左からテレビ東京・大庭竹氏、KDDI・古波蔵氏、日本テレビ・鈴木氏

16 MAR

AI?XR?どうなるテレビの未来!【テレビカンファレンス2026レポート】

編集部 2026/3/16 12:00

1月27日、渋谷ヒカリエホールで民放キー5局(日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ)の主催による「テレビカンファレンス」が開催。今回は「3つのシンカ<真価・深化・進化>」をテーマに、テレビマーケティングの最新事例や効果測定、テレビが目指すべき将来の姿が示された。

本記事では、当日メインステージにて開催されたセッション「AI?XR?どうなるテレビの未来!」の模様をレポート。急速に進化するAI技術がエンターテインメント、テレビ業界に何をもたらすのか、その可能性と課題について踏み込んだ議論が交わされた。

登壇者は、日本テレビ放送網株式会社 コンテンツ戦略本部 コンテンツビジネス局 スタジオセンターの鈴木 努氏、KDDI株式会社 パーソナル事業本部 DXデザイン本部 R&Aセンター グループリーダーの古波蔵洋平氏。モデレーターを株式会社テレビ東京 営業局長の大庭竹 修氏が務めた。

■AIとの共創時代に人間が担うべき役割は? 日本テレビ・鈴木氏の提起

日本テレビ・鈴木 努氏

日本テレビ・鈴木氏は、ドラマプロデューサーとしての自身の経験から、AI技術との衝撃的な出会いを語った。

「予算の都合で却下された壮大なドラマ企画を前に悔しい思いをしていたところ、小学生がAIで制作したというハイクオリティな宇宙の映像を発見し、『マジやばい』と感じた。その瞬間が、AIとの向き合い方を考える原点になった」

鈴木氏はAIの本質を、「コンテンツを届ける手段ではなく、コンテンツそのものを作る側のツール」と定義。「これまで一部のプロフェッショナルに限られていた映像制作を誰もができるようになる『プレミアムコンテンツの民主化』がすぐそこまで来ている」と強調した。

「365日24時間稼働し、ヒットする構成や心を揺さぶるセリフを学習し続けるAIクリエイターの登場は、テレビ局の制作者に自らの存在意義を問い直すことを迫っている。『映像のプロだから』『長年やってきたから』といった自負は、やがてAIの学習能力の前では通用しなくなる」

生成AI時代における制作者について、鈴木氏は「単なる技術力うんぬんではなく、いかに『心を揺さぶる体験』を与えられるかが求められる」とし、「これを作るべき、という覚悟と思想のある人間がAIを先導していくことになる」とコメント。その上で、「幸いテレビ局にはそうした強い意志を持つ人材が豊富にいる」と述べ、「彼らがAIを使いこなすことで新たな可能性が拓ける」と可能性を示した。

「AIの力を借りることで制作コストが劇的に下がり、今まで手の出なかったような(制作費)100億円、200億円規模の映像コンテンツをテレビサイズの資金でできるぐらいの世界になるのではないかと思っている」

最後に鈴木氏は、日本テレビがKDDIやサイバーエージェントなど異業種のパートナーと共創する『びっくりあいらんど』やAIドラマプロジェクト『TOKYO巫女忍者』の映像を紹介。「これからのAI×エンタメの時代は、業界の垣根を越えて力を合わせる『共創の時代』」と締めくくった。

■KDDI・古波蔵氏が語る「AIによる表現と体験の拡張」X JAPAN・hideの姿を現代に“再構築”

KDDI・古波蔵洋平氏

KDDI・古波蔵洋平氏は、AIを「表現を拡張する、体験を拡張する」ツールとして活用している数々の実践例を紹介した。

KDDIは5Gを基盤に、スマートフォンを通じたエンタメ体験価値の向上を推進しており、テレビ各局などと連携したスピンオフコンテンツ制作などを通じてAI活用の知見を蓄積しているという。

その象徴的なプロジェクトとして古波蔵氏は、故・hide(X  JAPAN)の生誕60周年を記念した『REPLAY PROJECT feat.hide』を紹介した。

このプロジェクトでは、「もし2025年にhideが活動していたら」というコンセプトのもと、現代の街並みや風景の中にいる姿を動画化。「単に過去の姿をAIで動かす『再現』ではなく、現代的な解釈を加えた姿をAIで創り出す『再構築』にこだわった」という。

「衣装を現代風のオーバーサイズに調整するなど、往年のファンには懐かしく、今の若い世代には新しく感じられる表現を追求した」と古波蔵氏。この試みがファンに広く受け入れられた成功要因として、「事務所の全面協力による『公式』としてのアナウンス」「生前のhideがテクノロジーに強い関心を持っていたという『本人との理念の整合性』」の2点を挙げた。

■「個人でもリッチコンテンツが作れる時代」にテレビ局は何をするべきか

左からテレビ東京・大庭竹氏、KDDI・古波蔵氏、日本テレビ・鈴木氏

鈴木氏、古波蔵氏のプレゼンを受け、モデレーターの大庭竹氏は「AIを使っていくことで、テレビコンテンツ広告はどのようになっていくか」と、未来の展望について問いを投げかけた。

古波蔵氏は、「AIを使う側と使わない側で、個人も企業もどんどん差が生まれてしまう」と危機感を示しつつ、『REPLAY PROJECT』に触れながら、「故人を扱うような難しい課題であっても、やってみないと経験が貯まらない」とコメント。「チャレンジするかしないかの差が非常に大きくなっていく」と、実践の重要性を訴えた。

KDDI・古波蔵洋平氏(写真左)

一方、鈴木氏は、「個人でもリッチなコンテンツを作れる時代が来るからこそ、テレビ局は組織として、より大きい、でかい取り組みをどれくらいAIと一緒に作れるかが生命線になる」と主張。「個人クリエイターには真似のできないスケールのものを、みんなの力を合わせて作り、勝負をしていくことが『テレビ局ならではの戦略』になっていくのではないか」と提示した。

日本テレビ・鈴木 努氏(写真右)

会場からは「AIで制作した作品の著作権」についての質問が寄せられたが、鈴木氏は「日本テレビが策定した厳格なポリシーと自社開発の安全なシステムに則って制作している」と回答。古波蔵氏は「パートナー企業や権利者のルールに則って制作している」と述べた。

セッションの最後に、モデレーターの大庭竹氏が自身の見解を交えて議論を総括した。

テレビ東京・大庭竹 修氏

「AIの進化は想像以上に速く、思いつくものは大体実現できてしまう時代になっている。だからこそ、制作者、AIを使う側の人間がどういうポリシーを持ち、どこに正義があって、そこで生まれる作品にどういう責任を自分たちで持てるかを常に考え抜く必要がある。『面白いから出していいだろう』という考えに走らないよう、テレビ広告をはじめ、メディアコンテンツを作っていく世界では非常に気をつけていかなければならない」

大庭竹氏はメディアとしての責任を改めて問いかけた上で、「テレビ局がこの変化の波を乗りこなし、進化していくためには、局員一人ひとりがAIについて学び、知識を蓄え、リスクを恐れず、とにかくまずやってみる、手にしてみるという姿勢が何よりも大事だと思う」とコメント。AIという未知の力と向き合う上での覚悟と未来への希望の両方を示唆し、セッションを締めくくった。