テレビ環境を取り巻く環境変化と課題に伴う各放送局の取組み【VR FORUM 2018】
編集部
株式会社ビデオリサーチは3月1日に、東京ミッドタウンにて「VR FORUM 2018」を開催。今回で3回目となる同フォーラムのテーマを「TV×Digital NEXT Stage」として、デジタルシフトが進む中、テレビメディアを取り巻く環境変化に対し、どのように捉えて対応していくべきかを第一部・第二部に分け、テレビ・デジタル・広告会社それぞれの視点から熱い議論が展開した。
今回は、第一部前半「デジタル時代のテレビメディア」と題したパネルディスカッションから、「テレビ環境を取り巻く環境変化と課題に伴う各放送局の取組み」についての模様をお届けする。
パネルディスカッション登壇者
・岡部智洋氏(日本テレビ放送網 編成局担当局次長 兼 編成センター 編成部長)
・長田隆氏(テレビ東京 執行役員 編成局長)
・岩熊正道氏(RKB毎日放送 執行役員 編成戦略局長)
・永井聖士氏(電通 ラジオテレビ局長)
モデレーター
・橋本和彦氏(ビデオリサーチ テレビ事業局長)
■テレビ環境を取り巻く環境変化と課題
まずはモデレーターの橋本氏より、メディア環境の変化と現在の課題について、データに基づく発表がなされた。
それによると、関東地区を対象とした2007年~2017年のHUT(総世帯視聴率)は、数パーセント下降しており、2007年を100とすると、2017年は94.4%だという。
PUT(総個人視聴率)で見ると、女性の50歳以上の視聴率は上昇しているが、若年層の視聴率は大きく低下。テレビ環境を取り巻く環境変化が反映した結果だと橋本氏は伝えた。
また、NHK総合、Eテレ、民放五局以外のチャンネルを“その他合計”とした視聴推移を見ると、テレビ視聴の推移とは反し、右肩上がりに年々上昇している。
同様に、DVDやタイムシフト視聴といった、リアルタイム視聴以外のテレビモニター利用(通称:空きチャンネル利用)も10年前に比べると2倍近くの上昇があり、テレビをスクリーンとして利用している人が増加していることがわかった。
そこで同社では、生活者の行動実態調査を行い、テレビ視聴とインターネット利用の時間量の変化を計測。結果、若年層はテレビ視聴よりインターネット利用の方が長いことが明らかになった。
加えて、若年層がスマートフォンで利用するサービスを調査したところ、メールやSNS、ゲームのほか、動画視聴も利用目的の上位となっていることも報告された。
最後に、メディアに対する意識の変化ということで、2004年はどの年代でも8割が「テレビは欠かせない」と回答していたのが、2016年には全体の6割、特に50代以上の年代が回答しており、テレビを必要とする年代間の開きが大きくなっている。
橋本氏の発表をまとめると、
・若年層のテレビ視聴は減少している
・多チャンネル化やタイムシフト視聴が増加し、スクリーンとしてのテレビ利用が増加
・生活者の行動実態は年代によって異なり、若年層はテレビよりインターネットを利用、動
画視聴は当たり前だが、年配者は依然、テレビが欠かせないと回答している
この結果を受け、各社ではどんな危機感を持ち、課題に対する取組みが発表された。
■テレビメディアを取り巻く変化に対するテレビ局の取組み
岡部氏は「保守的ではなく挑戦的な無改編」とし、「地上波ネットワークの価値を見直し、レギュラー番組の視聴習慣の促進への狙い」が伝えられた。
また、テレビへの回帰を狙いとするメディア展開についても触れ、「若年層に訴求力のあるメディアを活用することで、テレビに戻ってきたいと感じるのではないか」とテレビ視聴を促す取組みが伝えられた。
【テレビ東京】個性・差別化に磨きをかけた番組制作でサバイブ
長田氏は「他局とは違った観点から、テレビ東京の個性を発揮した番組制作をしなければ生き残れない」という。
「 “深さ”を維持しつつ、いかに広がりを持たせていくかが「池の水ぜんぶ抜く」の課題であり、広がりを持たせる意味の手法として、デジタルをいかに使っていくかが議論されている」とした。
「他の局とは違った戦い方をしなければ生き残れないというのが根幹にある以上、今一度コンテンツメーカーの原点に立ち返って、個性と差別化に磨きをかけた番組制作をしていきたい」と長田氏はまとめた。
【RKB毎日放送】視聴者の取り囲みと収益化の取組み
岩熊氏からは、「放送も“電気”や“水道”のように、インフラであるべき」という同局のテーマが挙げられ、「視聴者とメディアをつなぐ根幹にあるのが“報道・ニュース”だ」とし、「“信頼”されるメディアであることが、地域の視聴者と向きあうには不可欠である」と発表した。
今後の展開として、「地方は環境が一つのコンテンツになるのではないか」とし、それが「地域創生に繋がって行く、まさに我々放送局のアイデンティティのような気がする」とまとめた。