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Inter BEE 2025 主催者が語る見どころ コンテンツを核にしたエコシステムへの挑戦

編集部 2025/11/13 17:00

2025年11月19日から21日にかけて幕張メッセで開催される「Inter BEE 2025」。60回目を超え、放送機器の展示会からコンテンツを「つくる(制作)」「送る(伝送)」「うける(体験)」すべてのプロセスを網羅、横断するコミュニケーションプラットフォームとしての性格が色濃くなっている。

本記事では開催に先立ち、主催の一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)経営企画本部 ブランドコミュニケーション部長の吉田 俊氏にインタビュー。今年のテーマや注目のセッション、Inter BEEが目指す未来の姿について伺った。

■作って、届けて、体験する。コンテンツの未来を展望するメディア総合展へ

──61回目を迎えたInter BEE、今回はどのようなコンセプト・テーマで行われるのでしょうか。いま目指している方向性も踏まえつつ、開催に込める思いをお聞かせください。

一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)経営企画本部 ブランドコミュニケーション部長・吉田 俊氏

1965年に国際放送機器展として出発したInter BEEですが、近年はソフトウェアやコンテンツそのものへと領域を広げています。コンテンツを「作って、届けて、体験して」という一連の流れを網羅する展示会へとシフトしており、10年後のコンテンツの未来が一堂に会する場所を目指しています。

コンセプトを言葉にするなら、「コンテンツがつなぐ、新たな創造体験の未来」です。これは放送局関係者だけでなく、コンテンツ制作に関わるすべての人々、プロから学生、アマチュアまでを対象としています。テクノロジーと掛け合わさることで、コンテンツの未来がどう描けるかを示す一大展示会を目指しています。

Inter BEEは、技術の最前線であると同時に、人との交流の場であることが非常に重要だと考えています。単に機器を見て解説を聞くだけでなく、テクノロジーをどう活用するのか、使う側と提供する側の視点を議論し、意見を交わす場として機能していきたいと考えています。

──コンテンツビジネスやソリューションの現在地を示すコンファレンス「INTER BEE BORDERLESS」が、今年から「INTER BEE MEDIA Biz」になりました。新名称にはどのようなコンセプトが込められていますか。

放送と通信の融合をテーマに2014年に「INTER BEE CONNECTED」としてスタートしたこのコンファレンスですが、民放キー局の同時配信が始まった翌年の2023年に、メディアの境界線がなくなった時代を反映して「INTER BEE BORDERLESS」という名称になりました。

そして今年から、「INTER BEE MEDIA Biz」へと変わります。これは、もはやメディアの体裁の話ではなく、実際にビジネスとしてコンテンツが生み出されるフェーズに入ったという我々の認識の表れです。

コンテンツをいかにマネタイズし、ビジネス化していくか。議論の前提が変わり、次のステップを考える時期に来ています。放送と通信の融合が当たり前になった今、「その上で、今度どうするのか」という問いに向き合う意識を明確にしました。

■AI、クラウド、メディアの信頼性──「これから生まれる価値」と「これまで積み重ねてきた価値」の両輪を深堀り

──今回も多彩な講演やセッションが目白押しですが、その核にあるテーマについてお聞かせください。

一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)経営企画本部 ブランドコミュニケーション部長・吉田 俊氏

Inter BEEで開催される講演やセッション、展示は、いずれも各企画のアドバイザーや有識者が「今、旬なものは何か」「どういう議論をすれば業界が変わるか」という視点でテーマを設定しています。

基調講演が集まる「INTER BEE FORUM」では、所管官庁のセッションに加え、11月20日に行われるIPTV Forum企画「放送とネット配信の両輪で創るテレビサービスの未来〜アドレッサブルTVからフェイク対策まで〜」など、放送・通信業界ともに向き合い方が問われるAIについても深く掘り下げる内容を予定しています。

また、「INTER BEE MEDIA Biz」で同じく11月20日に行われる基調講演「メディアの『信頼』を考える」といった、業界全体が気にかけているトピックにもフォーカスします。

我々はInter BEEを「メディア総合展」と掲げています。メディアに関わるすべての人、モノ、サービスが揃う場として、業界を取り巻くトピックを様々な形で網羅していきたい。その思いに基づき、多岐にわたるテーマを用意しています。来場された方が「面白そうだな」と思っていただければ、我々としては成功だと思っています。

──出展企業ですが、今年はソリューションプロバイダーや海外企業も充実していますね。

おっしゃる通り、ソリューションを提供している会社が、カンファレンスだけでなく出展者としても増えているのが特徴です。特定のサービスを提供するスタートアップの参加も目立ちます。動画制作の作り手側として関わる人、そしてその人たちを支える側として新たに参加する人が増え、業界が活発に動いていると感じます。

ホール規模は昨年と同じですが、今年の出展者数は昨年を上回る見込みで、さらに充実した内容に触れていただけると自負しています。出展者数や展示エリアのブース面積も増える見込みで、昨年以上に多彩な方々に関わっていただいています。

特に、クラウド関連の出展者が増えたのは嬉しい傾向です。AWS、日本オラクル、マイクロソフトといったクラウド提供事業者が出展しています。これは、機器が主役だった時代から、ソリューションやコンテンツ、ソフトウェアが中心へと移行していることの象徴といえるでしょう。

