30 OCT

TBS、NewsPicksとの“共創”で「視聴の循環」を生み出す〜『金言Picks』担当者インタビュー

編集部 2020/10/30 09:00

TBSテレビは2020年10月4日より、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」との共創による番組『金言Picks ~次なる起業家に、知恵をさずける~』(毎週日曜 22:54~23:00 ※関東ローカル)を放送開始した。

番組のコンセプトは、「起業家たちの『夢』を応援する番組」。毎週1人の起業家が自分の事業に対する「夢」についてプレゼンテーションを行い、番組MCのROLANDさんやカリスマ経営者たちから人生のヒントとなる金言が贈られるというもの。地上波では毎週日曜にミニ番組として放送。さらにこれをまとめ、NewsPicksのアプリ上で毎月1回『Greatest Hints ~次なる起業家に、知恵をさずける~』と題したロングバージョンを配信する。

『金言Picks ~次なる起業家に、知恵をさずける~』

TBSテレビと、NewsPicksを運営する株式会社ユーザベースは2019年12月5日に業務提携を結んでおり、今回の番組もこの共創事業の一環にあたる。テレビ局とデジタルメディアの“番組共創”というコラボレーションに期待することとは。デジタル時代における、テレビ局としての強みとは何か──。株式会社TBSホールディングス 事業投資戦略部・安田英史氏、株式会社TBSテレビ 営業局営業推進部・福田雛子氏に話を聞いた。

左から)株式会社TBSホールディングス 事業投資戦略部・安田英史氏、株式会社TBSテレビ 営業局営業推進部・福田雛子氏

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■TBSとNewsPicks、「双方の強み」で“第三のメディア”を作る

──TBSテレビとユーザベースの業務提携の経緯について教えて下さい。

安田氏:昨今のテレビとインターネットにおける広告費の変化をふまえ、TBSではかねてよりテレビ局として新しいメディアとの関係づくりを模索してきました。NewsPicksは経済情報を扱うメディアとして一線を画した存在であり、TBSにとっても新たな視聴者層となりうる方々をユーザーとして持つという点でも非常に注目していました。

今回の業務提携では、双方がこれまでに培ってきたユーザー層をお互いに新しく取り込み合い、WIN-WINの関係を作り出すことをひとつの目的としています。

──メディアとしてお互いが持つ強みをかけ合わせ、ビジネスの領域を広げあうということですね。

安田氏:漠然としたイメージですが、TBSとユーザベースがお互いに持つ強みを持ち寄り、これまでにない「第三のメディア」のようなものを作り出していけたらと考えています。それに向けてこれまでディスカッションを重ねるなかで、その具体的なアプローチのひとつとして生まれたのが『金言Picks』という番組です。

■今よりも「今後何をやりたいか」にフォーカス

──『金言Picks』には番組として、どんな思いが込められていますか?

福田氏:経済に関して暗いニュースも多いなか、今後の日本を牽引するモデルになってもらうようなベンチャー企業に焦点をあてて、明るい話題を提供していこうという思いを込めています。番組では、未来を担うベンチャー起業家の方をお招きして事業に対する夢をプレゼンしていただき、そのプレゼンに対して先輩のカリスマ起業家のみなさんが事業のアドバイスをふくめた「金言」を残していく、という内容になっています。

──番組のターゲット層として、どのような方たちを想定していますか?

福田氏:働く方々に番組を見ていただきたい、ということを念頭に置いているので、NewsPicksのユーザー層にあたる30〜40代のビジネスマンはもちろん、ベンチャー起業に対する志向を持つ20代の方々もターゲットとしています。

──「ホスト界の帝王」と称されるROLANDさんが番組MCを務めている点も非常に興味深いところです。

福田氏:ROLANDさんは「俺か、俺以外か」という言葉にも代表されるように、自身の哲学を想像させるような個性のある金言をたくさんお持ちの方なので、番組自体が良い意味で引き締まったり、前向きな雰囲気を作り出せたりするのではないかと考えました。現在実業家としても活躍されていることもふまえ、番組にぜひ参加していただきたい、とオファーをさせていただきました。

──出演される起業家のみなさんは、どのような基準でオファーしていますか?

福田氏:プレゼンをしていただく起業家の方は、「濃いめのプレゼン」につながるような情熱をお持ちであったり、自分自身の強い哲学を持って発信されていたりしているという点にフォーカスを当てています。今現在何をしているか、というよりも「今後何をやりたいか」、過去よりも未来に何を描いているか、という視点や思いの部分を重視しています。

番組の収録風景

──安田さんは現在、TBSホールディングスでコーポレートベンチャーキャピタルの業務にも携わられていると伺いました。

安田氏:番組の中では、出資先等とコミュニケーションで実際によく出てくるような課題等が話されており、大変実践的です。たとえば、起業家のみなさんが「思ったように事業が伸びない」というような率直な悩みを吐露し、それに対して有識者のみなさんが、「こういう切り口で考えてみたら」と、気づきにつながるアドバイスを行う。こうしたやり取りを通じて視聴者のみなさんにも「なるほど、こういう考え方があるんだ」と共感していただき、(放送翌日の)月曜日から前向きな気分になれるきっかけを得ていただけるのではないかと考えています。

