左から北海道放送 山根恒氏、北海道銀行 小山晋義氏

04 MAR

ローカル局×地方銀行の連携で企業SDGsはどう変わる? HBC北海道放送・北海道銀行「北海道 to the future プロジェクト」担当者インタビュー

編集部 2022/3/4 08:00

北海道放送(HBC)が北海道銀行と連携し、SDGsを推進する道内の企業や団体を発掘、紹介を行う「北海道 to the future プロジェクト」。2021年11月に5社の参加から始まったこの取り組みは2022年2月現在で9社となり、その規模を拡大し続けている。

本プロジェクトは、地元の金融機関として取引先企業に対するSDGs支援を行ってきた北海道銀行の取り組みにHBCが提案する形でスタート。HBCでは夕方の情報番組『今日ドキッ!』など自社制作番組で参加企業の取り組みを随時紹介するほか、プロジェクトの公式サイト内でもオリジナル動画を制作、公開。北海道におけるSDGsの機運を醸成し、2030年までのSDGs17目標達成を目指す。

地域社会におけるSDGsという大きな目標の実現に際し、地元放送局と地元金融機関の連携という新たな座組が生み出す強みとは何か。HBC北海道放送 営業推進部マネージャー・山根恒氏、北海道銀行 経営企画部 広報CSR室長 兼 サスティナビリティ推進室 上席調査役・小山晋義氏にインタビューした。

■中小企業ふくめ、地元経済活動としてのSDGsにスポットを当てる

――「北海道 to the future プロジェクト」は、どのような背景からスタートしたのでしょうか。

小山晋義氏

小山氏:北海道銀行は2019年4月「ほくほくフィナンシャルグループSDGs宣言」公表に伴い、取引先企業のSDGs支援に取り組んできましたが、このたびHBCさんから「ぜひ一緒に」とのご提案をいただき、プロジェクトをスタートさせることとなりました。

山根恒氏

山根氏:北海道では、中小をふくめ多くの企業がSDGsに取り組んでいます。これまでも特色のある活動については放送で取り上げてきましたが、一般企業の経済活動という観点では、なかなか地元のニュースとして積極的に取り扱う機運が少なかったのが事実です。

こうした状況において、地元放送局であるHBCが放送やWEBを通じて取り組みをひろく伝えることで、その活動の土台作りに貢献できるのではないかと考え、北海道銀行さんにお声がけをさせていただきました。

――HBCと北海道銀行、それぞれどのように役割分担をされていますか。

小山氏:北海道銀行では、HBCさんの広告を通じて自社のSDGsの取り組みを広報したいという企業様とHBCさんとの仲介を担当しています。

山根氏:HBCでは、自社で制作するニュースやバラエティなどの番組を通じ、参加企業様の取り組みを取材します。地上波への露出だけでなく、参加企業のトップの方へのインタビューなど、さらに詳しく内容を知ることのできる動画を「北海道 to the future プロジェクト」のウェブサイトにて公開するなど、これまでこうした取り組みを知らないと関心を持っていただくための誘導を放送とネットの両面で行っています。

――ウェブサイト内の動画には、どのような役割を持たせていますか。

山根氏:ウェブサイトの動画では、テレビでの放送に加え、企業としての考えなど、より取り組みの姿勢をより多面的に伝える情報を発信します。

北海道でSDGsに取り組む企業様においては、経営トップの方々が明確な意識をお持ちであることが多いのが特徴です。放送では企業やその活動の認知をはかり、ウェブサイトではその背景として「なぜこの活動をするのか」という肉声の部分を伝える役割を持たせています。

公式サイト

――地元放送局として、今回の取り組みに臨む意義をどのように考えていますか。

山根氏:北海道は農業、漁業、林業などの第一次産業が経済の根幹を占めており、なおかつ観光などの第三次産業が活発であるなど、もともとSDGsと非常に親和性の高い土壌を持っていました。今回のプロジェクトは、そのうえでさらにSDGsを進めたいと考える北海道内の企業の背中を押すという、地元メディアにしかできない形での貢献を図れているのではないかと考えています。

■「自分たちの活動もSDGs」と裾野を広げるきっかけに

――2021年11月のスタート時には5社であった参加社数は2022年2月の段階で9社と大幅に増加。SDGsに取り組む北海道の企業のなかで「北海道 to the future プロジェクト」に対する評価が高まっていることが伺えますが、これまでの中で実際に手応えを感じていることはありますか?

