指標乱立の時代は終わる?メディアの価値を正しく伝える、共通化された指標導入への期待<Advertising Week Asiaレポート>
15JUN

指標乱立の時代は終わる?メディアの価値を正しく伝える、共通化された指標導入への期待<Advertising Week Asiaレポート>

編集部 2018/6/15 09:00

2018年5月14日~17日に六本木の東京ミッドタウンにおいて、マーケティング、広告、テクノロジー、エンターテインメントなどの幅広い業界がひとつとなり、未来のソリューションを共に探求する世界最大級のマーケティング&コミュニケーションイベント「Advertising Week Asia」が開催された。イノベーション・ステージでは注目される最先端の技術が紹介されたが、本項では「指標の共通化がもたらす未来:デジタルメディアが正当に評価されることで成り立つエコシステム」と題されたディスカッションをレポートする。

■デジタルメディアの世界に「エコシステム」の実現が必要

イノベーション・ステージに登壇したのは、ニールセン デジタル株式会社の代表取締役社長・宮本淳氏(TOP写真:右)と、株式会社ビデオリサーチインタラクティブの取締役・池田宜秀氏(TOP写真:左)の2人。昨年1月、ビデオリサーチ社と米国ニールセンはデジタル領域における業務提携をスタートさせているため、両社による新たな取り組みに注目が集まっている。

まず進行役を務める宮本氏が、デジタルの現状を俯瞰することからディスカッションは始まった。

「デジタルの世界には、いろいろな数字や指標が出回っています。MAU(Monthly Active User)、DL(Download)数、総視聴者数、インプレッション、クリック数などが乱立する状態になっています」。このように指摘した上で、「メディアにとっては自社のメディアパワーを公平に評価してもらうことが難しく、広告会社や広告主はどのメディアをどう評価してよいのか分かりにくいのではないでしょうか」と続けた。

そしてこの状況を解決するためには「エコシステム」の導入が必要だと訴える。「エコシステム」とは自然界における生態系のことだが、ビジネスに置き換えると、「複数の企業や団体がパートナーシップを組み、それぞれの技術や強みを生かしながら、業種・業界の垣根を越えて、共存共栄する仕組み」(出典:日本ユニシス)だという。

デジタルメディアの世界でこの「エコシステム」を実現させるためには指標の共通化が必要であるとし、池田氏がテレビの視聴率の事例を取り上げて説明を続けた。

■テレビの視聴率は、進化した領域

2018年4月から、新しい視聴率指標でのスポット広告取引が始まっている。従来の番組視聴率(世帯)に代わり、P+C7(個人全体)が導入されたもので、具体的には、対象が世帯からALL(個人全体)に、またこれまでの番組単位のリアルタイム視聴の数値に加え、新たにCM枠単位でのタイムシフト視聴も含めた指標に切り替えられたのだ。

池田氏は「このような変化があるということを念頭に起きながら、インターネットの世界では各プラットフォームに該当するテレビ局各局の視聴率は、相対的に評価ができる仕組みになっていて、同じ土俵の上に立った上で比較ができ、それも次の日の朝には結果が明らかになるものです」と、指標が乱立するデジタルメディアと比べると、「進化した領域」であるという。

社会の変化を反映する形で世帯が個人となり、しかも増加するタイムシフト視聴に対応するようになったため、テレビの視聴率はより信頼性のおける指標となっているが、共通指標がないデジタルの世界では、さまざまな弊害が起こっていると宮本氏は指摘する。

「メディアでは自社メディアのパフォーマンスについて本来の価値を伝えきれておらず、自社計測データだけでは透明性への担保が不十分なため信頼低下が起き、投資が鈍化するリスクがあります。また広告主にとっては媒体を横断したプロモーションの一括プランニングができず、社内外の関係者に理解を得られない場合があり、広告会社は説得力を持った提案ができず、正当な評価を受けることもできないし説明責任も果たせないといった状況なのです」

このような状況を踏まえ宮本氏は、「『エコシステム』を実現するためには新たな共通指標が必要」と語り、Nealsen Digital Content Ratings(=DCR)についての説明に移った。

■デジタルメディアへの共通指標導入が実現か?

ニールセンデジタル社とビデオリサーチインタラクティブ社が一緒に展開する予定だというこの「人」ベースの視聴を性・年代別にリーチ(%)と視聴者数、視聴時間、視聴回数で示すものだ。デジタルメディアでは利用されているデバイスが多岐にわたるが計測可能だという。

宮本氏はDCRのサービスが可能にすることは「(1)同一指標、同一計測手法による公平比較、(2)デバイス横断でオーディエンスを捕捉、(3)サービス全体からコンテンツ単位までカバー、(4)分散型視聴の計測、(5)第三者機関の計測による透明性の担保、(6)共通指標として各社が活用できる」だと説明した。

池田氏は「この指標で分かるようになることは多く、テレビの視聴率と似たような評価ができるのではないでしょうか」と語り、DCR展開の期待感をにじませた。また、宮本氏は、「全てのデジタルメディアが、共通指標をベースとして自社の特徴や優位性を公表し訴求することができる」と語った。

指標が乱立する状況では、メディアの本来の価値が伝わらず、相対比較も容易ではない。しかし共通した指標があれば、広告主、広告会社は効率的、かつ効果的にメディアプランが策定でき、社内外の利害関係者とも共通理解を得やすい。

「『エコシステム』の構築はこれらの三者で取り組む課題」だと宮本氏は語り、関係者に協力を呼びかけてセッションは終了した。

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