18 MAY

「地域ニュースの存在感をアピールしたい」静岡民放テレビ局4社運営「ShizLIVE」担当者インタビュー

編集部 2021/5/18 08:00

株式会社静岡第一テレビ、株式会社静岡朝日テレビ、静岡放送株式会社、株式会社テレビ静岡は、3月17日より4局合同のポータルニュース動画実験サイト「ShizLIVE(シズライブ)」を開始した。このサイトは「マルチスクリーン型放送研究会(以下、マル研) 静岡地域ポータルニュース動画実験サイト研究WG」の実証実験として行われているもの。4局がそれぞれ発信する静岡県内のニュース動画を集約し、発信していく。

https://shizlive.jp/

今回の実験の経緯と狙い、そして目的について、テレビ静岡 技術局 兼 エリア連携事業局  メディア戦略部 鈴木徹氏、マルチスクリーン型放送研究会 事務局長も務める関西テレビ放送株式会社 コンテンツデザイン本部 コンテンツデザイン局 マーケティング部 中島啓氏にインタビューした。

■ローカルニュースの集約で在静4局の存在感をアピール。UI/UXの最適解も模索

──プロジェクト開始の経緯を教えて下さい。

 

鈴木徹氏

鈴木氏:静岡の民放ローカル4局(静岡第一テレビ、静岡朝日テレビ、静岡放送、テレビ静岡)は、かねてよりマル研に加盟し、セカンドスクリーンの活用をはじめ、これからの放送サービスの在り方をともに模索してきました。2020年度にマル研運営会から新規WGの募集があり、4局共同で応募をさせていただいたのが、今回のきっかけとなっています。

1局だけでは存在感が限定的となってしまいがちなところ、4局が共同でローカルニュースの動画や記事をあつめたポータルサイトを作ることによってインターネットの中でも地域のニュース発信の存在感を示せないかと考え、地域動画ニュース実験サイトとしての「ShizLIVE」をスタートさせることとなりました。

──サイトとしての「ShizLIVE」は、どんなコンセプトですか。

鈴木氏:「ShizLIVE」では、静岡の民放4局が発信するローカルニュース、ローカルコンテンツの入り口をまとめ、UI/UXを統合・整理して発信していきます。

マル研のプロジェクトとしては、このようなポータルサイトを実際に運用するうえでどのようなUI/UXが最適か、局ごとに特別な負担がない形での運用が可能かどうかを探る実証実験という位置づけです。WEBサイトの構築予算などはマル研から研究活動費として提供を受けており、蓄積された知見はマル研の会員各社に広く共有されます。

■各局データの自動集約で「追加業務が生じない」サイト更新を実現

──サイト更新はどのような体制で行われていますか。

鈴木氏:各局が運用するCMS(WEB用ニュース投稿ツール)に「ShizLIVE」向けのRSS(サイト更新情報)を出力してもらい、これを「ShizLIVE」のWEBサーバーから自動で取得、集約して表示しています。

──シンプルな構成ですね。

鈴木氏:更新作業を自動で行うことにより、各局の報道部やデジタル部門が行っている毎日のニュース投稿に追加作業が出来るだけ生じないようにしています。

もともと各局さんそれぞれ外部のニュースサイトへの配信をされていますが、今回の「ShizLIVE」においても同様で、あくまで「配信先がひとつ増えた」という程度におさまるよう設計しました。

■「4局のニュースが均等に出るよう配慮」利便性とサイト誘導を両立するUI/UX

──UI/UX面ではどんな点に注力していますか?

鈴木氏:スマートフォンからのアクセスを重視し、レスポンシブ(画面幅に応じて柔軟にレイアウトを変化させる)なUIとしました。ニュース動画のサムネイルが目立つよう、サイトデザインもシンプルな構成にしたほか、最新ニュースについても、参加する4局のニュースが均等に出るよう配慮しています。

https://shizlive.jp/

──ニュース動画はもともと各局が発信していましたが、公開先が増えることで再生数の分散などは生じませんか?

鈴木氏:「ShizLIVE」では、参加各局のニュース動画やサイトへの誘導も狙いのひとつとしています。記事内の動画プレイヤーは各局サイトのものを直接読み込んでいますので、動画の再生回数がサイト間で分散する心配はありません。

https://shizlive.jp/

■興味対象・商圏としての「ローカル」を追求

──プロジェクト期間は5月末までということですが、今後はどのような展開を考えていますか。

鈴木氏:実験プロジェクトとはいえ、せっかく構築したからには半年ぐらいは続けなければ効果もわからないという声も上がっています。静岡地区に限らず、他所でも合意さえされば使用できる仕組みですので、マル研加盟社のある他のエリアでも広がればと思っています。

中島啓氏

中島氏:インフラが充足してきたいま、テレビの本質について突き詰めていく必要があると考えています。そのひとつとして、今回の「ShizLIVE」の取り組みがローカルテレビのあり方を示す仮説につなげられたらと思っています。テレビの広告を利用するのはナショナルクライアントだけではありません。全国が商圏ではないスポンサーも存在します。「全国津々浦々へ」というモデルに対し、地域のコンテンツとスポンサーによって回る何かがあるのではないか、という考えが、今回のプロジェクトの背景にはあります。

──ローカルなコミュニティや経済圏が今回の重要なポイントなのですね。

中島氏:インターネットは物理的な国境を超えるものですが、やりとりされる情報は興味対象でしっかりと区切られていて、地理的な境目が存在しないかわりに「狭くて深い文化」がいくつも存在します。地域ごとに免許されるテレビ局の「商圏」は物理的なエリアに依存してきましたが、インターネットが実世界と密接にリンクするいま、こうした特性をテレビ側に取り込んでいくことで、より生活に根ざした新しい展開が行えるのではないかと考えています。

鈴木氏:他地域ではそうでなくとも、特定の地域では重要な関心事であるというケースもあります。静岡で言えば「お茶の出荷」に関するニュースは、地元の方々にとっては非常に重要なニュースに位置づけられます。「ShizLIVE」では、ニュースの範囲をローカルに絞ることで、「静岡の人たちに大事にされるメディア」を目指しています。

中島氏:極端な話、東京であっても、関東ローカルなスポンサーを関東ローカルで届けるというアプローチもあるでしょう。今回のように静岡発のローカルな取り組みが日本中の放送局の話題にあがり、各局での活用方法の議論につながっていき、それがまた静岡にフィードバックされるような展開が生まれればと期待しています。