左から一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)ブランドコミュニケーション部長 吉田 俊氏、同市場創生部 チーフ 佐久間 遂也氏
Inter BEE 2026 主催者が語る見どころ ソフトウェア化と共創が拓くメディアの未来
編集部 2026/11/2 12:00
11月18日〜20日に幕張メッセで開催される「Inter BEE 2026」。今回はベンダーとユーザーによる共創企画や、AI活用・ビジネスモデル転換に関するコンファレンスなど、実務的な課題解決や新たな価値創造に向けた議論の場を目指す。
本記事では開催に先立ち、主催者である一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)ブランドコミュニケーション部長 吉田 俊氏、同市場創生部 チーフ 佐久間 遂也氏、運営を担う一般社団法人日本エレクトロニクスショー協会(JESA) 事業部長 小田 佳代子氏にインタビュー。今年の見どころと、展示全体を通じたビジョンについて伺う。
■「機器更新を中心とした設備投資」から「ソフトウェアによる継続的な進化」へ
——Inter BEE 2026のコンセプトやテーマについてお聞かせください。
吉田氏:Inter BEEは歴史的に放送機器展としてスタートし、映像や照明、音声機器などを紹介する場として発展してきました。昨年はコンテンツの「作る・届ける・体験する」という一連のプロセスを網羅する「メディア総合展」への変化をお伝えしましたが、今年はさらなる進化を目指しています。
自動車業界のSDV(Software Defined Vehicle)と同様に、放送業界でも従来の機器更新を中心とした設備投資に加え、ソフトウェアによる機能拡張や運用の高度化を継続的に進める方向へと変化しています。今年の Inter BEE では、AIやIP技術の導入によって制作現場やコンテンツの潮流、エンターテインメントがどう変わるのかを示す場を目指しています。
——最新の技術や概念そのものを検証する場になっているということですね。
吉田氏:その通りです。Inter BEEは、出展者と来場者が年1回集い、変化の進展度合いや自社の立ち位置を確かめ合う定点観測の場として機能しています。多様な専門領域のプレイヤーが一堂に会し、分野を超えて交流できる点が特徴です。
従来のテレビ局や機器メーカーに加え、動画クリエイターや配信事業者、企業のメディア活用に携わる方々など、来場者の層も広がっています。世の中の変化に対して自社ビジネスや業務をどう適応させるかを多角的に議論し、課題解決のヒントを得られる場になっていると感じています。
■新展示「Inter BEE MoIP」が体現する、ベンダー×ユーザー協調の未来開拓
——今回から「INTER BEE MoIP」として新たに展開する企画について、経緯を教えてください。
佐久間氏:「Inter BEE MoIP」は、2018年に始まった「INTER BEE IP PAVILION」を前身とし、「INTER BEE DX × IP PAVILION」として展開してきた企画を全面的に刷新した特別企画です。2025年3月に放送事業者や放送機器メーカー、通信事業者など計43社(現在70社)で発足した「Media over IPコンソーシアム」が企画・運営を担い、SDI設備からIP設備への円滑な移行や放送事業者のIP人材の育成を後押しします。
吉田氏:背景にはソフトウェア化への対応があります。JEITAが推進するコンソーシアムの活動と、主催展示会であるInter BEEというリアルな場を結び付け、業界共通の課題解決や新たな事業機会の創出につなげることを目指しています。
佐久間氏:今年は「ベンダーとユーザーの共創」をテーマに、IP化による制作環境の変化を、実際に動くシステムと操作体験を通じて紹介します。35社以上が参画し、相互接続を事前に検証したIP対応機器の展示、放送事業者が準備したリモート制作環境の実演・操作体験、ベンダー各社によるオンプレミスとクラウドの制作ソリューション展示を行います。
また、ベンダー各社が東京・名古屋・大阪と幕張を結ぶ大規模ネットワークを構築し、オンプレミスとクラウドに実装した最先端の制作ソリューションを展示します。クラウドでは、MXL(Media eXchange Layer)対応ソリューションも紹介します。MXLは、異なる制作ソフトウェア間で映像・音声などを共通の仕組みで受け渡すためのオープンソース技術です。複数のソフトウェアを柔軟に組み合わせて制作機能を構成する可能性を示します。会場・各拠点・クラウド・通信回線を横断して状態を把握する統合監視もご覧いただけます。
——膨大な機材を必要とせず、コンパクトな構成での運用が行える点がリモートプロダクションの特徴ですが、今回の展示でもその一端を見ることができるのでしょうか。
佐久間氏:制作処理は遠隔拠点の設備で行い、会場には操作用機材などを配置します。放送事業者が自ら機器の設定や制作準備を行った環境で、会場のリレー技術セミナー映像を使い、幕張メッセからスイッチングや音声調整を行います。来場者には、その実演を間近でご覧いただき、実際に操作も体験していただけます。
——放送局とメーカー各社がお互いの設備を持ち寄る形で構成していると伺いました。
佐久間氏:放送事業者が機器の設定や制作準備に携わり、ベンダー各社がネットワークや制作ソリューションを構築するなど、それぞれの知見を持ち寄って進めています。主要プレイヤーが一堂に会するInter BEEという場があるからこそ実現できる取り組みです。
設備やインフラのうち共通化できる領域は協調し、各社の強みを生かす領域では競争するという考え方が広がっているように思います。今回の「INTER BEE MoIP」では、その最先端を体感いただけるはずです。
