アジア最大級のコンテンツ見本市ATF(Asia TV Forum and Market)のコンペティションで入賞実績のある『QUIZ GO ROUND 流れきる前に選びとれ!』

26 MAR

ペーパーフォーマットから欧州と共同開発に進む『QUIZ GO ROUND』~カンテレの海外コンビジ戦略の現状と展望/後編

編集部 2021/3/26 08:00

関西テレビがフォーマットビジネスの海外展開強化に乗り出す。その目玉となる番組が3月19日(金)にゴールデン帯で放送された『QUIZ GO ROUND 流れきる前に選びとれ!』である。アジア最大級のシンガポール・コンテンツ見本市ATF(Asia TV Forum and Market)で評価されたのをきっかけに、ドイツ拠点の大手配給会社であるRed Arrow Internationalと海外版の共同開発を進めていくことになった。関西テレビはこれをモデルケースに海外展開を進めていくのだろうか。前編に続き、コンテンツデザイン本部コンテンツビジネス局長・岡田美穂氏とクリエイティブ本部制作局長・小寺健太氏、コンテンツビジネス局東京コンテンツ事業部次長(海外)・佐藤一弘氏、同部・前田秀二氏に話を聞いた。

【前編】ゴールデンで放送する国際コンペ入賞クイズ番組『QUIZ GO ROUND』開発の裏側~カンテレの海外コンビジ戦略の現状と展望

岡田美穂氏
小寺健太氏
佐藤一弘氏
前田秀二氏

■海外マーケットのニーズに合わせてゼロから開発し、制作することが求められる

アジア最大級のシンガポール・コンテンツ見本市ATF(Asia TV Forum and Market)の国際企画コンペでファイナリストに選ばれた『QUIZ GO ROUND 流れきる前に選びとれ!』(以下、『QUIZ GO ROUND』)の企画案はその後、急ピッチで日本版の制作へと進む。3月19日(金)にはゴールデン帯(19時~/関西ローカル)で放送されたところだ。海外セールスチームにとって、期待される効果は何か?

アジア最大級のコンテンツ見本市ATF(Asia TV Forum and Market)のコンペティションで入賞実績のある『QUIZ GO ROUND 流れきる前に選びとれ!』

前田氏:ペーパーフォーマットは文字通り紙の企画書しかないので、良い企画であっても海外にセールスすることは容易ではありません。映像があるかないかは販売の成否を大きく左右します。今回、自社で制作・放送するチャンスを得られたことは非常に嬉しく、さらに、ゴールデンタイムでの放送は海外に売り込む際の大きなポイントになります。国内で番組化された実績があることが強みになるからです。

さらに、放送当日のタイミングにドイツ拠点の大手配給制作会社であるRed Arrow Studios Internationalと共同開発について合意したことを発表した。これによって、国際版の共同開発を具体化させ、アジア地域は関西テレビが、その他の地域をRed Arrow Studios Internationalが展開を広げていくことになった。

佐藤氏:ATFで入賞した実績からゴールデン枠の予算で番組化され、番組の肝となる回転寿司をモチーフにしたベルトコンベアーをセットに制作費を投じることができました。本来であれば国際見本市で費用を投じてPRし全世界に向けて直接販売するのですが、コロナ禍でオンライン中心の商談となり、見本市のリアル開催が見通せないため、ドイツのRed Arrow Studios Internationalと共同開発という形で役割分担することが、このフォーマットを世界に広げていくことにつながると判断しました。

セットは回転寿司をモチーフにしたベルトコンベアー

岡田氏:海外向けの番組開発は始まったばかりです。日本と海外ではマーケットニーズの違いがありますから、その違いを理解している海外セールスチームのスタッフが制作プロデューサーに入ることも必要だと考えています。小さなことから実践と実績を積み重ねていき、海外ビジネスに注力することへの理解を社内で深めていくことも重要だと思っています。そういう意味でも、今回の『QUIZ GO ROUND』は関西テレビの海外展開にとって、効果のあるモデルケースになっていくと信じています。

小寺氏:実際に国際コンテンツ見本市に足を運んで思ったことは、ドラマや映画以上に日本のバラエティ番組はガラパゴス化しているということ。画面いっぱいに文字を貼りつけ、ワイプを切ってといった番組制作は言うなれば宮大工のような仕事になっています。出演者のトーク中心の構成も海外でそのまま展開していくことは難しいと感じました。フォーマットビジネスを本格化させていくには、ゼロから開発していくことも求められます。日本のバラエティ番組が海外マーケットのニーズに偶発的に一致させるものだけでなく、海外市場のニーズに合わせて開発し、制作し、海外セールスしていくことも必要です。『QUIZ GO ROUND』のように知恵を絞り合えば、必ずアイデアは出てくるはずです。

出演者のみちょぱ&ちぴたん

■番組制作に多様性を取り入れることへの鍛錬にもなる

国内だけでなく、海外にも目を向けた番組を開発し、制作、放送の流れを作り出している背景には、改編した組織体制によるものも大きい。昨年9月に本部制が導入され、コンテンツデザイン本部傘下に従来の編成局と海外ビジネスを担うコンテンツビジネス局が入り、制作局のあるクリエイティブ本部との横の連携も強化されつつある。体制が築かれるなかで、関西テレビの海外展開の今後の展望を最後に聞いた。

前田氏:社内の複数の部署が連携して番組化までこぎつけた『QUIZ GO ROUND』を海外でしっかり実績を作ることが目下の目標です。海外で売れることによって、また新たなアイデアも生まれてくるのではないかと期待しています。一方、海外市場が日本に求めるようなゲームショーがいま日本では需要が少なく、ほとんど放送されていないことにジレンマを感じてもいます。韓国発の音楽バラエティ歌番組『The Masked Singer』のフォーマットが北米をはじめ世界でヒットし、東アジアテイストのバカバカしさが売りのバラエティ番組へのニーズがますます高まっているなか、攻めていくタイミングにあると思っています。

佐藤氏:自社制作ドラマは海外でもそのまま売れ、リメイクセールスでも実績を作っています。バラエティフォーマットビジネスもかたちにしていくことで、関西テレビ番組発のアイデアが国外においても大きなうねりを起こすことを示していきたいと思っています。本部制の機構改革によって、海外ビジネスが番組制作にとっても遠い世界の話ではなく、という意識を持ってもらえれば、海外コンテンツビジネスにとってこの上ない強みになります。

岡田氏:編成を担う部局がコンテンツデザイン局へと名称が変わったことは関西テレビにとって画期的なことでもありました。今後も制作局などと擁するクリエイティブ本部とも連携しながら、『QUIZ GO ROUND』のような事例を作り出していきたと思います。

小寺氏:海外に向けて番組開発することは、制作局員のスキルアップに繋がっていきます。番組制作に多様性を取り入れることへの鍛錬にもなるはずです。視点を変えることによって、立ち返ることもでき、そこには必ず本業にフィードバックされるものがあると思っています。

出演者の四千頭身

関西テレビの海外コンテンツビジネス戦略にフォーマットビジネスが新たに加わり、海外に向けた番組開発が始められていることがわかった。海外への取り組みは後発組ながら、社内体制の強化を強みに一気に勝負にも出ている。その象徴となるペーパーフォーマットからゴールデン帯で番組化した『QUIZ GO ROUND』の海外展開が実現すれば、ひとつの成功モデルケースとなっていくはずだ。

『QUIZ GO ROUND 流れきる前に選びとれ!』公式サイト

【前編】ゴールデンで放送する国際コンペ入賞クイズ番組『QUIZ GO ROUND』開発の裏側~カンテレの海外コンビジ戦略の現状と展望