株式会社ビデオリサーチ 取締役常務執行役員・尾関光司氏

14 DEC

「新視聴率」の先に描く視聴率の“概念拡張”のカタチ〜VR FORUM 2021レポート

編集部 2021/12/14 09:00

株式会社ビデオリサーチが主催する国内最大級のテレビメディアフォーラム「VR FORUM 2021」が、2021年11月11日(木)にオンライン開催。今回は「加速するDXがもたらす テレビメディアの変化と進化を考える」をテーマに掲げ、コロナ禍によってさらに加速するDXの流れのなかでテレビメディアが持つ「新たな価値」、「変わらぬ価値」について、業界のキーパーソンを招いたセッションが行われた。

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本記事では、株式会社ビデオリサーチ 取締役常務執行役員・尾関光司氏によるキーノート「『これからの視聴率』について考える。2021」をレポート。インターネット領域にテレビメディアが進出するなか、創業以来一貫してテレビ局由来のコンテンツの視聴状況を数値化してきたビデオリサーチの立場から、視聴率の「概念拡張」について示された。

■「新視聴率」全国対応完了で、テレビとデジタルメディアの比較が容易に

ビデオリサーチが2020年10月よりスタートした「新視聴率」は、2021年10月4日に山梨・福井・徳島・佐賀・宮崎の5地区が加わり、日本のすべての放送エリア全32地区での導入が完了。テレビにおける視聴人数の算出を全国ベースで行えるようにもなり、デジタルメディアとの、効果の比較がしやすくなった。

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加えて、番組・CMのリアルタイム視聴率に放映後7日間のタイムシフト視聴率を組み合わせた新たな広告の取引指標「P+C7」の導入も進行。2018年4月に関東地区で導入されたのを皮切りに、2022年4月には高知地区まで、さらに前述の新たな5地区分についても2023年4月の導入(予定)を目指しているという。

さらに、「昨今増加する、インターネット経由でのテレビコンテンツ視聴についても対応していく」と尾関氏。PM(機械式計測)によるリアルタイム・タイムシフトの視聴データとキャッチアップ(見逃し配信)の視聴データを組み合わせて、「番組を視聴したトータルな人数を算出する」取り組みも行っていくと語る。

■テレビメディアは「インターネット化」し、プラットフォームの横断が前提に

「ネット接続したテレビ端末『コネクテッドTV(CTV)』の普及率は、関東の視聴率調査世帯の52.8%に到達している」と尾関氏。

テレビデバイスで見られているコンテンツもYouTubeやAmazon Prime Video、NetflixなどのSVOD(定額制有料動画サービス)が上位を占めているといい、「テレビ画面に放送以外のものが映っている『空きチャンネル』の割合も関東地区のプライムタイムにおいて個人全体で7.9%に達している」と語る。

「放送局は、テレビ画面に放送以外のコンテンツがどんどん入ってきていることを意識するでしょうし、VODを提供するIT企業としては、今後さらに“ウィンドウの拡大”をどこまでできるのか、ということです。また、IT企業がテレビ画面に入ってきている一方で、テレビ局側からもさまざまなデジタルプラットフォームへの進出が目立つ」と語る。

地上波アナログ放送が終了した2011年の翌年頃から、テレビ局のYouTube公式チャンネルの開設数が急激に伸び、現在は全国の地上波テレビ局127局すべてが運営。今のところ、番組宣伝としての利用が多いが、ニュースや番組連動企画などの独自コンテンツを配信したり、一部のローカル局では地元で活躍する高校生アスリートへの密着ドキュメンタリーを公開したりするなど、地域密着型の情報発信も行われているという。

「テレビメディアはどこまでインターネット化していくのか、ということが焦点」と述べ、「自社のプラットフォームを優先することは大前提」としたうえで「いかに他のプラットフォームにもコンテンツの公開範囲を広げていくかがキーとなる」と語る。

「テレビメディアが、メディアの『横断的な世界』にどこまで入っていくかも注視したいポイント」と続け、「出版など他メディアも動画コンテンツをたくさん保有しているため、こうしたものも含め、今後の動向に着目している」と語った。

■「新視聴率」の先に描く、視聴率の“概念拡張”のカタチ

「2021年10月にある程度のかたちが整った『新視聴率』だが、これから、さらに概念拡張をしていかなければならない」と尾関氏。キーノートのまとめとして、テレビ×デジタル時代における新たな視聴率の方向性を示した。

1つ目は、「デジタルプラットフォームも数値化する。」。キャッチアップやリアルタイム配信など、テレビ局由来のプラットフォームはもちろん、「YouTubeなど、放送以外のデジタルプラットフォームを通じて発信するコンテンツも共通基準での数値化に取り組む」といい、「今後は、広い意味でインターネット上で受容性が高いコンテンツはどのようなものなのかを確認していくことも重要だと考えている」と尾関氏。

2つ目は、「広告主の個別ニーズに応える。」。尾関氏は、広告主がそれぞれ持つマーケティング目標やKPIに寄り添うかたちで、例えば「広告主が持つ1stパーティデータとテレビ視聴データを接続」し、「ターゲット層のなかでも特に購買活動に積極的な人々を浮かび上がらせ、これらの人々がテレビをよく視聴している時間帯のヒートマップを描くことは可能。そして、このような取り組みが、テレビのメディア価値を高めていくことに繋がると考えている」と語る。

3つ目は、「コンテンツの質を数値化する。」。「番組やCMに対するTwitter上のつぶやきを分解し、投稿者の性年齢や、投稿内容のポジ・ネガを集計する」と尾関氏。現在、新しい試みとして、コンテンツの評価ワードでランキングを作ることができるようになったほか、さらにその中から代表的なツイートをAIによって抽出する仕組みを構築しているという。

また、「特定のスポンサーの商品・サービスを番組内に登場させる「プロダクト・プレイスメント」に気づいた視聴者がTwitterで話題化するというケースが増えている」と続け、「これらの仕掛けをした場合にどのような評価がなされるのか、こうしたことも含め、コンテンツ(番組・CM)の質を追いかけていきたい」と語った。

「ビデオリサーチは、①測定範囲の拡大、②測定指標の深化、③コンテンツの内容評価そのものを数値化するという3つの方向性で視聴率の概念拡張を行い、テレビ局由来のコンテンツ(番組・CM)をすべて測定・数値化することを目指す。」と尾関氏。

そして、「この概念拡張によって得られる『共通データ』と広告主ごとの『個別のニーズ』をマッチングする基盤作り」の展望を語り、「テレビのDX化に対応した『次世代の視聴率』を提供していきたい」と、キーノートを締めくくった。

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