29 MAR

TVISION INSIGHTS「マーケター必見!日本コカ・コーラ株式会社に学ぶ 成果につなげるためのCMクリエイティブ分析&制作の最先端事情」開催レポート

編集部 2021/3/29 08:00

TVISION INSIGHTS株式会社(TVISION)主催(協力:宣伝会議)のトークセッション「マーケター必見! 日本コカ・コーラ株式会社に学ぶ 成果につなげるためのCMクリエイティブ分析&制作の最先端事情」が、3月2日(火)にオンラインで開催された。

同セミナーでは、TVISIONが計測するテレビへの滞在や注視のデータを用いたテレビCMの効果検証、クリエイティブ検証の実例として、日本コカ・コーラ株式会社(CCJC)におけるケースを紹介。パネリストとして、同社 ICX コンテントディベロップメント ディレクターの九鬼裕隆氏、TVISION INSIGHTS株式会社 代表取締役社長の郡谷康士氏が登壇した。

左から:TVISION INSIGHTS郡谷氏、日本コカ・コーラ株式会社 九鬼氏

■画面への滞在度・注視「視聴質データ」でCM効果を定量分析

まず冒頭、郡谷氏が自己紹介。あわせて同社の指標の紹介も行った。

TVISIONでは、テレビ受像機の上に据え置いたカメラ付き専用装置を通じて視聴者の画面への滞在や注視をトラッキングし、テレビの前にどれくらい人がいるかを示す「VI(Viewability Index:滞在度)値」と、テレビの前にいる人の中でどれくらいの人がテレビを注視しているかを示す「AI(Attention Index:注視度)値」を計測。誰がどのようにテレビを視聴したかという「視聴質データ」を提供している。

計測の対象範囲は関東・関西地域。関東においては1000世帯、関西では100世帯を対象とし、人口分布に沿ったデータを取得することが可能。現在同社ではCM7万本、350万投下枠に相当する視聴質データを保有しているという。

続いて九鬼氏が自己紹介。

同氏は日本コカ・コーラ株式会社でICX コンテントディベロップメント ディレクターを担当。消費者エクスペリエンスのデザインならびにテレビCM・WEB・OOH(Out Of Home:屋外広告)など広告コンテンツの全般を統括しており、手掛けた代表作に「コカ・コーラ『この瞬間が、私。』シリーズ」「ジョージア『世界は誰の仕事で出来ている』シリーズ」がある。

TVISIONの視聴質データを見た感想として、「待っていました、という気持ちだった」と九鬼氏。「これまでテレビCMの効果検証やキャンペーンの事後トラッキングなども行ってきたが、テレビCMのパフォーマンス自体を判断する指標がなかった」といい、「テレビCMの内容にどれだけパワーがあるのか、消費者のみなさんを引きつけられるのかを明確な数字で定量的に見られることは非常に画期的であった」と述べた。

「われわれの仕事はアートとサイエンスの掛け算が必要。マーケティングデータだけでは人の心に刺さらないし、逆にわれわれの主観の押し付けだけだと、CMではなくただのアート作品になってしまう」と九鬼氏。TVISIONの視聴質データは「我々がやっていることが本当に正しいのかどうか、ただの自己満足になってないかというところも含めて、PDCAサイクルを回すための判断材料として活用している」という。

■「ジョージア」の事例:CMクリエイティブ効果を視聴質データで“裏付け”

視聴質データを用いたCM効果測定の具体例として、九鬼氏は2020年に放映された日本コカ・コーラ株式会社の「ジョージア 運試し缶」キャンペーンを紹介。このCMは、ワイワイと部屋でオンライン会話を楽しむというシチュエーションのなか、山田孝之が「運試し!」と声をあげて缶をオープン。広瀬アリスが「当たったー!」と沸き立ち、アップテンポなBGMとともにキャンペーンの告知テロップが表示されるというクリエイティブで制作された。

TVISIONは、このCMにおけるAI(注視度)値の推移を時系列で分析。この結果、「運試し!」のセリフが発声されたシーンでアテンションが急上昇し、「プシュッ」という音とともに缶を開けるシーンでさらに上昇。その後、キャンペーンの告知テロップ部分で最高値を記録した。

「CM終盤に向けてアテンションが右肩上がりになっていくと、広告としては効果が高い」と九鬼氏。「前半部分はBGMなどの音楽を入れずに静かにスタートすることでキャストの掛け声を際立たせ、興味を引くことに成功した。その後の缶を開ける効果音と広瀬アリスさんの喜びの声でもう一段階注視度を上げ、キャンペーン訴求部分でピークを迎えたことがわかった」といい、CMのクリエイティブが消費者の注視と認知に結びついていることを検証できたとした。

■「紅茶花伝」の事例:「アテンションの下落ポイント」を見つけて改善→エンゲージメント向上に成功

もうひとつ、九鬼氏は2020年に放映した「紅茶花伝」の事例を紹介。まず3月に最初のバージョンを放映し、これによって得られたAI(注視度)値の計測データをもとにクリエイティブを改善。同年10月に放映されたバージョンでは高いエンゲージメントを得ることに成功したという。

「2020年3月のCM素材は放映前の事前調査で非常に評価が高く、当初のプランでは10月放映分は3月放映分をベースとする予定だった」と九鬼氏。しかし視聴質データを通じて得られた注視度の計測結果で「もっとも重要な部分のアテンションが下がっていること」に気づき、クリエイティブを見直す方針に転換したという。

「一番伝えたい部分でアテンションが下がっている素材をそのまま使って良いのか、と社内で議論し、シズル要素を落とさないようクリエイティブを見直した。具体的には商品背景を伝えるシーンや音の構成をより印象的づけるよう工夫したほか、自然な動きや視認性の高いカット割りを心がけた」と九鬼氏。結果、10月放映のCMでは前回の懸念点であった注視度の改善につながったという。

「クリエイティブの決定においてデータはあくまで判断の一要素であり、実際には戦略や過去の経験といった要素を重ね合わせ、さらに取捨選択するというのが前提」と九鬼氏。その一方でTVISIONの視聴質データは「われわれの経験や主観的な判断に委ねるのではなく、それらの融合ポイントを見定めるのに役立っている」と語った。

■CM効果を継続観測できるアナリティクスツール「Telescope」

「視聴質データを用いて素材ごとに分析する方法はわかってきたので、今後は定期的なヘルスチェックとして、ブランドごとにAI(注視度)値の上下をトラッキングできるような使い方ができないか模索している」と九鬼氏。「どの数値に着目すればよいのかということをふくめ、消費者のアテンションのとり方を長期的なスパンで追いかけていく方法を探りたい」といい、「出力されるレポートメニューに加え、直接データにアクセスしてPDCAにつなげていく仕組みがあれば理想」とした。

これを受け、郡谷氏はTVISION INSIGHTS社の新サービス「Telescope」を紹介。このツールでは、CM施策において、自社・競合ブランドとの比較や、指定したカテゴリの平均値との比較をはじめ、出稿量やGRP、視聴質データのトラッキングをWEB上の同一の画面で、確認することができるという。

「Telescope」は2020年11月に正式リリースし、3月中旬にCMクリエイティブの詳細分析ができる新機能を追加リリース。サービス公式サイト(https://telescope.tvisioninsights.co.jp/)からはデモンストレーションの申込みも受け付けている。郡谷氏は参加者に向けて「もっとCMやクリエイティブの深堀りにご興味のある方はTVSION INSIGHTSの担当者にお問い合わせをいただきたい」と呼びかけ、30分にわたるセッションを締めくくった。

TVISION INSIGHTS株式会社

「Telescope」サービス公式サイト