2021年4月12日(月)から16日(金)までの1週間にわたって、MIPTVオンライン版「Digital MIPTV」が開催される。

04 MAR

今年もオンライン開催の世界最大級のテレビ見本市MIPTV~コンテンツビジネスマーケットの役割に変化~

編集部 2021/3/4 17:00

昨年に続き、今年も世界最大級のテレビ見本市「MIPTV」がオンライン上で開催される。「Digital MIPTV」として展開される今回、「1to1マッチング・ミーティング」が初めて導入される。事前にスケジュールが組まれることでミーティング・アジェンダを保証するものとなる。この1年、コロナ禍によって見本市主催者はマーケット形式において変化を余儀なくされた。MIPTV/MIPCOMを主催するリード・ミデム社(本社フランス、パリ)のマーケット開発ディレクターのテッド・バラコス氏に同社が行った調査結果を踏まえながら、世界の参加者が今求めている見本市の在り方について聞いた。

■MIPTVオンライン初導入の「1to1マッチング・ミーティング」

58回目の開催を数えるフランス・カンヌの世界最大級テレビ見本市MIPTVは昨年に続き、オンライン上でのみ「Digital MIPTV」として展開される。ドラマ、ドキュメンタリー、キッズ、フォーマット番組の世界的なディストリビューター、プロデューサー、バイヤー、コミッショナーがオンライン上に集い、個別のビジネスミーティングをはじめ、注目プレイヤーのキーノートやマーケット情報セッション、そしてグローバルなネットワーキングを目的としたメニューが2021年4月12日(月)から16日(金)までの1週間にわたって、開催される。

今回のMIPTVオンライン版は初導入される「1to1マッチング・ミーティング」が目玉となる。テーマ別のスピードミーティングやワークショップ、バイヤーやコミッショナーとのブレイクアウトセッションなどが用意される。独自のオンラインミーティングシステムを介して、事前にスケジュールされたミーティング・アジェンダを保証するものとなる。まずはこのマッチングプログラムを初導入するに至った理由について、リード・ミデム社マーケット開発ディレクターのテッド・バラコス氏が答えた(以下、回答は全てテッド・バラコス氏)。

フランスのリード・ミデム社マーケット開発ディレクターのテッド・バラコス氏

バラコス氏:参加者からのフィードバックに基づくものです。1to1マッチングプログラムは昨年、地域専門マーケットMIPカンクンとMIP中国それぞれのオンライン版で既に導入していました。いずれも参加したバイヤー、セラーはこのプログラムを高く評価してくれました。また利用率が高かったことから、より多くの参加者が見込まれるMIPTVでも導入することにしました。

リード・ミデム社はデジタル版マーケット参加者を対象に同社独自のアンケート調査を行うなどし、新たな参加者ニーズを探っている。その結果を踏まえて、どのように分析しているのだろうか。

バラコス氏:まず、オンライン参加者は1to1マッチング・ミーティングに参加するのか、「デジタルパス」登録によって独自でミーティングのアポイントを取るかどうか、選択肢を与えることが重要だと考えています。どちらの参加スタイルを選んでも、世界最大手のスタジオのブリーフセッションや、ターゲットを絞ったコンテンツのショーケース、キーノートに参加することはできます。調査結果で参加者はオンラインマーケットの後に視聴できるセッションにもアクセスすることを望んでいることがわかりました。優先順位を考えると、参加者はうまく機能するシステムに期待しています。幸いなことに、2020年のMIPオンラインマーケットでは、オンラインビデオ通話のスムーズな機能について良い評価を受けましたが、他の多くのマーケットイベントではそうではなかったという報告を聞いています。

MIPTVオンライン版で「1to1マッチング・ミーティング」が初導入される。

■世界100か国、6800人が参加したデジタル版の成功要因

昨年10月にリード・ミデム社が主催したMIPCOMオンライン版には世界100か国から6800人の参加者を記録した。公開された調査結果によると、独自のオンラインプラットフォームで3万1000件を超えるミーティングリクエストを記録し、65%のアクティブユーザーは1~10人の新規パートナーを獲得したと回答していることがわかった。改めてMIPCOMについて総括してもらった。

バラコス氏:間違いなく、成功したと言えます。MIPCOMのような大規模なイベントがインタラクティブな国際オンラインマーケットという形で開催されるとは、誰が想像できたでしょうか? さらに、バーチャル展示と充実したデータベースにより、ユーザーは世界中のディストリビューター、プロデューサー、バイヤー、その他の参加者とビデオ会議によるターゲットを絞った商談を行うことができたと回答しています。MIPCOMがこれまで築いた世界エンターテイメント業界のグローバル・コミュニティをオンライン上でも機能させたことは、他のどのイベントよりもMIPCOMの重要性を示すものになりました。

一方、この1年でエンターテイメント・コンテンツビジネスに関連した新規のオンラインマーケットが世界中で立ち上がってもいる。MIPTV/MIPCOMはどのように差別化を図っていくのだろうか。

バラコス氏:参加者はストリーミングプレイヤーから放送局まで揃い、ミーティングの目的は番組売買から共同開発まで対応する、1to 1マッチング・ミーティングを導入すること自体が、他のオンラインマーケットとは明らかな差別化要因にあります。4月に開催する「Digital MIPTV」では、従来のMIPTVの強みであるファクチュアルとアンスクリプト分野に特化し、これらの分野だけでも386人のバイヤーが登録しています。 もちろん、ドラマやキッズ分野でも1to1マッチング・ミーティングを提供する予定です。春の時期にエンターテイメントコンテンツのグローバル取引を考えている企業に必ず価値を感じていただけると思っています。

日本からは日本テレビなど、Digital MIPTVに参加表明するトップバイヤー群。

昨年のオンライン版MIPCOMには日本から209人が参加。国別参加数ランキングではアメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、カナダ、イタリア、スペイン、韓国、ロシアに続く10位をマークした。「Digital MIPTV」の開催を控えるなか、日本の参加者に期待していることについて、最後に聞いた。

バラコス氏:これまで定期的にMIPTVに参加している全ての日本企業にとって、グローバル市場での認知度を維持することは重要な目的にあると認識しています。既にいくつかの日本の放送局がオンライン上でコンテンツを展示することを約束してくれています。1to1マッチング・ミーティングへの登録は3月5日(金)(フランス時間)まで受け付けていますので、まだ登録がお済ではない方は是非ご検討ください。

リード・ミデム社はこのほど、2009年からこれまでテレビ部門の責任者を務めていたローリンヌ・ガロッド氏が今年1月末に退任、退社したことを発表し、新たな経営体制でDigital MIPTVに臨むことになった。ガロッド氏の後任は未発表だが、当面、エンターテインメント部門ディレクターのジェローム・デヘイ氏とルーシー・スミス氏が業務を引き継ぐ。先行き不透明ななか、オンライン上での新たな場づくりの工夫が引き続き求められていくだろう。エンターテイメントコンテンツの流通市場をけん引していく役割を見直す時にもある。TVDigital MIPTVの詳細は、下記公式ページで確認できる(英/仏語のみ)。

TVDigital MIPTV 公式ページ(英/仏語のみ)

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