図 1 開発したライトフィールドヘッドマウントディスプレー 外観

26 MAY

NHK、実世界に近い自然な見え方で視覚疲労の少ない薄型ライトフィールドヘッドマウントディスプレーを開発

編集部 2026/5/26 13:00

NHK放送技術研究所(技研)は、実世界に近い自然な見え方で、視覚疲労の少ないバーチャルリアリティー(VR)体験の実現を目指し、「ライトフィールド方式」を採用したヘッドマウントディスプレー(以下、ライトフィールドHMD)の開発を進めている。 今回、役割が異なる2種類のレンズを接触して配置する独自の光学系と、高精細なマイクロディスプレーを組み合わせることで、従来よりも大幅な薄型化と高精細化を両立したライトフィールドHMDを開発した(図1)。

内部構成の CG モデル
今回の試作機(左)と前回の試作機(右)の外観比較

開発の背景:なぜ従来のVRは目が疲れるのか?

一般的なVRゴーグル(HMD)は、2枚のディスプレーの映像をそれぞれレンズで遠方に拡大表示し、左右の目に少しずれた映像(視差)を見せることで立体感を作り出している。しかし、この二眼方式には「視覚疲労」という課題があった。
映像上の物体が前後に動いても、目のピント(焦点)はレンズで拡大されたディスプレーの位置に固定されたままとなることで、「視差によって知覚される奥行き位置」と「目のピントを合わせている位置」が一致せず、疲労や不快感の要因になると考えられている。

「ライトフィールド方式」による解決

ライトフィールドは、物体から放たれて目に到達する「光線の集まり」を再現する技術である。実世界で物を見るときと同じように、見たい位置に目のピントを合わせることができるため 、長時間視聴しても疲れにくい、自然な3次元映像の表示が可能になると期待されている。

技術的ポイント①:光学系の大幅な薄型化

従来のライトフィールドHMDには、装置が大きくなってしまうという課題があった。

■従来の仕組み(中間像を形成して拡大)
従来のライトフィールドHMDは、ディスプレーとレンズアレーで一度空中に中間像を形成し、それを接眼レンズで拡大することで遠方に3次元映像を表示していた。しかし、この方法では、レンズアレーと接眼レンズの間に約4cmの間隔が必要となり、HMDが大きくなることが課題になっていた(図2)。

1) レンズアレー: 微小なレンズを平面状に並べた光学素子
2) 中間像: レンズアレーによってディスプレーの背後に形成される微小な3次元映像

図 2 ライトフィールド HMD の光学系の比較

■今回の新技術
今回、レンズアレーと接眼レンズを接触配置する新しい光学系を考案した。接触させることで実質的に1枚の光学素子として機能させ、光線制御と集光を同時に実現するとともに、この光学系に適した要素画像群の生成手法を組み合わせることで、中間像を介さず直接3次元映像を目に届けることに成功した。光学系の奥行きを従来比で79%削減し、大幅な薄型化を達成した。

技術的ポイント②:高精細な映像をリアルタイムで表示

薄型化に加え、「高精細マイクロディスプレー」を採用した。さらに、膨大な光線の計算を高速で行う「レイトレーシング技術」による要素画像の高速生成と組み合わせることで、高精細な3次元映像をリアルタイムに表示できることを確認した(図3)。

3) レイトレーシング技術: 光源から出て光学系を通過する光線の経路を追跡し、映像を生成する描画手法
4) 要素画像: 3次元映像をつくる光線の色や明るさの情報が含まれた映像

図 3 開発したライトフィールド HMD で見える3次元映像

今後の展望

本技術は、5月28日(木)から31日(日)まで開催される「技研公開2026」で展示される。今後は、3次元映像の高精細化と表示範囲の拡大に向けた改良を進め、教育、医療、エンターテインメントなど、さまざまな分野で活用できる、自然で視覚疲労の少ない快適なHMDの実現を目指す。

技研公開2026「拓く、支える、これからも」

開催期間: 5月28日(木)~31日(日) 午前10時00分~午後5時00分(入場は終了30分前まで)
会場: NHK放送技術研究所(東京都世田谷区砧1丁目10-11)
入場: 無料(事前予約不要)
ホームページ: https://www.nhk.or.jp/strl/open2026/