フランス・リールで欧州最大級のドラマ祭「シリーズマニア2026」が3月に開催された。 ©ARNAUD LOOTS/Series Mania

28 APR

韓国が主賓国に、企画開発から資金調達まで動く国際ドラマ市場の現場【「シリーズマニア2026」前編】

編集部 2026/4/28 15:00

フランス・リールで開催された欧州最大級のドラマ祭「シリーズマニア2026」(2026年3月20-27日/フランス・リール)は、いまや国際的なコンテンツ市場としての役割を強めている。その中核を担うのが、併設イベントの「シリーズマニア・フォーラム」だ。今年は75カ国から約5200人の業界関係者が集結し、500人の国際バイヤーが参加した。現地取材したシリーズマニア2026の注目動向を前・中・後編にわたってレポートする。(ジャーナリスト 長谷川朋子)

■65カ国・約400件の国際共同制作プロジェクト

「シリーズマニア」の開催地であるフランス北部の都市リールは、パリから高速鉄道で約1時間。ベルギーとの国境にほど近く、ヨーロッパの主要都市と結ばれたアクセスの良い街だ。毎年この地に、世界中からテレビドラマの作り手と買い手が集まる。プロ向けイベントの「シリーズマニア・フォーラム」の会場となったリール・グラン・パレでは、朝からピッチや商談が行われ、企画開発から資金調達、国際セールスまでが一体的に進む。ドラマの開発市場として機能している点が、このフォーラムの特徴である。

今年は75カ国から約5200人が「シリーズマニア・フォーラム」に参加し、会場内に27の国・地域からの代表団と97のメディアやプロダクションがブースを構えた。日本からもNHK、日本テレビ、テレビ東京などが出展した。各国の公共放送や制作会社が横並びで企画を持ち寄る光景は、国際共同制作を前提としたドラマ市場のトレンドを映し出す。

なかでも象徴的なプログラムが「Co-Pro Pitching Sessions」だ。65カ国から約400件の応募の中から選ばれた15企画が公開プレゼンテーションされ、会場最大規模のシアタールームには多くの参加者が詰めかけ、ほぼ満席となった。

審査員には、スペイン配信最大手のMovistar Plus+をはじめ、フランスARTE、ドイツZDF、スウェーデンSVT、アメリカのPaper Plane Productionsの責任者などが名を連ねた。

最優秀プロジェクトを受賞したのは、旧ソ連下の1970年代後半を舞台に女性主体の犯罪組織を描く『RED PANTS』。キルギスの独立系スタジオによるプロジェクトで、シリーズマニア初参加国ながら高いプレゼンテーション力を発揮し、開発支援金として5万ユーロ(約800万円)を獲得した。

「Co-Pro Pitching Sessions」の最優秀プロジェクトを受賞したキルギスの『RED PANTS』、 ©Chloé LECLERCQ/Series Mania

シリーズマニアの創設者でジェネラル・ディレクターのロランス・エルズベルグ氏は、このプログラムについて「Co-Pro Pitching Sessionsは10年以上にわたり、開発段階の企画を国際共同制作へとつなげてきた。今年は応募・選出ともに多様な国々が参加し、エコスリラーからミステリー、女性を主体に描く作品まで、テーマの幅広さが際立っていた」と語る。

またフォーラム・ディレクターのフランチェスコ・カプッロ氏は、「Co-Pro Pitching Sessionsの開始以来、40以上のプロジェクトが実際に制作され、複数の国・地域で放送されてきた」と説明する。成果の一例として、日本のHuluも参画したスペイン発『The Head』がある。

■韓国が主賓国に、日本の存在感は?

韓国がシリーズマニア・フォーラム初のカントリー・オブ・オナー(主賓国)として特集された。 ©EmilieHautier/Series Mania

完成作品の国際セールスを見据えた取り組みも強化されている。今年は500人の国際バイヤーが参加し、昨年から始まった「Buyers Upfront」プログラムでは、バイヤー向けに厳選された新作がプレゼンテーションされた。審査員には日本からWOWOWも参加した。

選出されたラインナップの中には、日本とシンガポールの共同制作ドラマ『Lost and Found』も含まれていた。NHKとテレビマンユニオン、Empire of Arkadiaによるプロジェクトで、受賞には至らなかったものの、アジア発作品の存在感を示した。

さらに今年のシリーズマニア・フォーラムでは、韓国が同イベント初のカントリー・オブ・オナー(主賓国)として特集されたことも大きなトピックとなった。ウェブトゥーン原作を起点としたシリーズ開発や、IPを軸にした制作モデルを前面に打ち出し、企画開発から流通までを一体で推進する韓国型の戦略の強さを改めて印象づけられた。

一連のプログラムは、シリーズマニア・フォーラムが欧州市場にとどまらず、グローバルなコンテンツハブへと発展していることを示している。376人の登壇者、60のカンファレンスが展開され、Disney+、Prime Video、HBO Maxといった主要プラットフォームのキーノートでも、非英語作品の強化と地域クリエイターとの協働が繰り返し語られた。Netflixが今年もシリーズマニアをスポンサードしていることも含め、米国発プラットフォームを巻き込みながら、国際的なドラマ市場の再編を後押しする場となっている。

こうした中で、日本の存在感をどう見ているのか。フォーラム・ディレクターのフランチェスコ・カプッロ氏に直接聞いた。

NHKブース/筆者撮影

カプッロ氏は「総務省事業によるプレゼンテーション『Coming Next from Japan』が組まれ、映像産業振興機構(VIPO)の代表団も参加している。日本企業の参加は着実に増えており、日本と欧州のあいだに、より多くの“橋”がかかり始めている」と語る。

今年は、フェスティバルイベントでNHKドラマの『火星の女王』と『ひらやすみ』が選出され、『ひらやすみ』は特別表彰を受けた。カプッロ氏は「シリーズマニアはフォーラムとフェスティバルで構成されているが、フェスティバルの作品選定は完全に独立している」と説明する。日本作品が選ばれた背景には、作品そのものの評価がある。

そのうえでカプッロ氏は、シリーズマニアの現在地をこう位置づける。「ヨーロッパを基盤としながらも、韓国、日本、台湾、シンガポール、さらにはブラジルや南アフリカなど、世界中から参加者が集まるグローバルなイベントになっている」。実際、欧州の産業基盤を土台に、各国のプレイヤーが集まる場へと広がっていることを、今年も現地取材を通じて実感した。

国際共同制作が前提となったいま、日本に求められているのは単なる参加ではない。企画開発の初期段階から国際市場を見据え、国際パートナーとともに作品を組み立てていくことにある。これを具体化する場として、シリーズマニア・フォーラムの活用は一つの選択肢となりそうだ。