ミレニアル世代はテレビを観て共感して、没頭するためにスマホを観る
編集部
4月3日、ジュピターテレコム(以下J:COM)は「ミレニアル世代のテレビ視聴・スマホ利用実態に関する調査2018」を発表した。
本調査は、2018年3月5~7日の3日間において、インターネットリサーチによって実施した。1980年代から2000年代初頭に生まれ、2000年以降に成人を迎える“ミレニアル世代”に含まれる全国の18歳~26歳のうち1,000名が対象。
■男子は「リアルタイム」、女子は「タイムシフト」の視聴スタイル
本調査ではテレビを観ることがあるというスマートフォン(スマホ)ユーザーの男女1,000名(全回答者)を対象に、テレビ視聴に関する質問を行った。
テレビ番組を観る場合はリアルタイムか、録画か、オンデマンドかについての質問では、「リアルタイムで観ることが多い」が53.8%、「録画して観ることが多い」が43.0%、「オンデマンドで観ることが多い」が3.2%という結果が出た。全体の数字の上ではリアルタイム視聴が多数派であるといえる。
しかし、これを男女別に分けると、男性は「リアルタイムで観ることが多い」という人が63.0%と6割近くにも及ぶ一方で、女性では「録画して観ることが多い」という人が52.0%と半数を超える。この結果から、男女でテレビ視聴のスタイルが異なる傾向にあることが明らかになった。
また、テレビを観る際には「テレビに専念して観ることが多い」という回答が31.1%、「何かをしながら観ることが多い」という回答が68.9%となり、ながら視聴派が専念視聴派を大幅に上回った。
■根強くも一筋縄ではいかないミレニアル世代の「お茶の間」
視聴シーン別にテレビ番組をどのデバイスで観たいかを聞いたところ、【一人で観るとき】【家族と観るとき】【恋人と観るとき】【友人と観るとき】のいずれのシーンでも「テレビ」が最も多くの数字を集めた。また、【一人で観るとき】は「スマホ」が43.7%と半数近くにのぼっている。「スマホでの視聴」という選択肢は一人になったときに浮上すると考えられる。
この結果からはテレビというデバイス、および、テレビで鑑賞するテレビ番組は一人で楽しむものではなく、家族と楽しむものであるという、いわゆる「お茶の間」的な感覚がミレニアル世代には根強く残っていることがわかる。
また、本結果で興味深いのは家族といるときに比べて、自身と同世代である恋人や友人とは一緒にテレビを観る比率が減り、その一方で、一人になったときは家族といるときと同じくらいの比率でテレビを観るようになるという点だ。
ミレニアル世代にとって、テレビは家族と過ごす際のコミュニケーションのツールであり、一人のときは当たり前のように何気なくつけるものだが、同世代同士の場合においてこれは絶対的なものではないということなのかもしれない。
■ミレニアル世代と「国民的イベント」
番組ジャンル別にどのデバイスで観たいかを聞いたところ、こちらも全ての番組ジャンルで「テレビ」が最も多くの数字を集めた。特に【ドラマ】(82.1%)や【バラエティ】(84.9%)では8割以上にも届いている。
一方、数字が伸び悩んだのが【スポーツ】(70.4%)と【音楽ライブ・コンサート】(67.9%)。オリンピック&ワールドカップイヤーでありながら、【オリンピックやサッカーワールドカップ】の項目も72.9%。いずれも【ドラマ】や【バラエティ】ほどの数字を集めなかった。
ミレニアル世代の一部にとっては、オリンピックやワールドカップ、あるいは紅白歌合戦のような国民的イベントとされる行事は、かならずしもお茶の間で共有されるべきものであるという認識ではないのかもしれない。
■ミレニアル世代のテレビ視聴のキーワードは「共感」
誰かと一緒にテレビを観ていたときの経験を聞いたところ、「誰かとテレビを観て盛り上がったことがある」は80.7%、「誰かとテレビを観て同じ瞬間に泣いたことがある」は43.3%となった。この結果から、感動を共有する“共感”体験はミレニアル世代にとって大切なキーワードの一つであることが伺える。
また、テレビ視聴時に内容についてSNSでつぶやくことがあるかどうか聞いたところ、「SNSでつぶやくことがある」は29.6%と、3割の人がテレビを観ながらSNSでつぶやいていることがわかった。また、「SNSでつぶやくことはないが、SNSを観ることはある」という回答は43.7%で、この2つを合わせると73.3%にも及ぶ結果が出た。なお、男女別にみると、『SNSを使う』は男性では66.4%、女性では80.2%と女性のほうがSNSを使う傾向にあることがわかった。
■趣味に「没頭」するためのデバイスとしてのスマホ視聴
「どのデバイスで番組を観るか」という結果からわかる通り、ミレニアル世代にとって、スマホでの動画視聴はお茶の間から離れて一人になったときに選択肢に浮上するものである。それを踏まえた上で、スマホでの動画視聴についての質問の結果を見ていこう。
スマホで動画視聴をするときにどのようなジャンルの番組を観ているかを聞いたところ、全体では1位「国内ドラマ」(38.1%)、2位「バラエティ・お笑い」(36.4%)、3位「音楽(テレビ番組以外の、PV・ライブ動画・作業BGMなど)」(35.6%)となった。
男女別にみると、男性は「アニメ」(37.6%)が1位に躍り出た。また「スポーツ」(29.2%)が4位、「ゲーム(PV・プレイ動画など)」(22.2%)が7位にランクインしている。一方、女性は「国内ドラマ」(46.4%)が1位。「音楽(テレビ番組以外の、PV・ライブ動画・作業BGMなど)」(42.2%)が高い支持を集めて2位についている。
「アニメ」や「大好きなミュージシャンのPV」は、例えばお茶の間で家族と共有するにはいささか趣味性が高いと考えられる。テレビ視聴においては“共感”がキーワードになる一方で、ミレニアル世代にとって、スマホでの動画視聴は趣味への“没頭”という側面が強いのかもしれない。また、誰かがいる空間ではすすんで“共感”体験を求めるのに対して、部屋で一人になった際にはじめて“没頭”体験が選択肢として浮かびあがることも注目に値する。
なお、スマホで動画視聴をするときにどのアプリを使用しているか聞いたところ、トップ3は「YouTube」(86.3%)、「AbemaTV」(16.4%)、「niconico」(13.7%)という結果になった。ミレニアル世代にとって、開局2周年を迎える「AbemaTV」の存在感が確実に増しつつあることがわかる。
■まとめ
今回の結果から、ミレニアル世代はその場の状況に応じて求める体験を切り替えて、デバイスを乗り越える傾向にあることが読み取れる。また、ミレニアル世代の視聴者は、そのコンテンツが自身にどのような体験をもたらし、どのような場面で持ち出すべきかを選別しているとも可能性も考えられる。
ミレニアル世代に向けたコンテンツを作るにあたっては、「誰が、いつ、どこで、どのように、どのデバイスで観るのか」を細かく意識した作りが求められるといえるだろう。