同社執行役員 企画推進局長 池田宜秀氏

26 OCT

ビデオリサーチ「VR FORUM 2020」オンライン開催の内容は?〜主催者インタビュー【前編】

編集部 2020/10/26 09:00

株式会社ビデオリサーチは2020年11月17日(火)、「VR FORUM 2020 メディアの新しい価値を見逃すな。」を開催する。リアルイベントとして長らく行われてきた同セミナーだが、今年は初のオンラインセミナーで実施。コロナ禍で加速したメディア の変化・生活者の多様化について、いかに理解し、対応していくかをひもとく。

人数を制限するなどしてリアルイベントを堅持するセミナーもあるなか、全面的なオンライン化に踏み切った経緯は。今回予定されている具体的な内容は──。 同社執行役員 企画推進局長 池田宜秀氏に聞く。

■オンライン化によって、さらに多くの参加が可能に

──今回、オンライン開催に踏み切った経緯を教えて下さい。

池田氏:去年開催の『VR FORUM 2019』では、3,500人を超えるお客様にご来場いただきましたが、コロナウイルス感染拡大防止の観点からみて、これまでのように1ヶ所に集まるイベントという形式での開催は難しいと判断しました。そこで今回は、お客様がそれぞれの場所から参加できるウェビナー(WEBセミナー)という形式を軸にすえ、ビデオリサーチとしてどういったことが伝えられるかを模索することにしました。

──ウェビナーという新たな開催形式について、どのように考えていますか?

池田氏:パソコンの画面越し、さらに言えば参加者のみなさまがいらっしゃる会社の会議室越しにどういったことを伝えられるかということは、今回大きな挑戦であると考えています。しかし同時にウェビナーという開催形態は、これまでリアルなイベントゆえに存在した物理的な制約が取り払われることも意味します。

「VR FORUM 2020」では、これまで席数の問題からご参加いただけなかった方や、会場までお越しいただくことが難しかった遠方の方も、等しくセッションへご参加いただけるようになります。これまで以上に幅広い方々へ向けてセッションをお届けできるという点で、今回の開催には非常に大きな期待を抱いています。

■「日本の“3年先”を先取りする」アメリカのメディア事情レポートも

──現状、どのようなセッションが予定されていますか。

池田氏:まず、セミナー冒頭の基調講演で、このコロナ禍におけるテレビ業界のコンディションを解説するほか、今回はアメリカのメディアビジネスの最新事情についてもフォーカスを当てたセッションを予定しています。

──アメリカのメディアビジネスの最新事情について、具体的にどのような内容ですか?

池田氏:ビデオリサーチUSA社長の谷口悦一による有識者インタビューの模様を、VTR形式で放映します。世界の中でも特にデジタル化が進むアメリカにおいて、テレビや出版といったメディアビジネスがどう進んでいるのか、コロナ禍による広告費の減少など問題を乗り越え、2021年以降の未来をどのように見据えているのかを探ります。

──なぜアメリカにフォーカスを?

池田氏:現状日本では、アメリカで起きたデジタル化を、3年ほどかけてトレースしていくような流れが見られます。このセッションを通じて、少しでも何か今後のビジネスの発展にヒントとなるようなことを得ていただければと思い、アメリカにフォーカスを当てることにしました。

いまはコロナの影響を受けていますが、来年以降はマーケットがこのように変わっていくのではないか── というように、まもなく日本にもやってくるであろう「未来」を先取りすることで、新たなビジネス展開の参考にしていただき、メディア業界のみなさまのお役に立つことができたらと考えています。

■生活者のライフスタイルの変化 、サードパーティーCookie、既存メディアのDX… 関心の集まるトピックも網羅

──日本国内のメディア事情については、どんなセッションを予定していますか?

