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メディア接触を世代ごとに分析する「メディア世代論」、ネットはスマホの時代に〜TVISION INSIGHTS主催ウェビナー(前編)

編集部 2021/11/22 09:00

TVISION INSIGHTS株式会社は10月21日、ウェビナー講演「メディア世代論から見えてくる テレビ視聴の中長期トレンドとコロナ禍のトピックス」を開催した。講師は(株)電通の電通メディアイノベーションラボ統括責任者、電通総研フェローの奥律哉氏。モデレーターはTVISION INSIGHTSの荒氏が務めた。

同講演の模様を前後編にわたってレポート。今回は前編として、メイントピックのひとつである「メディア世代論」を通した生活者のメディア接触の概要についてお伝えする。メディア接触を読み解く鍵となる「通奏低音」を理解すれば、生活者を年齢階層で分けることでさまざまな分析が可能となってくるというものだ。

■思春期に自分のメディアは確立され、年齢に連れて持ち上がっていく

まず奥氏は、「メディア世代論」の概要について説明。「その階層の方が中学生、あるいは高校生の思春期にあると言われるタイミングで自分のメディアを確立し、親しみを持つ瞬間の行動を、ずっと年齢に連れて持ち上がっていく」と前提となる考え方だ。

そしてこの思春期のメディア行動がバロック音楽の鍵盤楽器のように、「通奏低音」としてずっとベースで流れてリズムを刻んでいくのだと言う。「通奏低音」とは、低音部でずっと奏でられる伴奏のことで、バロック音楽の特徴とされるもの。

「メディア世代論」においては、「通奏低音」がメディア行動の底流にあり、知らない間に行為者の行動に影響を与えることを指すのだという。このベースとなって流れて刻まれるリズムの上に、それぞれの時代やトピックス、スマホなどのイノベーションが乗り、時代感を醸成していくのだと言う。

そのような二層建てで考えると、「それぞれの年齢階層が、どのような考えでメディアを捉えているのかが比較的分かりやすくなります」と奥氏は語った。

■中長期的には、世代ごとのメディア行動の底流が継続される傾向がある

続けて奥氏は、10年前から続けられているというこの研究の元となる世代ごとの分類を説明する。1946年生まれを46世代(現在75歳)、1956年生まれを56世代(現在65歳)と10年ごとで分類を行い、96世代(現在25歳)までの特徴をスライドに示した。

各世代の特徴を「例えば66世代はテレビっ子で現在55歳になっています。そして76世代はまさにデジタル世代で、現在デジタルを引っ張っている方々はこの世代生まれが多い。86世代はガラケーが中心で、96世代はマルチデバイスを駆使している世代で、スマホに行き着きます」と説明した。

次に奥氏は各世代におけるメディアサービスとゲームを軸にして時代背景を紹介し、各世代のメディア行動を細かく分析していった。そしてすべてを通して分析した際に見られる特徴として、「中長期的に見てみると、中学生あるいは高校生あたりのメディア接触をずっと引っ張っていく、非常に緊密な関係性が見られます」と分析した。

例えば現在45歳になる76世代は、青春期の頃にパソコンが普及しているため、PCリテラシーが高い世代で、「一般の会社では部長クラス、あるいは役員になられている人もいる層です。この世代より上はパソコンが苦手な人がいるのは想像がつきますが、大事なのはこの後に生まれた86世代や96世代のPCリテラシーはだんだん低くなっていくということです」と奥氏は言う。

そして96世代は、「新しいデジタル機器に溢れかえる世界に生まれている」世代であるとし、生まれた時にはすでにネット環境があること、メディア行動としてはマルチデバイスを駆使し、時間も空間も超えて動画漬けになるような傾向があるのだと言い、この世代の人たちがまさに現在のF1M1層の中核世代になっていることを指摘した。

■過去20年間のメディア接触の変遷。テレビデバイス離れが顕著

次に奥氏は、メディアサービスのトピックスと接触時間における20年間の変遷を改めて振り返った。

過去20年間の大きなトピックスとしては2003年に地デジ放送、2010年にはradiko、2015年にはTVerのサービスが開始されていることが挙げられる。

そして、「サービスとデバイスの普及とともにメディア行動も変化していく。当然のことですが、その逆もあります。どちらがドライバーとなっているのかは分からないですが、そういった環境にあるのです」と語った。

総世帯のカラーテレビ普及率を見ると、世帯主29歳以下が2005年の97.1%から2020年には84.7%と低下し、「これが俗に言う若者のテレビデバイス離れ」であると指摘。カラーテレビ保有台数も全体のデータで同期間に2.2台から1.8台に低下。

「一人一台の時代から、現在は世帯の頭数にテレビが足りない時代で、あぶれた一人はスマホやタブレット、パソコンで動画を観るということになります」と分析した。

同様の分析を通信の側面から見ると、2001年にNTTドコモのFOMA(3G)とYahoo! BBがサービスを開始。2008年から2013年にかけて通信各社がiPhoneの取り扱いを始め、2010年にはNTTドコモがXi(3.9G)提供を開始。関連機器の普及に関しても、2017年にスマホがガラケーを抜き、2019年にスマホがパソコンを抜いている。

奥氏はこの20年間を、「モバイル側に一気にシフトが進んだ時代」だと言う。「2017年にガラケーを抜いて、2019年にパソコンを抜いている。今やネットはスマホであるという感覚」だと続けた。

このような環境下で、時代はコロナ禍を迎えることになる。