ファシリテーターを務めたTBS報道局JNNニュース編集長・久保田智子氏

22 MAR

日本の女性リーダーをめぐって各界の代表者が熱いディスカッション!~TBSとNewsPicksのコラボイベント「H!NT」セッションレポート【後編】

編集部 2021/3/22 08:00

TBSとソーシャル経済メディアのNewsPicksは、3月7日にコラボレーションイベント「H!NT」のオンラインライブ配信を行った。このイベントは、TBSのヒット番組を題材として時々のニュースや社会課題、経済情報について語り合い、すべての働く人々に剥けて「ヒント」を届けるもの。

イベントは2部制で行われ、ここでは第2部となる「なりたくない?増やしたくない?なぜ日本は女性リーダーが増えないのか?」という議論が繰り広げられたセッション2の模様を紹介する。

登壇者は女優・タレントのYOU氏、元衆議院議員の杉村太蔵氏、株式会社ポーラ代表取締役社長の及川美紀氏、大室産業医事務所産業医の大室正志氏と豪華な面々。ファシリテーターはTBS報道局JNNニュース編集長の久保田智子氏が務めた。

■女性リーダーが増えていない現状にはどのような要因があるのか

セッションの冒頭にファシリテーターの久保田氏は今回のテーマについて、「もしかしたら女性の側に『いや私はなりたくない』、男性の側に『増やしたくない』という気持ちがあるのかな」といった問題の背景について語り、女性リーダーに対する印象について登壇者に問いかけた。

YOU氏

まずYOU氏は会社勤めもしていなくて会社に勤めている友だちもあまりいないとし、「小さいお店や雑誌社の社長だったりして、女性リーダーはたくさんいるので、あまりこだわりはありません」と率直に感想を語った。

そこで久保田氏は世界経済フォーラムで発表された、日本のジェンダーギャップ指数が153カ国中121という現実を示す。この印象を杉村氏に尋ねると、「発言に気をつけないといけないですし、タレント生命が脅かされかねない」とジェンダーのテーマに警戒しながらも「人権という価値観がないと思える国よりも下。どういう計算なのか」と疑念を示した。

及川美紀氏

すると及川氏は、「指数の4つの判断基準のうち、女性の経済力と政治参加が極めて低いのです。日本も少しずつ進んではいますけれども、世界のスピードがもっと速いので、置いていかれている状況」と説明した。

大室正志氏

そして大室氏は経団連系のパーティに招かれた時、「1000人ほどの参加者のうち、女性は10人くらいしかいない。政治の世界はまだましで、経済界ではまだほとんど男性」というエピソードを披露した。

久保田氏は、2020年の女性管理職比率が政府目標の30%を大きく下回る平均7.8%という数字にとどまっていることも紹介し、女性リーダーがどういう葛藤や問題を抱えているのかが描かれている番組から見ていきたいと、2つのTBSドラマの紹介に移った。

■女性リーダーは強くなければならないという思い込み。現代の考え方にシフトを。

紹介された女性リーダーは、現在放送中の火曜ドラマ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』において、菜々緒が演じるファッション雑誌の超敏腕編集長・宝来麗子。そして昨年放送されて人気を博した金曜ドラマ『機動捜査隊MIU404』の、麻生久美子が演じる4機捜隊長の桔梗ゆずる。

『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』

これらのドラマを通じて久保田氏は、「女性リーダー像にはすごく強い存在というイメージがあります」と語る。しかし大室氏は「それはビジネスモデルにもよります。例えばひとつのモノを売る昭和のビジネスや、軍隊・警察ならマッチするけれども、現在のように一人ひとりのアイデアを最大化させて富を生むような社会では考え方のシフトが必要です」と指摘した。

YOU氏は「どっちでもいいと思いますよ、やりたいリーダーをやれば」と続け、久保田氏は「女性リーダーとしてドラマ中のように強さを出せるかどうかと思っていましたが、そもそものリーダー像が変わってきているのですね」と答えた。そして議論を続けていき、「『女性リーダーはこうだ』ではなくて、その人が持っている『らしさ』を選択肢として持つのがいい」のではないかという見方が引き出された。

一方で杉村氏は「ではなぜ日本の企業で女性リーダーが増えないのか」という疑問を呈した。年功序列の会社においては女性が一度会社を離れてから戻ることが難しいと問題点を語り、東大や司法試験・公認会計士の合格者に女性が極めて少ないことの理由も分からないと登壇者に尋ねた。

ここで大室氏は、「官僚や大企業幹部を目指す人が多い東大に入るインセンティブが、女性には少ないと感じられている可能性があります。実際、一度辞めてもカムバックしやすい医者はかなり女性が増えています」と現状を明らかにした。

■男性マジョリティの中で行われてきた意思決定に、女性の眼を入れることが必要

女性リーダーに関する議論は白熱し、セッションは女性リーダーが増えるためには「具体的に何をしていけばよいのか」というヒントを見出す段階へと移った。

大室氏は、「いくら制度があっても日本人は最初に使わない。そのムードや価値観、簡単に言えば何がカッコいいかどうかの基準を変えることが必要で、この価値観は意外とメディアの役割だったりします」と持論を展開した。

杉村太蔵氏

一方で杉村氏は元政治家という観点から、「平等なんだから女性に選挙で立候補しろというのは完全な間違った考え方です。スウェーデンのように比例選挙区で上位何位までは必ず女性を入れるというような制度が必要だと思います」と述べた。

自ら株式会社ポーラの社長として「まだ女性社長が少ないから、こういう場によく引っ張り出されます」と言う及川氏は次のように語った。

「長く培われてきた歴史上の意思決定が、男性マジョリティでのものだったということに気づくことが大事です。基本的な企業のOSは男性型OSで、その違和感に男性だけで気づくのは難しいんです。そこに女性の眼を入れていくことが必要です」(及川氏)

議論はその後、男女を問わずにリーダーを目指すことの是非や、ジェンダーギャップの現状、及川氏が社長になるまでの経緯披露など、女性リーダーに限定せずに多岐にわたるリーダー論が交わされた。

ドラマに出てくる女性リーダーは強いというイメージを持たれがちだが、その裏側にある「らしさ」を大切にすることが大事。そして個々の能力を伸ばして役割を担うことの大切さにも気付かされるセッションとなった。

この模様は再編集され、後日NewsPicksの有料コンテンツとしてアーカイブ公開される予定。また、CS放送のTBS Newsにて、3月23日(火)21時からセッション1が、3月24日(水)21時から今回取り上げたセッション2が、2夜連続で放送される。

【前編】火ドラ『わたナギ』ヒロインからしあわせになる働き方のヒントを見つける!~TBSとNewsPicksのコラボイベント「H!NT」セッションレポート