映像メディアの価値を映す Screens

デロイト・トーマツ・コンサルティングは19日、テクノロジー・メディア・通信（TMT）業界における最新のトピックスについてまとめた、業界横断的な予測・分析レポート「TMT Predictions 2018 日本版」を発表した。

■放送業界に関連する予測

・2018年内に10億人を超えるスマートフォンユーザーが拡張現実（AR）コンテンツを作成し、AR機能を組み込んだアプリが年間数万件規模で登場する
・今後5年間、スマートフォン市場は、普及率、使用頻度、出荷台数、市場規模、平均小売価格のすべてにおいて成長し続ける
・2018年のリアルタイム放送およびライブイベントの直接的収益は、前年比1%増の5,450億ドルになる見込み。その大部分をテレビ広告・有料テレビ視聴契約など従来型のカテゴリが占め、残りがライブストリーミングとeスポーツである。
・2018年末までに先進国の成人の半数が、オンライン（インターネットのみ）で提供されるメディアサービスの定額課金（サブスクリプション）サービスを2件以上契約し、2020年には平均契約数が倍の4件に増えると予測している。

■映像系新興メディア事業者の台頭による放送業界への影響

注目は「映像系新興メディア事業者の台頭による放送業界への影響」の箇所だ。

近年、先駆者の地位を築いたYouTubeのみならず、Abema TV、Hulu、Netflixといった国内外の新興系映像メディアが次々と登場した。本レポートでは、そうした映像系新興メディア事業者の台頭についての項目を設けており、放送業界への影響についての考察を行っている。

コンテンツ投資による視聴者の獲得にとどまらず、配信事業者は潤沢な資金を基にオリジナル作品の制作を行っており、これまで放送事業者や映画会社が主体になっていた映像作品制作に変化の波が起こっている。本レポートでは、幅広い視聴者のニーズを満たすのがマスメディアの役割である一方で、特定のジャンルについては代替される可能性を指摘。そのうえで、「テレビがネットに置き換わる」という単純構造にはならず、視聴されるコンテンツのニーズの多様化や、利用シーンや使用可能な機器、放送受信環境やネットワーク環境による使い分けが起こるという見解を示した。

上記を踏まえて、「既存の放送事業者が活用可能な経営資源には限りがあるため、マスメディアとしての価値を果たすことを前提としつつも、市場環境を丁寧に調査分析したうえで注力すべき領域やジャンル等を定め、メリハリを持った事業展開を進めることが求められるのではないだろうか」と提言。具体的に検討すべき方向性、実行に移すべき方策として以下の4点を挙げた。

（1）コンテンツの内容
（2）コンテンツの制作・調達
（3）放送事業でのマネタイズの方向性
（4）海外展開等による放送外収益確保の方策

過渡期を迎えるメディア業界。「短期目線ではなく中長期目線で市場をとらえること」、「各々の市場におけるポジショニングとポートフォリオを再認識し、市場で勝ち残るための方法を既存の枠にとらわれずに模索していくこと」が新興事業者を含めた各事業者に求められると本レポートではまとめている。

リリース