池田氏:ビデオリサーチのシンクタンクである「ひと研究所」研究員の渡辺庸人が、国内のコロナ禍における生活者のライフスタイルの変化とメディアの変容やデジタル化をデータ分析し、当社独自の視点から、解説と予想を行います。

──去年開催の「VR FORUM 2019」では、ビデオリサーチの新視聴率や、TVer・radikoなどのリアルタイム視聴率など、新たなメディア接触の指標に関するセッションが話題を集めました。今年はどのようなテーマを扱う予定ですか?

池田氏:テレビに関するテーマとしては、この4月からスタートしている新視聴率について取り上げます。コロナ禍における影響についてはもちろん、個人視聴率やタイムシフト視聴率が全国で計測可能となったことで、視聴率の見方がどのように変わっているのか、ビデオリサーチとしての考え方をお話ししていく予定です。

さらに今回は、個人情報やサードパーティーCookie、出版やラジオなどのターゲティングメディアに関するセッションも予定しています。

──サードパーティーCookie問題(※)は、メディア関係者のあいだでも大きな関心どころとなっていますね。

(※サードパーティーCookie問題:閲覧しているWEBサイト外のドメイン(サードパーティー=第三者)から発行されるCookie(個人識別用データ)が、一部のOS・ブラウザ環境で無効化される問題。閲覧者の履歴にあわせた広告制御(ターゲティング)に大きな影響を及ぼすため、その対策が大きな課題となっている。)

池田氏:日本国内では今年6月に個人情報保護法の改正案が成立し2022年の前半に施行される見込みですが、世界的に個人データの取得・活用における厳格化の流れを受けて、Apple社のスマートデバイスに採用されている「iOS」では、来年早々に広告識別子=いわゆる「IDFA」(Identifier for Advertiser:Appleが端末ごとに発行する固有ID)がアプリ毎に完全オプトインになる事が明らかになっています。閲覧者にあわせた広告制御の方法として用いられてきたIDFAの取得に関しても今後ユーザーの許可が必須となるなど、ターゲティングのあり方が大きな転換を迎えます。こうした現状に際し、事業会社、広告会社の皆さまがどのように考えているのか、という話をゲストの方に聞いていきます。

──この問題は、メディアデータの計測にも大きな影響を及ぼしそうですね。

池田氏:まさに、この問題は、今後デジタルの世界のなかでビデオリサーチがどのように計測を進めていくのかという課題とも直結します。

デジタルの世界における効果測定は、原則として全数(アクセスするユーザーすべてを対象とする計測値)をベースに進められてきました。その一方で、ビデオリサーチは、パネルデータ(一定の基準をもとに抽出した母集団をサンプルとする計測値)をベースとしてきました。セッションではこうした2つの世界観の違いや、どのように変化していくのかといったテーマについても触れていきます。

──出版やラジオを「ターゲティングメディア」に位置づけたセッションも興味深いです。

池田氏:既存のメディアについても、価値基準やビジネス展開の仕方がデジタル中心のものへとシフトしつつあります。これまで行われてきたメディアビジネス、そして新たな収益源として立ち上がりつつあるデジタルビジネスという2つの軸は、今後「調和」していく流れなのか。それとも、デジタルトランスフォーメーションとして「変革」していく流れにあるのか。このあたりは、多くの人々にとって関心のあるトピックではないでしょうか。

このセッションでは、現状の具体的な取り組みや、これから目指していく方向性について、特定の属性に特化した「ターゲティングメディア」という切り口から、出版業界・ラジオ業界の方々に話を聞いていく予定です。

コロナ禍をふまえ、日本におけるメディアのリアルな「いま」と「これから」を網羅していくという「VR FORUM 2020」。後編では、このセミナーのサブタイトルにも設定された「メディアの新しい価値」というテーマを軸に、今後のメディア環境においてビデオリサーチが目指す“役割”について、詳しく尋ねる。

【後編】現状の課題ふくめ、メディアの“現在進行系”を知る機会に。「VR FORUM 2020」〜主催者インタビュー

株式会社ビデオリサーチ