HTB報道情報局報道部・坂本英樹氏

05 OCT

ローカルニュースを24時間配信するHTB「北海道ニュース24」の狙い〜インタビュー(前編)

編集部 2020/10/5 08:00

HTB北海道テレビの報道部がニュース動画を24時間配信するサービス「北海道ニュース24~HTBニュースLIVE」の提供を始めている。ローカル局における災害報道のあり方が問われているなか、既存の配信プラットフォームを活かし、最低限のコストとシステムでいかに効率的に緊急放送を行うことができるのか。そんな問い掛けから始まったHTBのデジタル化の取組みの一環が具現化した。立ち上げから携わるHTB報道情報局報道部・坂本英樹氏に「北海道ニュース24」導入の理由と狙い、可能性について聞いた内容を前・後編にわたってお伝えする。

■報道と技術がタッグを組み、準備を進めた約1年

HTBの「北海道ニュース24」はHTB地上波レギュラー報道情報番組の『イチモニ!』『イチオシ‼』『HTBニュース』で扱った北海道に関するニュースを動画ファイル化し、それを30分程度にまとめてYouTubeで24時間ライブストリーミングしている。開始したのは8月13日から。立ち上げに至るまでどれぐらいの準備期間を経たのだろうか。

坂本氏:この数年、全国的に地震や豪雨被害などで被害が深刻なケースが増え、放送波だけではなく、広く視聴者にニュースを届けることが求められています。キー局は人員やコストをかけてデジタル展開を拡大しつつありますが、ローカル局は人員体制も予算も限られています。こうした背景があることから、ローカル局でもいかに効率的に緊急放送ができる素地を作れないかと、報道と技術と昨年から話し合いを進めていました。

局内で進められていた配信システムの技術開発が今回の導入を早めた。その経緯も説明してもらった。

坂本氏:ちょうど局内のデジタル化の取り組みの一環として、天気予報で使用する情報カメラの映像をYouTube経由で24時間ライブ配信していました。この仕組みをうまく活かせたらいいのではないかと、技術チームに相談しました。さっそく情報カメラの映像をHTBニュースの公式チャンネルに移動させ、中継機材を使って本社に送られてきたニュース素材について、情報カメラの映像からその中継映像に切り替えて生配信する取組みをトライアル的に始めたのです。新型コロナウィルスに関す北海道知事の緊急会見などが入った際にトライアルを重ねたところ、大きな事故もなく平常運用ができることを確認できました。さらに今年7月に入り、技術チームから「現状のニュースの動画配信の仕組みを生かした上で、ほとんどコストも新たな人員もかけずに、ニュースコンテンツの24時間配信ができるというシステムを開発した」と報告を受けました。できるだけ早く導入しようと検討を進め、試験運用などをクリアして、無事導入に至りました。

■朝、昼、夕、夜のニュースをいち早くアップ、緊急放送にも対応

現在、朝・昼・夕・夜に地上波で放送されている最新ニュースを中心にループ再生して届けられている。随時新しいニュースが更新され、「緊急ニュース」や「速報」にも対応する。配信するタイミングやニュース素材の基準などは設けているのか。

坂本氏:基本的にニュースを報じたタイミングでできるだけ早くアップしています。そのため朝、昼、夕、夜、といったテレビのタイムテーブルに概ね沿っています。もちろん速報に関しては随時更新しています。また権利などの問題が無いニュースを扱っています。再編集はしていませんが、配信画面左上の日付とHTBのロゴを自動表示させています。加えて、VTRやスタジオでの音響効果は抜いた状態で配信しています。そもそもローカルニュースは本数が限られていますから、日々のニュースをできるだけアップしていくということを基本方針にしています。

ローカル局のニュース配信には人員やシステム体制の工夫も必要になる。報道部の中でどのような体制が組まれているのか。

坂本氏:日々のニュース担当デスクがニュースチェックをしている傍らでデイリー作業として組み込んでいます。ニュースチェックし終わった後に、インターネットニュース用に動画配信している一連の作業の中に「北海道ニュース24」を組み込んでいるというものです。また「北海道ニュース24」ならではのコンテンツである緊急時の会見にも常に対応できるようデスク陣に周知し、実際に運用できています。

■特番「震災2年 忘れないために」を同時配信する試み

デイリーや緊急ニュース素材の他にも「北海道ニュース24」を活用したコンテンツ配信も積極的に取り組んでいる。その一つが先日、9月4日(金)には情報番組『イチオシ』(毎週月~金 15:45~放送中)のスペシャル版「震災2年 忘れないために」を同時配信する試みだった。

胆振東部地震から2年

坂本氏:北海道胆振東部地震は44人が犠牲になるなど深刻な被害をもたらしただけではなく、北海道全域が停電し、ブラックアウトになった未曽有の事態も引き起こしました。この地震を我々道民は忘れてはいけないと、去年「震災から1年」として夕方ワイド『イチオシ‼』の全枠を使ってスペシャル展開しました。そして今年も同様に「震災から2年」のスペシャルを企画し、準備を進めていたところ、災害時の緊急放送手段としても作っていた「北海道ニュース24」にも同時配信してはどうか、という提案が持ち上がったのです。すぐに関係部署と準備に走り、さまざまな条件をクリアして無事実施に至りました。

開始からまだ2か月足らずだが、反響を得ている様子だ。他局からの関心も多く集まっている。また視聴者の反応も気になる。

坂本氏:走り始めたばかりなので手応えについてはまだまだ実感としてありませんが、系列内外からの問い合わせが徐々に増えています。技術システムは汎用性があるもので、可能な範囲で共有したいと思っています。どういうかたちで明らかにするかを含めて技術陣と検討しています。また視聴者から頂いた反応については、有効化しているチャット機能を通じて「素晴らしい」「道外でもイチオシ‼が見られる」などのコメントを拝見でき、嬉しかったです。開始から約2週間で1000人の方にHTBニュース公式チャンネルに登録してもらっています。あまり周知していないなかで、有難い限りです。

「北海道ニュース24」の導入の背景には、緊急放送や報道特別番組を地上波だけでなくインターネットを介して視聴できる同時配信のプラットフォームを準備しておきたいという想いがある。また北海道に関する最新のニュースコンテンツをいつでもどこでもみられる視聴者ニーズに答える役割も担う。後編はこれまでの取り組みから見えてきた課題や今後、収益性を見据えた考え方をお伝えしたい。