17 JAN

「J:COM LINK」に仙台放送「脳体操アプリ」導入の経緯 〜仙台放送×J:COM担当者インタビュー(前編)

編集部 2022/1/17 09:00

株式会社仙台放送(仙台市青葉区、以下「仙台放送」)は、国立大学法人 東北大学加齢医学研究所と「テレビいきいき脳体操アプリ(以下「脳体操アプリ」)」を共同開発。2021年11月25日より、JCOM株式会社(東京都千代田区、以下「J:COM」)が展開する4Kチューナー「J:COM LINK」(4K放送を含む放送サービスと動画配信サービスを融合させたAndroid TV搭載のSTB)向けのサービスとして提供を開始した。

本記事では、仙台放送 ニュービジネス開発局 ニュービジネス事業部長 太田茂氏、J:COM 次世代プラットフォーム戦略部 吉田功一氏と岡野理絵氏にインタビュー。前編となる今回は、脳体操アプリ開発のきっかけと、両社が連携に至った経緯を尋ねていく。

■番組制作のノウハウと産学連携の知見を活かし、アプリを開発

――「テレビいきいき脳体操アプリ」とは、どんなアプリですか?

仙台放送 太田茂氏

太田氏東北大学加齢医学研究所と仙台放送が共同開発した脳のトレーニングアプリです。仙台放送は2004年より『川島隆太教授のテレビいきいき脳体操』を放送しており、開発にあたっては、その番組制作のノウハウと産学連携の知見を活かしました。

――アプリの特色を教えて下さい。

太田氏世の中に「脳トレ」系のコンテンツは多数存在しますが、脳体操アプリは、「アプリの操作によって自動車の運転技能が向上する」ことが世界で初めて実証されており、2018年に特許も取得しています。実際に運転をしたり、シミュレーターを使用しなくとも、この脳体操アプリを使ってトレーニングを行うことで、運転技能や認知機能、感情状態の維持や向上を目指すことができます。

※参考資料  J:COM LINK 「テレビいきいき脳体操」アプリ搭載ゲーム

2021年4月からはアプリにAIを搭載し、プレーヤーが選択を誤った際の「惜しさ」を解析することで、より1人1人に最適なトレーニングを提示するようになっています。

――アプリのターゲット層としては、どのような方々を想定していますか?

太田氏昨今の高齢ドライバーによる事故の多発を受け、高齢者の方々の安全運転をはかる目的で開発をスタートしましたが、実際に多くの方々にアプリを使っていただくなかで、20代から70代まで、どの世代でも運転技能が高まることが明らかになってきています。

高齢者はもちろんですが、お仕事で車を運転されるプロのドライバーや、日々の通勤で車を利用する方など、運転に関わるすべての方に幅広く使っていただけたらと思っています。

■我々の“ホーム”である「テレビ」で継続的なアプリ体験を提供

――「J:COM LINK」への搭載は、どのような経緯から決まったのでしょうか。

J:COM吉田功一氏

吉田氏2019年の夏頃にメディアの記事で脳体操アプリのリリースを知り、仙台放送さんに直接ご相談をさせていただいたのがきっかけです。

「J:COM LINK」はGoogle社のテレビデバイス向けOSである「Android TV」をプラットフォームとする放送とOTTサービスとをシームレスに視聴できる4Kチューナーですが、従来の番組視聴に限らず、Androidアプリを用いたサービスの提供を検討していました。今回の脳体操アプリを通じ、映像コンテンツ以外にも、ユーザーのみなさまにお楽しみいただける機能を提供できるのではないかと感じ、仙台放送さんとの検討を重ねサービス導入に至りました。

太田氏私たちは放送事業者としてテレビを中心に事業をしておりますが、現在の地上波テレビのデバイスでは、脳体操アプリをテレビ上で視聴者に直接使っていただくことは技術的に難しく、どうしてもスマホやタブレット等を経由しなければなりませんでした。

一方、コネクテッドTVデバイスである「J:COM LINK」では、脳体操アプリを、テレビを通じて直接お客様に体験していただけます。ご家庭のテレビの前の視聴者に直接コンテンツをお届けできる機会を、J:COMさんとの出会いによって得ることができるのではないかと感じました。

――「J:COM LINK」へ搭載するアプリとして、「脳体操アプリ」を選んだ決め手は?

吉田氏脳体操アプリを知った当初、「いわゆるゲームの一種ではないか」と考えていたのですが、ゲームが一度のプレイで完結してしまうのに対し、脳体操アプリには「継続して使い続ける」ことに大きな意義があると感じました。

運転技能はそのときのコンディションや集中力に左右されることも多いと思いますが、脳体操アプリも同じで、プレイするタイミングによって、その結果は大きく変化します。そういった面でも、運転技能や日常的な脳のトレーニングとして、継続することが重要だと実感しました。

――日常的に接するテレビを介して直接プレイできる、という点を重視されたのですね。

J:COM吉田功一氏と岡野理絵氏

吉田氏脳体操アプリは、「J:COM LINK」のプラットフォームであるAndroidのアプリとしてお客様へ提供でき、操作もテレビのリモコンを使って簡単に行えるというメリットがあります。また実際にクルマを運転しているときの視野角に近いという意味でも、テレビでのトレーニングには意義があるとされています。

今回、脳体操アプリは、「お客様の健康や生活をサポートするサービス」という位置づけとしています。「J:COM LINK」起動時に表示される「テレビメニュー」に新設した「ライフ」カテゴリーから直接呼び出せるようになっており、別途アプリをインストールすることなく、日頃テレビを見るのと同じ手順でご利用いただけるようになっています。

運転技能や認知機能、感情状態の維持は、J:COMに加入されているお客様全体に関わるテーマです。実際、お客様のなかでも、運転技能や安全運転に対して課題を感じられている方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。今回の脳体操アプリは、お客様の「安全運転寿命」そのものを延ばすことに貢献し、テレビを通して健康や生活をサポートする第一歩として打ち出したいと考えています。

後編では、「J:COM LINK」を通じたJ:COMのコネクテッドTVへの対応や、脳体操アプリを通じ、仙台放送が放送局として取り組む社会的な課題解決のかたちについて掘り下げる。

放送局由来のコネクテッドTVアプリがもたらす社会課題解決のカタチ 〜仙台放送×J:COM担当者インタビュー(後編)