11 JUL

放送文化基金、第48回「放送文化基金賞」を発表

編集部 2022/7/11 09:31

公益財団法人放送文化基金は、2021年4月~2022年3月の間で放送された作品の中から、優れたテレビやラジオ番組、個人・グループに贈られる第48回「放送文化基金賞」受賞作品を発表。7月6日にオークラ東京にて贈呈式が行われ、受賞者に賞牌・トロフィー、賞金が贈呈された。

放送文化基金賞は、「視聴者に感銘を与え、放送文化の発展と向上に寄与した優れた放送番組」「放送文化、放送技術の分野での顕著な業績」を対象に、専門委員会で審査・選考。同審査委員会を経て、理事会で決定される。

今回は、全国の民放、NHK、コミュニティ放送局などから、全241件の応募、推薦があり、4月から約2か月にわたる厳正な審査の結果、テレビドキュメンタリー、テレビドラマ、テレビエンターテインメント、ラジオの4つの番組部門で、それぞれ最優秀賞、優秀賞、奨励賞の16番組と、演技賞や出演者賞など個人6件、さらに個人・グループ部門の放送文化、放送技術で7件の受賞作品が選出された。

各受賞作品は、以下の通り。

番組部門

■テレビドキュメンタリー番組

【最優秀賞】
NHK名古屋放送局『目撃!にっぽん妹が生まれなかったかもしれない世界~出生前診断と向き合って~』
撮影・ディレクター:植村優香
編集:樋口俊明 
撮影:田嶋文雄
音響効果:栃木康幸
音声:藤原孝智
映像技術:鮫島要
プロデューサー:水谷宣道
制作統括:石田望
■選考理由
最近は、NIPT(新型出生前検査)、つまり胎児の染色体異常の可能性を調べる検査をする妊婦が多い。高齢出産が増えてニーズが高まる中、学会の認定を受けていない美容外科や皮膚科も参入しているという現実がある。優生思想に通じる、障害者差別に繋がる、という声がある一方で、産むべきか否かと選択を迫られる当の妊婦の悩みは深い。この作品は、ダウン症の妹を持つ若い女性ディレクターの切実さと、妹への深い愛が伝わってくる。小品ながら、重要な問題提起のなされた優れた作品であることが評価された。

【優秀賞
グループ現代、NHKエンタープライズ、NHK ETV特集『“玉砕”の島を生きて~テニアン島日本人移民の記録~』

奨励賞】
南海放送『瀬戸内海がゴミ箱になる日』
山陰中央テレビジョン放送『第30回FNSドキュメンタリー大賞命の選択~ALSとの闘い~』
NHK広島放送局、NHK福岡放送局 NHKスペシャル『原爆初動調査隠された真実』

■テレビドラマ番組

【最優秀賞
日本テレビ放送網 水曜ドラマ『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』
原作:泰三子
脚本:根本ノンジ
プロデューサー:藤森真実、田上リサ
チーフプロデューサー:加藤正俊
演出:南雲聖一、丸谷俊平、伊藤彰記
出演:戸田恵梨香、永野芽郁、三浦翔平、山田裕貴、西野七瀬、平山祐介、千原せいじ、渕野右登、ムロツヨシ、ほか
■選考理由
女子会もする普通の女子である交番勤務の女性警察官にフォーカスしたこのドラマは、権力を振りかざすこれまでの警察物とは一線を画して、時代の変移を明確に映し出した。随所で笑いを誘うテンポの良い脚本は、シリアスな社会問題もしっかりと描き出しており、エンターテインメント性と社会性のバランスが絶秒だ。パワー志向で完璧な女性巡査部長に対してダメな主人公という設定も、「たたかわない」「がんばれない」人を応援する今日的な側面があると評価できる。

【優秀賞】
AX-ON、NHKプレミアム ドラマ『しずかちゃんとパパ』

【奨励賞】
WOWOW、日活、テレビマンユニオン WOWOWオリジナルドラマ『前科者-新米保護司・阿川佳代-』
NHK大阪放送局 連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』

