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ビデオリサーチ、中学校で統計学習の出張授業を初開催! 講師担当社員が“データを読み解く”重要性を説く

編集部 2023/4/10 10:00

昨今、その必要性が高まって久しいデータサイエンス教育。2021年からは中学校における理数教育の一環として統計教育の充実が学習指導要領に組み込まれ、データの収集・分析から課題解決までを学ぶカリキュラムが実施されている。

そんななか、視聴率をはじめさまざまなデータ分析を手がけるビデオリサーチでは、広島県竹原市立竹原中学校の3年生90名を対象に、統計学習をテーマとした出張授業「統計はどう活かされている?」を2023年3月3日に開催。地元のテレビ視聴データを題材に地域の特性を分析したり、統計データを読み解く際に気をつけるべきことをクイズ形式で学んだりするなど、実践的な内容でデータに関するリテラシーの重要さを説明した。

中学生を対象とした統計学習の出張授業は、ビデオリサーチにとって初の試み。今回の授業が行われた経緯から、データに関する理解を深めるためにどのような工夫が施されたのか。講師役を務めた株式会社ビデオリサーチ中国支社の青山祐子氏、同社コーポレートコミュニケーショングループの長谷川晃子氏に伺った。

■中学校教員からの“直接依頼”で実現「ビデオリサーチを知ってくれていたことに喜び」

──今回、出張授業を行うことになった経緯をお聞かせ下さい。

青山氏:かねてより弊社でも子どもたちに向けたデータサイエンス教育に貢献できないかと考えていたなか、タイミングよく竹原中学校の先生から「出張授業をやっていただけませんか」とお声がけをいただき、授業を行わせていただくことになりました。

その先生は数学科を担当されていて、「実際に社会で数学の知識を使って事業をしている会社に話をしていただきたい」ということからビデオリサーチへご連絡をいただいたということでした。

──依頼を受けて、どのように思われましたか。

青山氏:これまでも若い方々へ「授業」の経験はありましたが、職場体験の一貫としてビデオリサーチ側にお越しいただく形式のもので、こちらから学校にお邪魔しての授業というものは初めてでした。果たして対応できるだろうかという不安もありましたが、こうして中学校の先生方がビデオリサーチを知ってくださっていたことへの嬉しさが何よりも大きかったです。

■一般公開データを資料として使用。地元のテレビ視聴データから「カープ愛」を分析

──企業向けサービスという性質上、扱うデータのなかには機密情報も多いですが、授業で取り扱うデータはどのようにして選ばれましたか。

青山氏:ビデオリサーチでは視聴率や消費者動向に関する一部のデータを発信しています。今回の授業でも、プレスリリースなど一般の方もWEB上で閲覧可能な公開データから何点かを抜粋して資料としました。

──題材選びや伝え方など、中学校での授業向けに工夫された点があればお聞かせ下さい。

青山氏:身近に感じてもらうため、地元広島に関するデータを意識して取り上げました。広島と言えばカープがおなじみですが、授業では地元における実際のテレビ視聴データを題材に用いて「他の地区に比べて、広島地区では明らかに多くの人々がカープを応援している」ことを数字の面から実感してもらうなど工夫しました。

また、データを読み解くときに気を付けるべきことをクイズ形式にし、生徒のみなさんに考えてもらう機会も設けました。たとえば、2つの県における交通事故の発生件数データがあったとき、単純に数値の大小だけを見るのではなく、それぞれの人口規模をもとに「1人あたりの発生件数」という共通指標にして比較するといった具合です。

「顧客満足度95%」といった“統計データ”を強調する広告などについても、「何人中95%なのか」という分母の目線で見ることで、そもそも統計の仕方が適切かどうか、恣意的な抽出が行われていないかといったことを見極めるリテラシーの重要性を伝えました。

■「なぜ200世帯で正確にわかるのか」実験を通じて標本調査の有用性を理解

──生徒のみなさんの反応はいかがでしたか。

青山氏:「データを見て面白かった」「どんなテレビ番組が人気なのか見られて楽しかった」といった声をはじめとして、「データの見方に気をつけないといけないと思った」「標本調査というものの身近さがわかった」など、授業を通してデータに対する向き合い方、読み解き方の一端を感じてもらえたことがわかる声をたくさんいただきました。

長谷川氏:授業のなかでは、統計データの使われ方という流れで「そもそも視聴率がなぜ存在するのか」というお話もさせていただきました。テレビ局では番組の制作、編成の参考情報として視聴率が使われているほか、広告取引や世の中の動向を見る指標としても活かされているといったことを説明させていただき、生徒のみなさんからは「視聴率が実際に世の中へどう活かされているのか、理解することができた」という声をいただきました。

また今回は「200世帯のサンプリングでなぜ正確な調査が可能になるのか」という点から、標本調査の具体的な方法の実験VTRを生徒のみなさんにも視聴していただきました。最近は「標本調査の実例」として視聴率が教科書に取り上げられることも多く、実験VTRを視聴した生徒さんからは「正確に調査できることが知れて驚きだった」「疑問を解決する手段として、標本調査が役に立つことがわかった」という声が上がりました。

青山氏:今回は視聴率や「好きなタレントランキング」といった身近なデータを題材に、クイズなどを取り入れるかたちで親しみやすい授業を心がけていましたが、生徒のみなさんも盛んに意見を出してくれて、とても積極的に参加してくれているのを感じました。

授業後にいただいた感想も、「思っていた以上にデータが生活に身近なものであるとわかった」「今後データを見ていくときには、だまされないようきちんと気をつけようと思った」など、こちらの話をとても素直に受け取ってくれていることが伝わるものが多かったのが印象的でした。

■データに興味を持つ子どもたちを増やし、将来の人材育成に貢献したい

──先生方からはどのような反響がありましたか?

青山氏:「ぜひまた次も、機会があればお願いしたい」という言葉をいただきました。先生方にとっても、今回の授業は生徒にとって意義のあるものになったと感じていただけたのではないでしょうか。

とくに校長先生は「生徒たちが進路を考えるときの選択肢を一つでも増やしてあげたい」というお話をされていて、普段なかなか若者から名前が挙がることのないビデオリサーチですが、このような“仕事”もあるのだということを知ってもらいたい、ということも、今回の授業の狙いの一つにあったのではないかと思っています。

──今回の授業を振り返っての感想をお聞かせ下さい。

青山氏:私自身が中学生、高校生のときに、このようにして統計データがこれだけ自分の周りに溢れ、社会で役に立っていることを知っていたら、また違った景色が見えていたかも知れないなと思いました。

放っておいてもモノが売れる時代ではない現代において、データ分析は商品を世に送り届けるための判断材料としてますます重要性を増しつつあります。今回の授業を通して、中学生のみなさんにデータが身近な存在であるということ、社会のさまざまな場面で活用されているということを伝えられたことは大きな意義があったと自負しています。

長谷川氏:世の中の価値観が多様化していくなか、「自分はこれがいいと思うが、そう思わない人もいる」というように、自分と他者の価値観の違いに直面することも多くなってきました。自分の思う事柄が世の中全般ではどう受け止められているのかを客観的に知ることができるというデータの優れた側面についても、生徒のみなさんに理解していただけたのではないかと思います。

青山氏:このような機会を通じて多くの若い人々にデータサイエンスに興味を持っていただくことは、将来の優秀な人材が増えることにもつながり、データを扱う企業としてビデオリサーチにとっても大きなプラスに繋がると考えています。今回の授業をきっかけに少しでもビデオリサーチの名前を知ってもらい、興味を持ってくれる子どもたちが増えてくれたら嬉しいなと思います。