05 AUG

コンセント、イマーシブビデオが視聴体験者に与える心理的影響に関する実験に協力

編集部 2026/8/5 17:30

株式会社コンセントは、株式会社博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センターと株式会社MESONによる、180°の視野角のImmersive Video(以下、イマーシブビデオ)を実験刺激に用いた心理実験に協力し、そのプレプリント論文が2026年6月8日にarXivで公開された。

本実験は、イマーシブビデオの撮影距離が体験者の「その場にいる感覚(プレゼンス)」と、コンテンツ内の演者への心理的な近さに与える影響を測ったもの。使用するイマーシブビデオには実験条件に即した品質が求められるため、コンセントからは体験設計から技術面までイマーシブビデオに精通している専門チームが参加し、実験要件に基づく撮影プランの計画、本番映像の撮影・制作を担当した。

撮影で使用したのは、Apple Immersive Videoの撮影に特化した世界初(*1)の商用イマーシブカメラ「Blackmagic URSA Cine Immersive」。同カメラで撮影された映像を、実験心理学的手法に基づく人を対象とした実験に使用した、世界初(*2)の事例となった。

*1: メーカー公式発表 https://www.blackmagicdesign.com/media/release/20240611-02
*2:2026年7月13日 コンセント調べ。Blackmagic URSA Cine Immersiveで撮影されたイマーシブビデオを、人を対象とした実験の実験刺激に用いた世界初の事例。

■研究、および心理実験協力の背景

今回の心理実験は、株式会社博報堂DYホールディングスの研究開発部門であるマーケティング・テクノロジー・センター(以下、博報堂DYホールディングス MTC)と株式会社MESON(以下、MESON)の2社が進めている共同研究における新たな取り組みとして行われたものとなる。

イマーシブビデオは従来の2D映像とは異なり、視聴者が映像内の空間に入り込んだような感覚を得ることができる新たな映像メディア形式だ。ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)を介して体験が可能で、視聴者は画面の外から映像を見るのではなく、映像空間の中に入り込んだような感覚を得ることができる。

こうした体験を理解する上で重要な概念が、「プレゼンス」である。プレゼンスとは、仮想空間などにおいて、体験者が「その場にいる」と感じる主観的な感覚を指す。とりわけイマーシブビデオでは、カメラの位置が体験者自身の視点として経験されやすいため、撮影距離はプレゼンスの形成に関わる。すなわち、対象をどの程度近く、あるいは遠くに感じるかという空間的な経験にも影響を及ぼすと考えられる。

一方で、イマーシブビデオを通じて得られるプレゼンスが、コンテンツ内の演者に対する親近感や心理的な近さといった指標に影響を及ぼすのかについては、まだ十分に検証がなされていなかった。特に、ライブパフォーマンスのような人物中心のコンテンツでは、視聴者が対象をどれほど近く感じるかが、体験やエンゲージメントに関わる重要な要素になるとも想定される。そこで、博報堂DYホールディングス MTCとMESONは、本研究において、撮影距離の違いが、体験者のプレゼンスと演者への心理的な近さに与える影響を検証した。

その心理実験で用いる実験刺激の制作にあたり、両社から相談を受け、コンセントがイマーシブビデオの撮影に協力した。

※上記の研究、および心理実験協力の背景については、博報堂DYホールディングス MTCとMESONの発表内容をもとに一部調整して記載しています (7月14日プレスリリース: 博報堂DYホールディングス「博報堂DYホールディングス、 MESONと共に180°Immersive Videoの視聴体験に関する実証実験を実施」MESON「近くで撮影したイマーシブビデオは、演者をより身近に感じさせることを心理実験により確認」)。

■心理実験の概要と成果

本研究ではSTU48 4期研究生に撮影協力を仰ぎ、楽曲「出航」のライブパフォーマンスをBlackmagic URSA Cine Immersiveで撮影し、Apple Vision Pro上で体験可能なイマーシブビデオを制作した。