■テレビエンターテインメント番組

【最優秀賞】
TBSテレビ『水曜日のダウンタウンおぼん・こぼん THE FINAL』

制作プロデューサー:坂本義幸
演出:藤井健太郎
プロデューサー:高柳健人、田邊哲平
ディレクター:池田哲也、水口健司
出演:ダウンタウン、おぼん・こぼん、ナイツ、伊集院光、川島明(麒麟)、柳原可奈子
■選考理由
解散寸前の危機に陥ったベテラン漫才コンビおぼん・こぼん。2年をかけてその仲直りを応援する企画の最終章である。果敢な仕掛けと必死の説得から生まれる奇跡の展開は、予定調和をよしとしない同番組ならではの緊迫感に満ちていた。深まる溝、意地とプライド、修復と和解…。心の奥底の感情を掬い上げ、赦しへの希望も描き出す、出色の人間ドキュメントにもなっていた。時にはバッドエンドも厭わず、テレビバラエティの限界に挑むその姿勢が高く評価され、最優秀賞に輝いた。

【優秀賞】
テレコムスタッフ、NHKエデュケーショナル、NHK 『100分deパンデミック論』

【奨励賞】
WOWOW『ザ・モキュメンタリーズ~カメラがとらえた架空世界~』
関西テレビ放送『笑いの総合格闘技!千原ジュニアの座王新春SP』

■ラジオ番組

【最優秀賞】
NHK『FMシアター手を振る仕事』

原作:足立聡
音楽:日高哲英
制作統括:藤井靖
演出:木村明広
技術:野原恒典
​​​​​​音響効果:林幸夫
出演:青木柚、中田青渚、吉見一豊、野田慈伸、井上小百合、冠野智美、津木晃子、畑山菜摘
■選考理由
現代の若者の、仕事をめぐる漠然とした不安を掬い上げている。効率や利益を求める資本主義的な労働が限界まで見えてきていて、しかし次のビジョンがまだ見えてこない。働く若者たちは今、漠然とした不満をかんじながら、確固とした理念を持てないでいる。あいまいな雰囲気の中での時代の気分をドラマで形象化した。劇作としての瑕瑾はあるものの、作者のより深い探求、成熟した思索が極めて期待される。

【優秀賞】
RKB毎日放送『永遠の平和をあるBC級戦犯の遺書』

【奨励賞】
ニッポン放送 ニッポン放送報道スペシャル『あの日の誓いから10年・始まった共生社会への挑戦!』

■個人

【演技賞】
永野芽郁 水曜ドラマ『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』
笑福亭鶴瓶 プレミアムドラマ『しずかちゃんとパパ』

【出演者賞】
岩田功次 『瀬戸内海がゴミ箱になる日』

【脚本賞】
藤本有紀 連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』

【企画賞】
千原ジュニア 『笑いの総合格闘技!千原ジュニアの座王新春SP』

【企画・制作賞】
大村由紀子 『永遠の平和をあるBC級戦犯の遺書』

【関連記事】日テレ『ハコヅメ』が「第48回 放送文化基金賞(番組部門)」の「最優秀賞」&「演技賞」W受賞

個人・グループ部門

■放送文化

上原直彦(ラジオパーソナリティー)
(業績)長年にわたり放送を通じて沖縄文化の保存・普及に貢献

『提言の広場』制作スタッフ(山形テレビ)
(業績)50年にわたり地域課題について提言する番組を制作

『RSK地域スペシャルメッセージ』制作スタッフ(RSK山陽放送)
(業績)ゴールデンタイムで1時間のドキュメンタリー番組を開始して10年を迎えた実績

「NHKテレビ放送史」編纂チーム(NHK)
(業績)テレビ放送開始70年記念「NHKテレビ放送史」冊子・ウェブサイト制作

■放送技術

日本テレビAI社内開発チーム(日本テレビ放送網)代表篠田貴之
(業績)AI業務支援システム「エイディ」の社内開発と運用

8Kハイスピードカメラ開発グループ(NHK)代表佐藤真悟
(業績)8Kハイスピードカメラの開発

「FM回り込みキャンセラー」開発チーム(山口放送、日本通信機、NHKテクノロジーズ)
(業績)FM回り込みキャンセラー及び混信波除去装置の開発