経済産業省 文化創造産業課長 梶直弘氏

15 JAN

「コンテンツ海外売上20兆円」を実現するフレームワーク 〜Inter BEE 2025レポート

編集部 2026/1/15 12:00

一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、「Inter BEE 2025」を2025年11月19~21日にかけて幕張メッセで開催した。今年は昨年を上回る33,853名が来場した。

本記事では、11月19日に行われたINTER BEE FORUM「Inter BEE 2025 Opening & Keynote」から、経済産業省 文化創造産業課長 梶直弘氏による講演「デジタル技術と日本のコンテンツ産業」をレポート。日本発コンテンツの海外展開を「新たな基幹産業」と位置づけ、その抜本的な強化に向けた政策について語った。

■コンテンツ産業、海外売上20兆円を「必達目標」に 官民連携のテコ入れが不可欠

まず梶氏は、日本発コンテンツの海外売上高がこの10年間で年率14%の成長を遂げ、現在5.8兆円規模に達していると報告。これは半導体の輸出額に匹敵、あるいは上回る水準であると指摘した。

この力強い成長を背景に、政府は2024年、コンテンツ産業を新たな基幹産業と位置づけ、海外売上高を2033年までに、現在の自動車産業の輸出額に並ぶ20兆円規模へと拡大させる目標を閣議決定した。

梶氏はこの目標が、現在の高市政権下における重要な成長戦略の一つとして明確に位置づけられているものだとし、「我々としては、これを『必達目標』と思っている」と強調。「官民でいかに投資をして、やっていくのかが至上命題だ」と、目標達成に向けた強い決意を示した。

日本のコンテンツが持つ国際競争力について、梶氏は世界のIP(知的財産)収益ランキングを例に挙げ、累積収益トップ25の多くを日本のIPが占めている事実を紹介。一方で、その多くが2000年以前に創出されたIPであるとし、「新たなIPをどう作って世界に届けていくのかが課題だ」と指摘した。

「この分野は世界的な産業政策競争の渦中にある」と梶氏は述べ、約6,000億円規模の税額控除を組み込むアメリカや、巨額の財政支援や規制を通じて自国産業を強力に後押ししている中国、フランス、韓国などの事例を分析。

「特に韓国は、GDP比で日本の半分でありながら、コンテンツ関連予算は日本の3倍以上を投じている」と指摘し、日本の競争力を維持・強化するためには、官民が連携した産業政策としてのテコ入れが不可欠であるとの認識を示した。

■「作品には口出ししない」クリエイターの創造性を損なわず、まっすぐ届ける支援を

経済産業省では、有識者研究会での議論を経て、今後の政策支援の根幹となる5つのプリンシプル(基本方針)を策定。梶氏がその内容を語った。

(1)企業行動の変革を促すため、複数年にわたる大規模・長期・戦略的な支援を行う
(2)日本で作って世界に届けることを哲学とし、国内での創造性を起点とした海外展開を志向する
(3)クリエイターの創造性を最大限に尊重するため、作品の中身には口を出さない
(4)補助金に不慣れな事業者でも活用しやすいよう、「まっすぐ届ける」支援を実現する
(5)企業の規模に関わらず、世界に挑戦する意欲ある挑戦者を支援する

具体的な政策立案にあたり、梶氏は、コンテンツ産業を「クリエイター」「制作ツール」「コンテンツ」「流通」「ユーザー」の各バリューチェーンで多角的に分析するフレームワークを提示した。

フレームワークでは、クリエイターの就業環境改善から、VFXスタジオやAI制作ツールといった制作基盤の高度化、大規模コンテンツへのリスクマネー供給、海賊版対策と連携した正規流通網の確立まで、各段階での課題を分野横断的に整理。

その上で、アニメから漫画、ゲーム、音楽へとIPを360度展開する総合力をさらに促進するべく、縦割りでない総合的な政策パッケージを構築すると語った。

また、米国製が主流となっているゲームエンジンや、多くを海外にアウトソースしているアニメの動画工程など、制作ツールに関する課題にも言及。AIなども活用した効率化と国内基盤強化が急務であるとの認識を示した。

■資金調達の多様化と海賊版対策 「盾と矛」の戦略を強化

最後に梶氏は、具体的な課題として「ファイナンス」と「海外展開」に言及した。

コンテンツ制作の資金調達において、日本ではデット(負債)の活用が海外に比べ極めて少ないと指摘。米国の事例を参考に、今後は金融機関とも連携し、完成保証やギャップファイナンスといった多様な手法の導入を検討していくとした。

梶氏は、カリフォルニア州の映像制作支援体制に触れ、その規模が「日本と桁が違う」と表現。「政府支援はコストではなく、税収増にも繋がる『戦略投資』であるという発想の転換が必要だ」と訴えた。

また、被害額が2兆円規模に上る海外での海賊版に対しては、現地政府と連携して取り締まりを強化すると同時に、正規版へのアクセスを容易にする「流通」をセットで進める「盾と矛」の戦略を強調。日本のコンテンツを理解し、戦略的に展開できる日系プラットフォームの連携・強化を支援していく方針を明らかにした。

「今後の10年は、日本のコンテンツ産業にとって大きな転換点」と梶氏。「2次元コンテンツの強みを生かしながら、官民一体で集中的に投資を行えば、20兆円の目標は達成可能である」と力強く語り、講演を締めくくった。