左から串田昌紀氏、塚原啓太氏

22 DEC

進化するテレビコンテンツ連動 テレビ広告活用の4つのアプローチ×取り組み事例の最前線~電通主催セミナー(#3)

編集部 2021/12/22 09:20

株式会社電通は、「RADIO AND TELEVISION IMPROVEMENT 2021」と題したセミナーを11月10~12日に実施。4編にわたって開催されたセミナーのうち、本稿では11月11日に行われた#3『進化するテレビコンテンツ連動 テレビ広告活用の4つのアプローチ×取り組み事例の最前線』の模様をレポートする。

■デジタルメディアが増える中、テレビ広告の意味や意義はどういうものなのか?

セミナーの前段で串田氏は、最近よくクライアントから「デジタルを中心にメディアが増えている中で、テレビ広告の意味はあるのか、意義は何なのか。テレビ広告は運用の融通が効きづらいのでは」といった質問や指摘を受けると明かした。

その答えは、「より大きなマーケティングの視座から定義すると、実はテレビ広告はすごくイケてるのです」であると言い、「ここで戦略的視点である4つのアプローチ、課題にアジャストする新しい広告の作り方の話をしたいと思います」と、セミナーは始められた。

■テレビ広告を使いこなす4つのアプローチ~顧客基盤の構造から考える~

マーケティング的な視座からテレビ広告を見直すために、串田氏は歴史に残る大ヒットを記録した大人気アニメの劇場版の事例を取り上げ、顧客基盤という視点から分析を行った。

紹介された調査によると、当然ながらこの映画のファン率はコアターゲットとなる若年層が高い。しかし人数としては潜在ターゲットの方が格段に多いということが分かるのだと言う。

「この映画が大ヒットしたのは、コアターゲットである若者層だけではなくて、その周りの人たちをどんどん取り込んで大きくなることにより、歴史に残るコンテンツになったのです」と説明した。
 

「顧客基盤の構造は商品カテゴリーによって大きく異なる」としながらも、この現象を一般化すると、「ニーズが顕在化しているコアターゲットの周辺には、まだニーズが顕在化していない人が多く存在する。これが基本的な顧客基盤のあり方と考えられます」と続けた。

そして串田氏は、「テレビはこの顧客基盤の構造に合わせたアプローチができるメディア」として、次の3つのポイントを挙げた。

・テレビは全年代に普及し視聴体験を直接共有できる

・コア・潜在ターゲットの両方に、同時にリーチできる

・番組コンテンツと視聴特性を活かし、ターゲットに合わせた調整ができる

その上で串田氏は、「テレビは他のメディアではないような広がりと面白さを持つ使い方ができ、無駄のない活用ができるメディアです」と強調した。

電通ではテレビメディアの活用の仕方を、顧客基盤のあり方に合わせた4つのアプローチによるテレビの活用法を提案している。この点をセミナーでは、特別に制作されたアニメーションで解説が行われた。

1)リーチ・アプローチ:認知拡大/プレゼンスアップのため、多くの生活者にCMをあてる

2)フリークエンシー・アプローチ:好意形成/リテンション促進のため、生活者に繰り返しCMをあてる

3)モーメント・アプローチ:認知拡大/利用・購入意欲喚起のため、関与が高まる瞬間にCMをあてる

4)コンテクスト・アプローチ:イメージ・世界観醸成/特徴理解のため、関連性の高い番組でCMをあてる

■テレビのメディアパワーを示すCM、インフォマーシャルの最新事例

これらの4つのアプローチを複数組み合わせた事例として、塚原氏は実際に放送されて話題を呼んだCMやインフォマーシャルにおけるテレビコンテンツ活用最新事例を紹介した。

『君の名は。』(テレビ朝日)のタイアップ広告には、“リーチ・アプローチ”と“コンテクスト・アプローチ”が組み合わせられたものだと言う。人気コンテンツを用いてSNSバズ効果を拡大するという狙いがあり、「パワーコンテンツならではだと思いますが、SNSのバズ起点となって、日頃テレビに接触しない方々にもアプローチすることを可能にし、ブランド認知を拡大させることができた点は大きかった」と、塚原氏は成果を示した。

『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日)の番組の間に流れたインフォマーシャルは、“モーメント・アプローチ”と“コンテクスト・アプローチ”を組み合わせ、「出演者のリアクションで分かりやすく共感できる訴求する」ことを狙ったものだと言う。番組からシームレスにつながるインフォマーシャルは、「視聴者の抵抗感なく商品訴求につながった」のではないかと分析した。

『日曜日の初耳学』(毎日放送)のインフォマーシャルにおいては、「史上初となる番組のQRコードからAmazon LPへ直接流入」という施策が取り入れられている。そして“フリークエンシー・アプローチ”として毎週同じタイミングで、“コンテクスト・アプローチ”として知的好奇心をくすぐる番組において流されたことで、「商品の特徴やラインナップをかなり細かく訴求することができたと言えるのではないか」と塚原氏は解説した。

『東京オリンピック卓球混合ダブルス決勝』(フジテレビ)では、金メダルが確定した直後に「おめでとうCMを流す」という、今年でしかできない施策が行われている。このCMは“リーチ・アプローチ”“モーメント・アプローチ”“コンテクスト・アプローチ”の3つが組み合わされた、「本当にユニークさでも際立った」ものだったと言う。

このCMでは、画面に表示されたQRコードを視聴者が読み込むことによって、みんなでバーチャル乾杯ができるという仕掛けもある。この点を塚原氏は、「喜びを大勢で共有するという、テレビ視聴経験がベースにありながら、デジタルの技術を活用した体験をすることで、視聴体験のさらなるリッチ化ができた、非常に優れた施策だと感じます」と大いに評価した。

そして串田氏は、「コロナ禍にオリンピック・パラリンピックが開催されて、どうやって人々とつながるかが世の中の大きな課題になっていました。それに対してテレビのメディアパワーを、デジタルを乗せていくという、一つの答えを出した事例だと思います」と補足した。

■技術と実績がクライアントのマーケティング貢献を支える

テレビの世界の進化というテーマで、番組提供をする“テレビタイム”における電通の取り組みにも触れられた。

塚原氏は、「2000年代後半から2010年代初頭にかけてタイム枠購入がフレキシブルとなり、2010年代後半から2020年代初頭にかけてはタイム枠活用がフレキシブルになりました。現在はデジタル活用が拡大し、番組連動のバリエーションも増えています」と語り、“テレビタイム”のメニューは段階を追って拡張を続けていると語った。

本セミナーのまとめとして、紹介した4つのアプローチを支えている電通独自の付加価値は「広告枠の柔軟な運用、開発と実践」「生活者のモーメントを捉えるテレビ・デジタル連携」「多様なコンテンツ連動の企画と実践」といった技術と実績であるとし、串田氏は、「この構造で支えられているものは、何と言ってもクライアントの皆様のマーケティングへの貢献であると考えています」とセミナーを締めくくった。

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