放送とネット配信の両輪で創るテレビサービスの未来〜アドレッサブルTVからフェイク対策まで〜

メディアの「信頼」を考える

Inter BEE 2024 会場風景

■「コンテンツのエコシステム」新潮流にダイブ! 担当者注目のセッション

──今回行われるセッションの中で、放送・動画配信事業者におすすめのものをいくつかご紹介いただけますでしょうか。

主催としてはすべてのセッションが必見という考えですが、ここでは私が個人的に注目しているものも含め、日程順にいくつかご紹介したいと思います。

まず最初が、「INTER BEE FORUM」で11月19日に行われる基調講演「ドジャースはなぜ投資するのか?球団もテレビ局も“投資家”になる時代」です。スポーツコンテンツの担い手であると同時にインキュベーターでもある、というドジャースの視点と戦略は、テレビ業界がどうエコシステムを築き、ビジネスモデルを構築していくかを考える上で大きな示唆を与えるものと期待しています。

「INTER BEE MEDIA Biz」も、11月20日の「逆リハック 西田二郎vs高橋弘樹-YouTubeの今と未来-」「日経エンタテインメント!連動 縦型ショート動画 次の“勝ち筋”はどこだ?」をはじめ、タイトルからすでに目を引くような斬新な切り口のセッションが目白押しです。

「逆リハック 西田二郎vs高橋弘樹-YouTubeの今と未来-」では、YouTubeチャンネル「ReHacQ(リハック)」プロデューサー・高橋弘樹さん、一般社団法人 未来のテレビを考える会/LocoStar株式会社・西田二郎さんのお二人が、YouTuberという発信スタイルの今と未来を語ります。

11月21日に行われる「生成AIの功罪〜本格化する『AI時代』にどう向き合う」など、AIにどう向き合うかというセッションも見逃せません。放送局でも生成AIの利用が避けられない中で、フェイクに使われないためのルール作りや、クリエイティビティの拡張、省力化など、両側面からの発見があるはずです。

さらに新しい切り口で言えば、「INTER BEE IGNITION×DCEXPO」で11月21日に開催される「アオハルのまま、メディアを変える」も注目です。このセッションではゲストに放送作家の鈴木おさむさんを迎え、若いクリエイターがいかにしてメディアを変えるような動画配信を作っていくかを議論します。

ドジャースはなぜ投資するのか?球団もテレビ局も“投資家”になる時代

逆リハック 西田二郎vs高橋弘樹-YouTubeの今と未来-

日経エンタテインメント!連動 縦型ショート動画 次の“勝ち筋”はどこだ?

生成AIの功罪~本格化する「AI時代」にどう向き合う

アオハルのまま、メディアを変える

Inter BEE 2024 コンファレンス風景

■来場者が会場で編集・撮影できる「Streamer Lounge」も開設 「エンターテインメント」を核に、熱量の集まる場所へ

──今年はさらに会場内で新しい試みが予定されているそうですね。

今年から新たな試みとして、会場内に「Streamer Lounge」を設けます。

Inter BEEについて発信してくださるストリーマー、クリエイターの方々が年々増えており、その活動を後押ししたいと考えていました。「Streamer Lounge」では編集用のワークブースや撮影機材、交流スペースを設け、より自由に、快適に発信できる場を提供します。

これは、動画制作や配信を行っている方々にもっと来場していただきたいという思いの表れであり、Inter BEEを「自分たちの展示会だ」と思ってくださる方々を大歓迎したいというメッセージを込めています。

また、各部門の優れた展示案件を表彰・発信する「INTER BEE AWARD」を、昨年に続いて今年も開催します。出展者のモチベーション向上と、来場者が優れた製品を見つけるきっかけ作りの両面で手応えを感じており、定着を目指したいと考えています。

──今後Inter BEEはどのような場になっていくのか、最後に展望をお聞かせください。

一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)経営企画本部 ブランドコミュニケーション部長・吉田 俊氏

これからは「エンターテインメント」が重要になると考えています。Inter BEEのタグラインは「Broadmedia & Entertainment」であり、ずっとエンターテインメントをうたってきました。これまではエンタメを「支える」機材やサービスの展示が中心でしたが、これからはエンタメ「そのもの」をイベントに持ち込みたいと考えています。

例えば、Inter BEEの会場でライブを行い、その撮影に出展各社の機材を使っていただく、といったことも考えられるでしょう。対面イベントの価値は、楽しいという体験にあります。仕事でありながらも、その延長線上にあるエンターテインメント性を表現できるようになれば、さらに魅力的な場になるはずです。

Inter BEEが目指すのは、人、モノ、サービスだけでなく、「熱量」が集まる場所です。作り手がプレイヤーとして参画できる仕掛けを増やし、互いに触発され合うような場を創出したい。それが業界団体が主催する展示会の意義であり、ポテンシャルだと信じています。来場される方々には、ぜひ1日だけでなく2日、3日と足を運んでいただき、Inter BEEを味わい尽くしていただきたいと思います。

「Inter BEE 2025」は、2025年11月19日から21日まで、幕張メッセで開催される。開催時間は、19日・20日が10時から17時30分まで、21日が10時から17時まで。来場は事前登録制。「Inter BEE 2025」公式サイトにて受付を行っている。

【リンク】
「Inter BEE 2025」公式サイト
https://www.inter-bee.com/