ローカル局におけるHybridcast放送による4K同時配信実証実験報告~東海テレビ放送、石川テレビ共同実証実験を終えて~[InterBEEレポート]
編集部
2017年11月15日~17日に幕張メッセ(千葉市美浜区)で、音と映像のプロフェッショナル展「Inter BEE 2017」が開催。3日間で過去最多となる出展者数1,139社・団体と38,083名の登録来場者数を記録するなど、今年も大きな盛り上がりを見せていた。
本項では、INTER BEE CONNECTED内のプレゼンテーションコーナーで行われた出展者のプレゼンテーションのうち、株式会社Jストリームが行った「ローカル局におけるHybridcast放送による4K同時配信実証実験報告~東海テレビ放送、石川テレビ共同実証実験を終えて~」をレポートする。
(登壇者)
・湯浅 茂充 氏
株式会社Jストリーム
配信事業統括本部 新サービスビジネス企画担当 エグゼクティブマネージャー
・石井 謙吾 氏
東海テレビ放送株式会社 デジタルコンテンツ部
■総務省による企画に参加した実証実験
本プレゼンテーションを行ったのは、動画配信の企業としてさまざまな情報発信やコンテンツ配信の手法を提供している株式会社Jストリームの湯浅茂充氏だ。ゲストとして共に今回の実証実験に携わった東海テレビ放送株式会社のデジタルコンテンツ部の石井氏もプレゼンテーションに加わった。
この実証実験は、2017年6月から公募が始まった、放送の高度化を推進する総務省による企画「ブロードバンドの活用による放送サービスの高度化に向けた実証」に参加したもの。
この公募においては、実証の類型が「ハイブリッドキャストの活用による4Kコンテンツの同時配信に係る実証」のユニキャスト(A)とマルチキャスト(B)、「視聴データを活用した放送サービスに係る実証」(C)という3つに分かれていたが、Jストリーム社は(A)のユニキャスト方式による4K素材の放送同時配信を担当した。
実証実験において利用されたコンテンツは、石川テレビ放送株式会社が4Kで制作し放送されているレギュラー番組の「4Kで綴る映像詩『新ふるさと 人と人』」という15分番組で、最新鋭の4Kカメラで収録が行われている。
■ハイブリッドキャスト放送による4K同時配信の仕組み
この実証実験は東海テレビ放送、石川テレビ放送、株式会社アクトビラ、そしてJストリームの4社の体制で行われた。プレゼンテーションに参加した東海テレビ放送の石井氏によると、テレビ局としての検証ポイントは、「複数プラットフォームによる比較、およびローカル局による選択肢の確保」、「ハイブリッドキャストの運用、引き戻し方法の技術面での整理」、そして「視聴環境による一般視聴者の反応」の3点だったという。
実験の概要を簡単に説明すると、番組ソースをJストリームが事前に受け取り、配信フォームのトランスコードを行い、その4K素材が同社のCDNサーバに置かれる。この作業と並行し、今回の実証実験では存在は見えないが、ハイブリッドキャストページがいるという。受信機の判別をするためのJava Scriptが必要となるためだが、その辺りの仕掛けは東海テレビ放送が担当した。また、4K素材の再生に必要なハイブリッドキャストの標準プレーヤのdashNXはJストリームのCDN上に配置された。
この実験概要においては、「ハイブリッドキャストの標準仕様の構成であるということと、私どものCDN経由によるユニキャストでの配信ということが重要なポイントです」と、湯浅氏は説明した。
今回の実証実験の対象となったテレビの対象受信機は、シャープ製が13機種、ソニー製が17機種、パナソニック製が19機種の49機種となった。この点を東海テレビ放送の石井氏は、「なるべく多くの視聴者に見ていただき、実験・検証を行いたかったので、ここまで増やしました」と狙いを明かした。
■さまざまな課題を乗り越え、安定した環境づくりに取り組む
実証実験の結果、4K視聴送受信数は20機種にわたり、台数は28~44台であったと明らかにされた。ログ情報に取りきれないものがあったため、認識できない部分が発生したため、明確な値は出せなかったという。一方、今回の仕掛けの中にビットレートが5パターン(24、12、6、3、1Mbps)用意されていたことから、4Kのコンテンツが「割とスムーズに表示ができたのではないかと考えています」と湯浅氏は述べた。
他にも配信ビットレート比率、同時接続数推移や、ユーザーアクション関係の時間推移と件数、終了処理関係の数値などがグラフとデータによって説明された。加えて課題として、対応受信機の判別がメーカーによって曖昧であること、などの項目が説明された。
最後に今後の取り組みとして湯浅氏は「私たちは4Kの同時並行配信の標準サービス化を目指しています」と語り、受信機判別の標準化およびプレーヤ側での実装、トランスコードのシステム化、再生開始ポイントの算出のEPG連携、視聴受信機特定のための仕掛け(ログ収集方法)などを検討したいと続けた。
また、石井氏は、「視聴者に放送波か配信でご覧いただいているかお気づきいただき、手軽に切替えのできる環境を提供できるようにしたいと思っています。」と今後さらに取り組んでいくことを示し、プレゼンテーションは終了した。