吉田氏:変化の激しい過渡期だからこそ、現物を取り囲んで意見を交わし、業界の方向性を模索することに大きな価値があると思います。ぜひお立ち寄りいただき、課題や解決策について率直に意見を交わしていただけたら幸いです。
■「INTER BEE MEDIA Biz」テーマは「いかに制作し、届けるか」 現場変革、収益化にフォーカス
——昨年は放送メディア分野を主軸に展開した「INTER BEE MEDIA Biz」ですが、今年はさらに領域を広げていますね。
小田氏:放送から映画、アニメまで領域を広げ、コンテンツ制作やグローバル展開、メディアビジネスの変革といった幅広いテーマへシフトしました。放送と通信の融合を越えて、コンテンツを「いかに制作し、届けるか」までを網羅したメディア業界を横断する構成となっています。
吉田氏:見どころは大きく3点あります。1点目は「テレビの次の形」を正面から問う議論、2点目は映画やアニメを含めた「コンテンツビジネスの収益化」、3点目は「制作現場の変革」です。クラウドやIP、AIの導入による現場の変化を作り手とメーカーの双方向から掘り下げます。
佐久間氏:AIに関してはツールへの標準実装が進んでおり、今後は他業界同様に業務効率化や人手不足解消に寄与するAIエージェントの活用事例などがトレンドになると予想されます。こうした流れも踏まえ、これまでの概念検証から実務に沿った活用へとより解像度を上げた議論が行われます。
小田氏:出展面では「メディア・ソリューション部門」が拡大し、データ分析やソフトウェア開発を手がける出展者が新たに多数参加します。企業のみならず、放送局自身による技術・ソリューション開発の出展など、単なる「売り手と買い手」にとらわれないボーダーレスな取り組みの数々に触れていただけます。
吉田氏:多様なプレイヤーが参画することで展示内容の幅が広がり、参加者が互いに刺激を受け合える環境が整っています。今年は特にその傾向が鮮明になってきました。異なる分野の技術や人が交わることで生まれる新たな可能性を、ぜひ感じていただきたいと思います。
■「地に足のついた議論」が揃うコンファレンス 実用化技術の実務活用を深掘り
——コンファレンスプログラムも非常に具体的で現実的なテーマが揃っていますね。
吉田氏:未来の夢を語るだけでなく、すでに実用化段階にある技術やソリューションをどう実務やビジネスの改善に繋げるかという、地に足の着いた議論を展開します。
小田氏:11月19日(木)の展示終了後に北海道テレビの藤村忠寿氏らを迎え、この1年の放送メディア業界での話題やニュースの振り返りセッションを予定しています。また、会期中にはサステナビリティに取り組んでいるメディアテック企業や自治体での事例を紹介する特別企画も実施します。欧米で先行するメディア業界のサステナビリティを日本市場にどう展開するかを議論します。
吉田氏:いまやAI導入は、単なる業務削減にとどまらず、ビジネスモデル全体の変革に向けた本質的な活用法を模索するフェーズへと入っています。自社の課題に合わせた最適な活用策を見出すためのヒントが得られると思います。
小田氏:参加者の滞在時間が平均5時間以上と非常に長く、密度の高いコミュニケーションが行われている点もInter BEEの大きな特徴です。来場者の皆様にはただご覧いただくだけでなく、自社の課題を持ち込んで活発に議論していただきたいと考えています。
■制作環境の変化を映し出す多様な展示が目白押し 潮流に触発された活発な議論を
——会場内の環境整備や次世代育成に向けた取り組みについてもお聞かせください。
吉田氏:若手人材の確保は業界全体の共通課題と捉えています。今回も映像系の専門学校生や大学生に向けた見学ツアーを継続実施し、業界の魅力を伝えていきます。
小田氏:会場では交流、滞在環境の向上としてラウンジやカフェエリア、飲食スペースを拡充し、じっくりと商談や情報交換を行っていただける環境を整えています。昨年好評であった「Streamer Lounge」やストリートピアノの展示も行います。
展示面では、初出展の企業も今年は多く、制作環境の変化を映し出す多様な展示が見どころです。
音響分野では、大空間でのスピーカー試聴体験企画なども用意しています。今年は前回まで使用していたイベントホールが改装工事中のため国際会議場にて開催しますが、よりスタジオに近い室内環境となることで、新たな音響特性を感じていただけることと思います。
コンファレンスにおいては、専門性の高い来場者の期待に応えるべく、登壇者・出展者ともに密度の高い準備を進めています。
——最後に、来場者・参加者の皆様へメッセージをお願いいたします。
佐久間氏:今回も1年かけて準備を進めてまいりました。ぜひブースへ足をお運びいただき、最新のIP技術やソリューションをご体験ください。コンソーシアムへのご参加もお待ちしております。
吉田氏:専門領域の視察にとどまらず、映像・音声・照明・配信など全体の潮流を把握し、課題解決のヒントを得る場としてご活用ください。リアルな場だからこそ生まれる出会いや議論が、皆様のビジネスを前進させるきっかけになれば幸いです。
小田氏:Inter BEEは参加者同士が深くつながり、触発を生み出すコミュニティです。快適に過ごせる環境を用意しておりますので、ぜひ多くの皆様のご来場をお待ちしております。
Inter BEE 2026
会場:幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区中瀬2丁目1)
会期:11月18日〜20日 10時〜17時30分(最終日20日のみ17時まで)
https://www.inter-bee.com/