──有識者の方の豊富な経験に裏打ちされた、「活きたアドバイス」というところが肝なのですね。

安田氏:番組に登場される有識者のみなさんは、自身も投資家としていろんなケースを見てきている方たちです。ビジネスパーソンとしての豊富な経験と、それによって蓄積された引き出しのなかから生まれる「アドバイス」に触れていただくことは大変有益だと考えます。

■地上波+アプリで「視聴の循環」を生み出す

──地上波でダイジェストを放送し、NewsPicksアプリで「完全版」を配信するという座組みも非常に興味深いところです。地上波とアプリとでどのように番組を作り分けているのでしょうか。

福田氏:地上波版では比較的短い番組フォーマットで毎週放送し、月1回、NewsPicksのアプリで(1か月分をまとめた)ロングバージョンを配信するという形をとっています。

地上波版では、毎回1人の起業家によるプレゼンをギュッと濃縮してお届けするので、なるべくシンプルかつ面白く、「続きを見たい」と思っていただける構成を意識しています。一方、NewsPicksのアプリで配信するロングバージョンの『Greatest Hints』については、プレゼンに臨む起業家のみなさんが持つ思考や情熱の部分を丁寧に描くことを意識しています。

──地上波でまず興味を抱き、NewsPicksを通じてさらに深く理解する、ということですね。

福田氏:今回はTBSテレビとNewsPicksのコラボレーションということもあり、テレビとデジタルのあいだでどのようなシナジーを生み出せるか、ということをとくに念頭においています。

地上波テレビ局としてTBSが持つ強みは、1回(の放送)で(多くの視聴者へ)大きな影響を与えられるというマスリーチの力であると考えています。一方でNewsPicksには、ビジネスパーソンという特定の層の方々に対して深い興味や関心を喚起し、さらに深く情報を知っていただくというターゲットリーチの力を強く感じています。

視聴者のみなさんには、テレビで起業家のみなさんをまず知っていただき、さらにNewsPicksで深く知っていただく。そしてもう一度(ハイライトシーンを取り上げた)テレビのミニ番組を見ていただく、という「視聴の循環」が生まれることを期待しています。

──ひとつの番組に対し、「複数のスコープ」を切り替えながら繰り返し見ていくわけですね。

福田氏:その通りです。地上波とアプリという2段階の視聴を通じて、より深く番組のファンになっていただく、というスタイルを強く打ち出していけたら、と考えています。

『Greatest Hints』はNewsPicksのアプリで配信

■NewsPicksのプロピッカーを通じた「バイネーム発信」への期待

──NewsPicksのプロピッカー(専門的な知見からトピックにコメントする有識者)としてTBSテレビ報道局社会部の松田崇浩部長が就任しました。今回の業務提携とも関連しているのでしょうか。

安田氏:TBSテレビとNewsPicksは業務提携の関係にこそありますが、それぞれメディアとしてお互い独自性を保っているので、プロピッカーを選出する過程そのものにTBSは関与していません。あくまで両社の友好関係のなかで選んでいただいたものと捉えていますが、松田のコメントを通じて、『TBS NEWS(TBSが展開するニュースブランド)』にも興味を持っていただくことにつながればと考えています。

松田に関しては、朝の情報番組である『あさチャン!』(毎週月曜〜金曜 6:00〜)のプロデューサーやニューヨーク支局への赴任など、非常に幅広い経験を持っているので、いろんなトピックに対してコメントができる人物と考えています。

■老舗放送局×新進ネット企業「異なる文化の企業同士」がノウハウを持ち寄る強み

福田氏

──今回の『金言Picks』をはじめ、ユーザベースとの業務提携にどんな期待を寄せていますか。

福田氏:今回、テレビ局としての制作力が配信番組においても発揮できたと考えています。地上波はもちろん、さまざまな媒体に向けたコンテンツ展開において、今回の『金言Picks』の取り組みは、今後もテレビ局としての強みを発揮できるという確信につながったと、個人的には思っています。

安田氏:あくまで個人的な主観ではあるのですが、設立から60年以上たち、メディア業界内でも古い会社に位置するTBSが、ユーザベースという若い企業とともに事業に取り組むということは、大きな意義があると考えています。

新進企業ならではのフットワークやスピード感をもつユーザベースと一緒にお仕事をさせていただくなかで気づきを得られることもありますし、逆にTBSがこれまで蓄積してきたノウハウを役立てられる部分もあるのではないでしょうか。異なる文化を持つ会社同士で膝を突き合わせながら取り組み、お互いの良さにより気付けた、という点でも、今回の業務提携は非常に良いきっかけになっているのではないかと思います。

『金言Picks~次なる起業家に、知恵をさずける』公式HP

株式会社TBSホールディングス

株式会社ユーザベース