ローカルからみたテレビの未来、独自展開と多様化がポイント?【Inter BEE 2016レポート】
編集部
3日間で過去最多となる38,000人の登録来場者数を記録するなど、大変な盛況ぶりを見せた「Inter BEE 2016(国際放送機器展)。このたび、 INTER BEE CONNECTEDで17日に行われた企画「ローカルからテレビの未来を考える」に参加してきました。さまざまな試みやアイデアが飛び出したセッションをレポートします!
■特別ゲストを迎え、LINE LIVEでも配信!
「ローカルからテレビの未来を考える」のセッションは、モデレータに村上圭子氏(日本放送協会放送文化研究所 )、パネリストには西田二郎氏(読売テレビ)、齋藤浩史氏(毎日放送)、茅根由希子氏(TOKYO MX )、特別ゲストに漫才コンビ・キングコングの西野亮廣氏を迎える形でスタートしました。
この模様はLINE LIVEでストリーミング配信が行われるなど、話題性の高いセッションに。「ローカル」は地方という意味だけではなく、在京キー局以外なんでもあり!という雰囲気で、それぞれの取り組みやテレビ局の未来について活発な意見交換が行われました。
■ローカルテレビ局の課題は?
モデレータの村上氏からは、総務省の「放送を巡る諸課題に関する検討会」の第一次とりまとめが紹介され、ローカル局の垂直統合&ネットワークモデルの揺らぎ、および収益性と公益性の両立という課題を提起。
あるローカル局の1週間(約10,000分)あたりの番組構成比率を取り上げ、主にキー局制作番組の「ネット枠」が4,100分、ローカル枠としてローカル制作番組が2,500分、キー局の過去番組等の番組購入が2,800分であることなどが紹介されました。
あるローカル局の1週間(約10,000分)あたりの番組構成比率
村上圭子氏(日本放送協会 放送文化研究所 メディア研究部 主任研究員)
また東名阪広域局を除く114社の1日平均ローカル制作番組は、わずかに2時間半であることを指摘。この比率を上げていくこと、そしてそれ以外でいかにマネタイズを図っていくことが重要である、との意見が出されました。
しかし番組制作にはコストがかかり、人材が不足している。そうした現状を鑑みて、いま作っている番組の価値を最大化することを考えなければならない、と提案されました。
■「続きはWebで!」が飛んでくるマル研の「SyncCast」
毎日放送の齋藤氏は、所属するマル研(マルチスクリーン型放送研究会=放送局62社を含む89社が参加する、放送局の次代の戦場作りを共同して進める会)が運営する「SyncCast」を紹介。
これは、2015年から運用を開始した放送局横断型のセカンドスクリーン連携システムで、大阪地域ならば毎日放送、朝日放送、テレビ大阪、関西テレビ、読売テレビという複数の放送局に横断して提供できるサービスです。
テレビを観ながらスマホの「SyncCast」を立ち上げると、テレビ番組のナビゲーターのブログのバナーが出たり、CMで流れた通販会社のバナーが飛んできたりします。よくCMである、続きはWebで!というのが、自動的に配信されるシステムとなっています。
■TOKYO MX の「エムキャスト」の「エム」はMXの「エム」ではない?
TOKYO MXは、アニメのコンテンツや、TOKYO MX ならではの独特な番組づくりで話題を集めている局。東京にありながら視聴エリアが首都圏のみというローカル的な立場で、全国をお得意様とするスポンサーがなかなか得られないという問題がありました。
そこでTOKYO MX は、放送をリアルタイムで全国へと流せるだけでなく、配信コストも安い「エムキャス」(PC・スマホからテレビが観られるアプリ)を利用して、全国配信による動画広告の獲得を目指しています。ネットワークに縛られない独立局の強みを活かし、広島ホームテレビの番組も載せています。しかし、まだ全国に配信可能な番組数が少なく、放送されていない時間帯も多いため、地上波の番組を全国に流したいという意向に賛同してくれる局を待っている状況です。
「『エムキャス』の『エム』はMXの『エム』ではなく、マルチかもしれないしミックスかもしれない。どんな可能性もありますし、新しい形も可能だと思っています」(茅根氏)
■ローカル局には地域を愛する人材の育成が不可欠!
読売テレビの西田氏は、ローカルテレビ局の人材に言及しました。
「ローカル局を取り回して、振り回して、ローカルという場所にとどまらないで暴れまくる人材が不可欠です。人が機能しなければ、いくらフレームやポータルのインフラがあっても、その場所は他の何かに取って代わられてしまうんです!」(西田氏)
ローカル局のテレビ番組は、非常に視聴者に近いコンテンツ。それを発信力として放送後にLINE LIVEを行うなどすれば、これで地域と地域がつながり、全国への発信につながるのではないか、という提案もありました。
系列にとらわれずに志のある局が集まれば、新しいモデルができてくるのではないか……と感じさせてくれるセッションでした!
セッション参加者
〇モデレータ
・村上圭子氏(日本放送協会 放送文化研究所 メディア研究部 主任研究員)
〇パネリスト
・西田二郎氏(読売テレビ放送株式会社 編成局 編成企画部長)
・齋藤浩史氏(株式会社毎日放送 経営戦略室 メディア戦略部長)
・茅根由希子氏(東京メトロポリタンテレビジョン株式会社 事業局 デジタルコンテンツ開発部長)
・西野亮廣氏