実験参加者には、撮影距離の異なる2種類(高プレゼンス条件:センターポジションの演者位置から1,200mm/低プレゼンス条件:センターポジションの演者位置から7,600mm)のライブパフォーマンス映像を体験してもらい、質問紙調査に回答いただく形で実験は行われた。その結果、演者に近い距離から撮影した映像では、遠い距離から撮影した映像と比較して、「その場にいる」と感じるプレゼンスや、演者に対する心理的な近さが高まること等が示された。

楽曲・演者・振付・会場は同一条件のもと、センターポジションの演者の位置と撮影カメラ位置との距離のみを変えて撮影した、2種類のイマーシブビデオを制作(写真左:高プレゼンス条件、写真右:低プレゼンス条件)

本実験の詳細については、博報堂DYホールディングス MTCとMESONのプレスリリース、およびプレプリント論文にまとめられている。

・博報堂DYホールディングスプレスリリース 「博報堂DYホールディングス、MESONと共に180 Immersive Video の視聴体験に関する実証実験を実施」(2026年7月14日)
・MESON プレスリリース 「近くで撮影したイマーシブビデオは、演者をより身近に感じさせることを心理実験により確認」(2026年7月14日)
・プレプリント論文 Toida, K., Hiranuma, H., Miura, S., Yamamoto, N., Kobayashi, Y., & Meguro, S. (2026). Enhancing Presence, Deepening Fan Intensity: How Presence in Immersive Video Shapes Psychological Closeness to Performers. arXiv preprint, arXiv:2606.08912. https://doi.org/10.48550/arXiv.2606.08912

■コンセントの協力内容

今回の心理実験で使用するイマーシブビデオの撮影・制作には、没入体験の設計から映像演出・撮影・編集・配信まで手がける、コンセントのイマーシブコンテンツ専門チーム「渡邊課」の代表ディレクター・渡邊徹氏と岩見祥汰氏が参加した。

実験では、ライブパフォーマンスをイマーシブビデオで収録した撮影距離が、見え方の違いだけではなく、コンテンツ体験を通して「その場にいる」と感じる感覚(プレゼンス)や、ライブを行う演者との心理的な近さに影響を与えるのかを調査するため、高品質の映像制作が求められた。

そのため、コンセントの渡邊氏と岩見氏は、本番撮影前の予備実験/実験刺激の予備的検討段階から参加し、研究チームの目黒慎吾氏(博報堂DYホールディングス MTC)、樋田浩一氏(MESON)等とともに、先行研究も参考にした上で、実験の目的・条件に合うイマーシブビデオの撮影距離の設計に協力した。プレゼンス条件を設定するにあたっては、撮影距離や解像度、音声に関する助言を行い、実際の収録においては、研究目的や実験条件を踏まえたイマーシブビデオの撮影の計画、および本番撮影を手がけた。音声に関しては株式会社CRAZYTV クリエイティブと連携し、空間音響で収録した。

先行研究をもとに、4種類の撮影距離と座位と立位を想定した撮影高を組み合わせた8パターンを設定、カメラテストを実施してその映像をApple Vision Proで確認。実際の収録で使用する高プレゼンス条件と低プレゼンス条件の決定に協力した
実験参加者に体験してもらうイマーシブビデオの本番収録では、先行研究を参照し、2つのプレゼンス条件それぞれの撮影距離となる位置にカメラを設置。撮影した映像をその場で関係者がHMDをつけてチェックし、実証実験で求められる品質となるよう収録を行った

今回の撮影で使用したカメラは、オーストラリアに本社をおく総合映像機器メーカーBlackmagic Designが、Apple Immersive Videoの撮影に特化して開発し、世界初の業務用イマーシブカメラとして2024年に発表した「Blackmagic URSA Cine Immersive」。本実験は、Blackmagic URSA Cine Immersiveによって撮影された映像が、人間の心理に及ぼす影響を検証する学術研究の実験刺激として活用された世界初の事例となった。

