25 AUG

日テレ若手社員、LIVEPARKで『VTuberおバカぐらんぷり』をプロデュース!〜インタビュー(前編)

編集部 2020/8/25 09:00

日本テレビが2020年5月に立ち上げたVTuberネットワーク「V-Clan(ブイ・クラン)」。約100名以上のVTuberと提携し、VTuberネットワークとしては業界内でも最大級の規模を誇る。6月にはグループ企業である株式会社LiveParkが運営する動画配信サービス「LIVEPARK」上にて、9人の人気VTuberが不名誉な”おバカNo1”の座をかけて、早押しクイズに挑むバラエティ番組『VTuberおバカぐらんぷり』を有料配信し、注目を集めた。

さまざまな個人や企業が多数参入し、状況の変化がめまぐるしいVTuber業界。ここにテレビ局として参入を決めたきっかけとは。そしてVTuberが切り開くコンテンツの未来とは── 。

今回は、日本テレビ入社4年目の若手プロデューサー・西口昇吾氏、株式会社LivePark代表取締役社長の安藤聖泰氏、同社総合プロデューサーの清田いちる氏にリモートインタビュー。前編では、『VTuberおバカぐらんぷり』プロデューサーを務めた西口氏に、「V-Clan」事業について主に話を聞いた。

■西口昇吾氏プロフィール

西口昇吾氏

日本テレビ放送網株式会社 社長室企画部所属。大阪大学在学中よりロボット研究の第一人者・石黒浩教授のもと自律対話システムに関する研究開発に従事したのち、2017年に日本テレビ放送網株式会社入社。入社1年目にアンドロイドアナウンサープロジェクト「AOI ERICA(アオイ エリカ)」を立ち上げ、翌年には社内新規事業としてVTuber事業を立ち上げる。現在は同社のVTuberネットワーク「V-Clan」共同代表。『VTuberおバカぐらんぷり』ではプロデューサーを務める。

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■VTuberの活動を様々な形でサポートするネットワーク「V-Clan」

──最初に「V-Clan」の概要について教えてください。

西口氏:「V-Clan」は約100名のVTuber様にご登録いただいている、日本最大級のVTuberネットワークです。「VTuberを次のステージへ」というビジョンを掲げ、主に制作、営業、プロモーション面で、ご登録いただいているVTuberの皆様の活動をサポートしております。

──テレビ局系のVTuberネットワークとして、具体的にどのような業務を行っているのでしょうか。

西口氏:事務所ではなくネットワークという形態であるため、それぞれの事務所や箱での活動も大事にしていただきながら、プラスアルファでイベントや番組への出演機会を提供したり、タイアップ案件をご紹介したりしております。また、企業のVTuberの新規プロデュースや番組やイベントの企画・制作など、幅広くVTuberのエンターテインメントに携わっています。今回の『VTuberおバカぐらんぷり』もその一環で、番組の企画・制作を行い、出演の場を提供し、出演料をお支払いする形で、V-Clanメンバーの活動のサポートをしています。

──実在のお笑いコンビであるアメリカザリガニがVTuberとして所属していることに驚きました。

VTuberとして所属するアメリカザリガニ(柳原哲也・平井善之) 所属:松竹芸能

西口氏:アメリカザリガニのおふたりは、V-ClanをきっかけにVTuberになったわけではなく、V-Clan立ち上げ前からVTuberとして活動されていました。ご本人たちがVTuberのカルチャーが本当に大好きで、ご自宅にも(VTuberの動きや表情を設定する)モーションキャプチャーの設備があるそうです。リアルな芸人のアメリカザリガニとしてだけではなく、バーチャル芸人として新しい世界に挑戦しており、その領域を広げるためのサポートさせていただきたいと思い、「V-Clan」への登録を打診しました。

■「ゴリラ」や「クマ」などのVTuberも所属

──所属メンバーの一覧を見ると、とにかく個性的な顔ぶれが印象に残ります。

西口氏:これはV-Clanの大きな特徴の一つかもしれません。最近はVTuberもYouTubeだけでなく、様々なメディアで紹介されるようになり、一般的な認知も広がってきたと思うのですが、まだ世間的には”VTuber=美少女”のイメージが大きいと思います。「V-Clan」には前述のアメリカザリガニのおふたりや、クマのVTuberである「クマーバさん」、ゴリラのVTuberである「バーチャルゴリラさん」のように人ではないキャラクターも参加しています。VTuberの世界の多様性を知っていただきたいと思い、個性豊かなVTuber様にご参加いただきました。

子供向け動画で活躍するクマのVTuberクマーバ・タブリス ©Akatsuki Inc.
ゴリラのVTuberバーチャルゴリラ ©VEEMusic

──人間の姿をしているキャラクターだけがVTuberではないのですね。

西口氏:怪獣の姿をしていたっていいし、クマさんみたいなかわいいキャラクターがいたっていい。VTuberはなりたい自分として自由に活動できる存在なのだということをもっと世間に知っていただき、幅広い人にこの文化を親しんでいただきたいと思っています。

■学生時代のYouTuber活動が事業のきっかけに

──西口さん自身、もともとYouTuberとしてご活躍の経験があると伺いました。

西口氏:はい、顔出しはしていませんでしたが、学生時代にYouTuberとして活動していました。アルバイトだけではどれだけ一生懸命働いても、大学院の学費や家賃を賄いきれず、限界があったため、YouTubeで動画投稿を始め、アルバイトをしなくても広告収入や企業案件だけで十分に豊かな生活をしていけるようになりました。途中から自分で作る動画の本数は抑えて、経営者、歌い手、ボカロP、トレーダー、漁師など色んな人のYouTubeチャンネルのコンサル的なこともやってましたね。

──生活費をまかなえるほどの収益、というのはすごいですね。動画はどのくらい製作していたのでしょうか。

西口氏:動画は自分で企画、撮影、編集をしたものだけでも、おそらくトータルで1,000本くらいはあると思います。YouTubeはものすごいスピードで環境が目まぐるしく変わるので、その時のノウハウが全て今そのまま使えるわけではないのですが、ベースとなるノウハウは今でも役立っていると思います。

──今回、テレビ局としてVTuber事業を立ち上げた経緯を教えてください。

西口氏:日本テレビに入社し、アンドロイドアナウンサープロジェクトの立ち上げを経て、テレビ局のリソースと自分の得意分野をかけあわせたビジネスをやってみたいと思っていました。そんな中、2017年の冬頃に「キズナアイさん」をYouTubeで観たことがきっかけとなり、これ一緒にやろう!と同期とふたりでVTuber事業を立ち上げました。

後編では、株式会社LivePark代表取締役社長の安藤氏、同社総合プロデューサーの清田氏も交え、西口氏がプロデューサーとして手掛けた『VTuberおバカぐらんぷり』制作の裏側や、企画の背景にある深い“VTuber愛”に切り込んで尋ねる。

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