現実味を帯びてくるのが、触感や気配といった「フィジカル(物理的・生理的)なコミュニケーション」と竹田氏。

竹田氏:人を動かす情報の本質は、かならずしもデータ量とは関係ない。たとえば人は、声や影といった「気配」の情報に心を強く動かされる。姿そのものを映像で伝えなくても、その人の影やシルエットを送ることで「その人の気配を場に出現させる」コミュニケーションもある。感覚など、これまで目に見えなかった情報を具現化し、実際に触ったり感じたりできるようにする「タンジブルビット」という概念があるが、5Gの発達によってこうしたものも現実的になっていくだろう。

■5G時代、放送局の姿はどう変わる?

5Gの登場によって、情報は「記号で伝える」時代から「フィジカルに伝える」時代へ──。竹田氏の提言は、これから生まれる新たな消費行動への示唆ともいえる。5G時代、放送局の姿はどうなっていくのか。

竹田氏:5Gの発達によって、場に特化したローカルナレッジが大きな価値を持つようになる。ローカル局はキー局とはちがった強みを持ち、存在感を増していくことになるだろう。

齊藤氏:世の中は「分散」の時代。個人の趣味が多様化していき、みんなで同じものや服を着るという時代ではなくなってきた。それぞれ地域ごとの個性が凝縮していく仕組みを5Gを活用しながら作り上げていければ、ローカル局の価値も上がっていく。

竹田氏:たとえ話だが、私の事務所は郵便局の隣にある。物理的な距離がほとんどないため、極端な話、私の事務所が郵便局の機能を持っているのと同等ともいえる。距離(の短さ)は財産になる。心理的な距離を縮められるのが5Gの本質であると思う。

5Gをはじめ、情報網の発達は情報のさらなる感覚化、ローカル化を加速させていくことになりそうだ。放送ビジネスを考えるうえで、よりピンポイントなターゲットの心を強く揺さぶるコンテンツづくりが求められていくのかもしれない。これからの動向に注目だ。

PAGE TOP