■コメント

渡邊 徹 氏(株式会社コンセント クリエイティブディレクター)のコメント
イマーシブビデオは今までのVR映像と比べて臨場感のレベルが1段も2段も向上したまさに新しい時代の体感メディアだと考えています。今回の撮影ではイマーシブビデオのポテンシャルを最大限引き出せるように気をつけて撮影をしました。それには精緻に映像と音の収録が必要になり、カメラの置く位置や高さなどを厳密に精査し撮影を行いました。またイマーシブである要件の一つに心理的インタラクションというものがあります。それは目が合うであったり自分に対してアテンションがある状態だったりを指します。STU48のメンバーからカメラへの目線配りも適度になるようにディレクションをしました。

渡邊 徹 氏

研究統括者 目黒 慎吾 氏(株式会社博報堂DYホールディングス)からのコメント
実験心理学に基づく厳密な比較を行うため、映像にはこれまでにない高精度な品質と、異なる条件下での確かな再現性が求められ、その両立が大きな挑戦でした。こうした難易度の高い要件に対し、コンセントの専門チームは初期のプロトタイピングから深く並走してくださいました。今回の実証結果は、今後のファン体験やエンタテインメントコンテンツのあり方に、新たな可能性を示すものです。今回の学術的成果を土台として、次世代メディアとしてのイマーシブビデオがさらに普及し、クリエイティブとテクノロジーの融合によって、生活者へこれまでにない豊かな没入体験や感動が届けられる社会が実現することを期待しています。

論文著者 樋田 浩一 氏(株式会社MESON)からのコメント
本研究では、撮影距離の影響を適切に評価するため、比較条件を厳密に統制した実験刺激の制作が重要な課題でした。コンセントには、研究要件を踏まえた撮影・制作にご協力いただき、学術的な検証に適した映像を実現することができました。本研究が、イマーシブビデオの体験設計や活用の発展につながることを期待しています。

会社概要

■ 株式会社コンセント
コンセントは「デザインでひらく、デザインをひらく」をミッションに、企業や行政と伴走し活動を支えるデザイン会社です。
デザイン経営や事業開発、マーケティングやブランディング、クリエイティブ開発等において、サービスデザインの視点と技術を生かして戦略策定から実行まで一貫して支援しています。また、誰もがデザインについて学べる「コンセントデザインスクール」の運営等を通して「デザインの知の活用」を広く共有しています。生活者一人ひとりがデザインの視点を身につけ、問題解決に役立てられる社会となることを目指して活動しています。

会社名:株式会社コンセント
所在地:〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南1-20-6 プレファス恵比寿南
設立:1973年12月
代表者:代表取締役社長 長谷川敦士
事業内容:デザイン経営支援、事業開発や成長支援、デザイン組織や業務の構築支援、サービスデザイン、ブランディング支援、デジタルメディア開発、クリエイティブ開発

・コーポレートサイト:
https://www.concentinc.jp/
・イマーシブコンテンツ制作支援について:
https://www.concentinc.jp/solution/immersive-content-service/

■ 株式会社博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター
株式会社博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センターは、生活者データ、先端テクノロジー、マーケティングサイエンスを活用し、企業のマーケティング活動および生活者体験の高度化に向けた研究開発を行っています。
https://hakuhodody-mtc.com/

■ 株式会社MESON
MESONは「まなざしを拡げる」をパーパスに掲げ、XRとAIを融合させた空間インテリジェンス技術の社会実装を目指すスタートアップです。XRとAIの融合によって生まれる新しい体験価値の創出を支援し、課題探索の初期段階から企業と伴走します。PoCにおいては、体験効果を定量的に計測できる仕組みを備え、技術と事業の両面から実装と検証を支援しています。
https://www.meson.tokyo/

■ 株式会社CRAZYTVクリエイティブ
最新鋭の技術で、映像と音響表現の可能性を追求する総合映像プロダクション。企画から制作までワンストップで対応可能な体制を完備しています。常に時代の先を見据え、次世代の新たな映像体験を世界へ発信し続けます。
https://crazycr.jp/