山根氏:「私たちの会社の取り組みも取り上げてほしい」といったご要望をさまざまな企業様からいただいているほか、視聴者の方からも「SDGsの活動にはこのようなものもあるんだ、という発見につながった」というお声もいただけるようになりました。どこか敷居の高いイメージのあったSDGsに対する印象が変わり、「こういうこともSDGsになるんだ」という理解が広がる契機につなげられているのではないかと自負しています。

「北海道 to the future プロジェクト」を立ち上げて以来、「この会社がこうした活動をSDGsとして行っているのであれば、自分たちのこうした取り組みもまたSDGsなのではないか、こういうアクションを行ってみてはどうだろうか」と行動、検証する土壌が生まれたという声も多く聞かれるようになりました。SDGsの裾野を広げていくといううえで、プロジェクトとしては一定の成果を残せているのではないかと感じています。

小山氏:「北海道 to the future プロジェクト」の取り組みをお取引先に提案したところ、「ぜひやってみたい」という反応を多くいただきました。企業様には自社の事業活動を紹介する場が増えることによるイメージアップや、従業員のみなさんの意識や働きがいの向上、さらに新たな企業活動のきっかけといったメリットをご提供する一方、私たちも銀行として企業様とのタッチポイントを増やすことができています。

――今後、プロジェクトとしてはどのような展開を考えていますか。

山根氏:まずは、SDGsというフィールドにおいて「こんな魅力的な活動を行っている企業がある」ということを北海道の方々に知らしめていくことが第一段階であると思っています。ゆくゆくは、プロジェクトに参加いただいた企業様同士でイベントや勉強会、シンポジウムなどを開催したり、共同でのアクションなどを徐々に進めていけたらと考えています。

――最後にメッセージをお願いいたします。

山根氏:「持続可能な開発目標」という意味を持つSDGsの趣旨通り、このプロジェクトも持続的に行っていきたいと考えています。どんな些細なものでも結構ですので、「我が社がやっている活動はSDGsではないか」というご相談をいただき、私たちはより的確な方向でその活動をお伝えし続けていけたらと思います。

小山氏:SDGs活動の発信は企業のイメージアップとともに、従業員のロイヤルティ向上にもつながります。ぜひ、さまざまな業種や地域の企業様にご参加いただき、取り組みをアピールする場として「北海道 to the future プロジェクト」をご活用いただければ幸いです。

1:「北海道 to the future プロジェクト」賛同企業(2022年2月1日現在)
 ・宮坂建設工業株式会社 ・寿産業株式会社
 ・サン建築設計グループ(株式会社サン建築設計、株式会社ホーム企画センター)
 ・日本たばこ産業株式会社北海道支社 ・株式会社NTTドコモ北海道支社
 ・ほくでんグループ ・有限会社そらまめカンパニー
 ・角山開発株式会社 ・株式会社公清企業

2:「北海道 to the future プロジェクト」概要
(1)SDGs活動を行う企業・団体の活動内容を15秒のCM動画として制作・放送
(2)SDGsに取り組む企業・団体の活動を夕方の情報番組「今日ドキッ!」などで取材し、番組内で紹介。
(3)プロジェクト専用ホームページで15秒の動画を掲載。
(4)SDGsへの取り組みについてプロジェクト参加企業間で情報交換・交流を深める場を設定。
(5)SDGsに取り組む道内企業の活動をサポートするプラットフォーム作り。
 

「北海道 to the future プロジェクト」