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テレワーク環境を活かした新たなテレビ番組の潮流 〜キー局の取り組みから

編集部 2020/5/1 12:00

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大、またそれにともなう政府の緊急事態宣言発令にともない、テレビ各局ではスタジオでの収録や社屋への立ち入りなど、様々な対応を行なっている。春からの新作ドラマの放送延期やレギュラー番組の新作放送見合わせが続くなか、テレビ会議システムなどを活用したテレワーク型の収録に乗り出す事例もいくつか見受けられるようになってきた。今回はそんな各局の“取り組み”をいくつかご紹介する。

■既存バラエティを「テレワーク式」にアレンジ

テレビ東京は、4月25日(土)11時30分から、出演者が全員在宅のままテレワークでトークを繰り広げるバラエティ番組『出川・IKKO・みやぞんの割り込んでいいですか』を放送。同番組は5月10日(日)16時から17時15分にも放送される。

緊急事態宣言によって予定されていたロケ収録が不可能となったことを踏まえ、急遽企画を変更して放送されたというこの番組。タレントの出川哲朗、IKKO、そして「ANZEN漫才」のみやぞんがそれぞれ自宅や仕事場からテレワークで出演し、自宅での遊び方や生活の仕方に関するアイデアをトークした。

タイトルにもあるように、番組では3人のトークへ他の出演者たちが「割り込んで」参加する。25日の放送では「ゆきぽよ」ことモデルの木村有希や大食いタレントのギャル曽根、「よゐこ」の濱口優らがリモート通話に「割り込み参加」。回線トラブルなど不測のハプニングもふくめて状況を楽しむ様子が好評を博し、インターネット上では「死ぬほど面白い!」「中毒性ある」「新しい番組の作り方だね」といった声が上がっていた。

日本テレビのバラエティ番組『有吉の壁』(毎週水曜、19:00〜)4月22日放送分では、芸人たちが大物スターに扮し、「スターの自宅を生中継する」という設定で各々の自宅や仕事場からテレワークでギャグを披露する企画「スターのおもしろ自宅公開選手権」を実施した。

番組放送後には動画配信サービス「Hulu」にて特別番組『有吉の壁に耳あり THE LIVE』を配信。「三四郎」の相田周二、とにかく明るい安村、「チョコレートプラネット」の松尾駿、「ジャングルポケット」の太田博之らレギュラー陣をテレビ会議システムで結び、収録の模様を振り返りながら「反省会」を繰り広げる様子を生中継する試みも行われた。

テレビ朝日のバラティ番組『夜の巷を徘徊する』(毎週木曜 24:15〜24:45)では政府の緊急事態宣言を受け、タレントのマツコ・デラックス氏による街歩きロケを中止し、「密集・密閉・密接」の“3密”を避けたスタジオ収録に変更。「妄想徘徊」と銘打ち、SNS上で公開された昔の東京の町並みの動画を見てコメントしたり、過去に行ったロケで出会った人々の後日談を取り上げた。

『あいつ今何してる?』(毎週水曜 19:00〜20:00)では「緊急特別企画『ネプチューン今何してる?』」と題し、MCを務める「ネプチューン」の名倉潤、原田泰造、堀内健らの自宅からテレワーク形式で中継。自宅の風景や家族撮影のVTRを交えながら、緊急事態宣言後の生活の模様を伝えた。

■「リモートワーク出演」を前提とした新番組も

出演者のリモートワーク参加を前提とし、緊急事態下における過ごし方にフォーカスを当てた番組も続々と生まれている。

フジテレビでは、歌手のレディー・ガガの呼びかけによって開催された、医療従事者などへの支援を目的とした世界的規模のストリーミング・コンサート『One World: Together at Home』に賛同。コンサートの模様を4月19日(日)25:30〜27:40にかけて全編CMなしで放送した。

TBSテレビの音楽番組『CDTVライブ!ライブ!』では、4月27日(月)19:00〜23:00『おうちで歌おう!CDTV27年のヒットランキング全部歌える4時間スペシャル』と題した大型特番を放送。「EXILE」のATSUSHI、DA PUMP、スキマスイッチ、AI、ナオト・インティライミ、秦基博、三浦大知ら7組の豪華アーティストがそれぞれの場所で「自撮り」した歌唱を披露。ATSUSHIは当番組で未発表曲「輪廻」のテレビ初歌唱に踏み切ったほか、「AIと一緒におうちで『ハピネス!』を歌おう」と銘打ち、視聴者から募集したAIの代表曲「ハピネス」の歌唱動画を番組内で紹介する試みも行われた。

NHKにおいても、テレワークをテーマにした番組制作の取り組みが行われている。4月18日に放送された『よなよなラボ』(NHK総合 24:05〜25:05)では、「スマートフォンの画面のみを使用した番組制作」をテーマに掲げた。

MCの岡崎体育、ロックバンド「ヤバイTシャツ屋さん」のこやまたくや、もりもりもと氏、しばたありぼぼ氏の4名がスマートフォンのビデオ通話アプリを使用して遠隔で番組に参加。収録中にSNSの友達リストから親しい芸能人に出演を依頼する様子もスクリーンキャプチャつきでそのまま放送する斬新な内容が話題となった。

また同局では「テレビ界初?!のリモートワークドラマ」として、出演者全員がビデオ会議システムを通じて番組に出演し、役柄を演じるドラマ『今だから、新作ドラマ作ってみました』を5月4日(月)23:40〜24:10、5月5日(火)23:15〜23:45、5月8日(金)23:40〜24:10 それぞれNHK総合テレビにて放送。脚本打ち合わせから収録まで、スタッフと出演者が「いちども会わずに」制作。出演者が自宅で自ら収録機材をセッティングする模様など、普段は表に出ることのない番組制作の裏側もリアルタイムで発信していくという。

テレビ朝日・サイバーエージェントが共同出資するインターネットテレビ局「ABEMA」では、5月4日(月)22:00より3夜連続でクイズ番組『賞金300万円争奪!在宅クイズバトル QUIZ ROOM』を放送。回答陣が全員「完全リモート」で番組に参加し、クイズバトルを繰り広げる。

■人気番組の「WEB会議用背景」を配布 TBS「#家にいよう」キャンペーン

TBSでは全局横断型キャンペーン「#家にいよう」を展開。「コンテンツの力で『家にいないとならない』から『もっと家にいたくなる』気分を」と、感染拡大のための外出自粛生活をポジティブに楽しんでもらうための試みを行っている。

人気番組の公式ツイッター、宣伝部公式ツイッター(@tbs_pr)では、『半沢直樹』や『逃げるは恥だが役に立つ』など人気ドラマに登場したオフィスや部屋のセット写真をWEB会議用バーチャル背景として配布。自宅にいながらにして、ドラマやバラエティの舞台にいるような気分を楽しめる仕掛けで人気を集めている。

外出自粛要請解除への先行きが不透明ななか、逆にこの状況を活かしたライブ感あふれる番組作りがさまざまな形で生まれつつある。これまで編集でカットされてきたような出演者の素の表情であったり、番組打ち合わせの風景などもそのままドキュメンタリーとして見られており、今後続く各局の新たな取り組みに引き続き注目したい。