「意識ベース」で最適化したターゲットがマスとデジタルをつなぐ“バトン”になる
編集部
前回に引き続き、ビデオリサーチによるセミナー「デジタル展開を想定したマスメディア広告出稿の最適化」の内容をレポートする。リーチメディアであるテレビだが、生活者が多様化しているため、共通のメッセージを広く届けることが難しくなっている。そこで、リーチを取りつつも、ターゲットにアプローチする施策が必要とされている。今回は、その具体的な解決方法がディスカッションされた。プレゼンテーターは、前回と同じく同社のソリューション局 マーケティングソリューション部 吉田正寛氏と、ひと研究所 研究員 石倉裕大氏の両名だ。
■「意識ベース」で分けると、ターゲットのテレビ接触に違いが出る
テレビがターゲットにアプローチする施策として、ひと研究所の石倉氏が提案するのが、生活者を「意識ベース」でセグメント分けして、テレビとの接触率を分析する方法である。
(参考リンク「次世代デジタル広告は生活者の「行動」ベースから「意識」ベースに変化する!?」)
ひと研究所では、生活者の情報取得に関する「考え方のクセ」を6つのタイプに分類した。すると、タイプによって、テレビとの接触率の違いもわかってきたという。セミナーでは、あるテレビ局の朝5時~8時台の接触率を、タイプ別に例示した。ビデオリサーチの「VR CUBIC(ブイアール キュービック)」による調査で、テレビ、Webで展開される広告や情報を「だれが」「どのメディアで」「何に」「いつ」接触したのかを「正確に」把握し、情報の流れを可視化することができるという。
その分析結果を見てみると、インフルエンサーであり、直感や感性を重視する「トレンドフリーク」というタイプが、同じくインフルエンサーでありながら、機能や性能などのスペックを重視する「雑学ロジカル」に比べて接触率が高いことがわかった。つまり、この時間帯の番組に出すCMの内容を感性に訴えるイメージ訴求のものにすると、効果を最大化する可能性が高いことが導き出される。
■ターゲットのテレビ視聴は、さらに詳細に分析可能
さらに、ビデオリサーチは「ACR/ex(エーシーアールエクス)」という、アンケートによるデータを保有。これは、生活者をフラットに捉えるシングルソースデータで、電子調査票(生活者に貸与されたタブレット端末)によって調査される。
これによって測定される「詳細なデモグラフィック(年収・学歴など)」「サイコグラフィック(生活意識、嗜好など)」「商品関与・利用経験」のデータと、テレビ視聴率のデータをフュージョンすることで、「ADVANCED TARGET」というデータを作成。石倉氏は「これをもとに、コミュニケーションをとりたいターゲットの視聴率・テレビCM広告統計データを確認できるようになった」と語った。
たとえば、「ADVANCED TARGET」によって、「主婦」のターゲットに絞り、情報取得に関する「考え方のクセ」の6タイプで分析することも可能となる。セミナーでは、実証として、ある冷凍食品のCMに対する、ターゲット別テレビ視聴率が提示された。
このCM内では、世間の評判を気にする「コミュニティ同調」というタイプに響きやすい「日本一」というワードが使われていたが、「コミュニティ同調」の主婦が、もっとも高い合計GRPを示した。この例は、訴求したいターゲットによりテレビCMを見せることができていた例といえる。
「ADVANCED TARGET」によって、ある任意のターゲット視聴率が割り出せるようになった。これと、広告費を照らし合わせることで、広告出稿のコストパフォーマンスがもっともよい時間帯や番組を、ターゲットごとに導き出せる。このような分析によって、「経験則では狙わないような時間帯が、意外にもコストパフォーマンスが高いとわかる可能性もある」と石倉氏は語る。
■共通のターゲットを意識することで、広がる可能性
この「意識ベース」で最適化したターゲットは、デジタルに「“バトン”として渡すこともできる」とビデオリサーチの吉田氏は提唱する。
もともとデジタルの領域は、「行動ベース」によるターゲティングが行われている。そのため、潜在層にアプローチすることが難しい。しかし、「意識ベース」のターゲッティングで、効果の最大化を目指せるという。
「意識ベース」は、デジタルでも本当に影響するのか? セミナーではNintendo Switch関連サイト接触者の行動を「VR CUBIC」でモニタリングしたデータが示された。それによると、「雑学ロジカル」タイプが能動的に情報を収集していたことが判明。サイト内回遊でも「考え方のクセ」によって反応に違いがあることが明らかになった。
これらを加味すると、デジタルで想定するターゲットを意識ベースで拡大しつつ、そのターゲットのテレビ視聴実態を加味した出稿プランやクリエイティブで展開すれば、より広告効果の最大化が狙えることになる。吉田氏は、「データ面でも、ターゲット別の接触率から、サイトの接触率まで、テレビとデジタルを一気通貫で見られるようになるのでは?」と、今後の展望を語った。
これらの提案は、テレビとデジタルが理想的にワークし合う仕組みとして、画期的な手法の一つといえそうだ。「生活者が多様化するなか、広告を受ける側も心地よく、当てる側も正しく当てる。そういう重要性が増してきている」と石倉氏も改めて言及。今後の新たな広告展開の手法となるかどうか、大いに注目したい。