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『アメトーーク!』360°企画を“量産型”にしてはいけない!〜テレビ朝日✕サントリー「ストロングゼロ おつまみドラフト会議」担当者インタビュー後編

編集部 2020/9/11 10:00

テレビ朝日は7月2日、同局の人気番組『アメトーーク!』(毎週木曜 23:15〜)のスピンオフ番組『アメトーーク!「ストロングゼロおつまみドラフト会議」』を、インターネットキャッチアップサービス(TVer・テレ朝動画・テレ朝キャッチアップ)限定で公開した。

この番組は、サントリーの人気チューハイ「ストロングゼロ」とのタイアップ。去年5月にネットムービーとして同様の形態で公開された企画の第2弾にあたる。

今回はMCの蛍原徹(雨上がり決死隊)を筆頭に、山崎弘也(アンタッチャブル)、小杉竜一(ブラックマヨネーズ)、後藤輝基(フットボールアワー)、草薙航基(宮下草薙)が出演。新型コロナウイルスによるステイホーム(外出自粛)期間中の過ごし方を振り返りながら、各々の「家飲み」事情を赤裸々にトーク。「おつまみドラフト会議」と称し、野球の選手ドラフト会議さながらに「ストロングゼロに合うおつまみ」を“指名”し合う内容だ。

ストロングゼロに合うおつまみをドラフト会議形式で「指名」

ふだんあまりキャッチアップ配信を実施していない同番組が、なぜインターネット限定の「番組」に乗り出したのか。テレビとネットの連携を通じ、今後どのような展望を描いているのか──。

インタビュー前編では、この企画がスタートした経緯や、番組制作の裏話などを伺った。この後編では、引き続きテレビ朝日 ビジネスソリューション本部 セールスプロモーション局 第1ソリューション部の川中 真氏、同オンラインビジネス部の清水 望氏に、Webを中心にしたテレビ朝日360°メディア企画の狙いや、ユーザーの反響、ブランディングについて伺っていく。

テレビ朝日 清水 望 氏 & 川中 真 氏

■テレビの「認知力」とネットの「リーチ力」

──今回の施策はテレビ朝日の中期経営企画『テレビ朝日360°』に則ったメディア企画の一環と聞きました。そもそもこれはどういった枠組みなのでしょうか。

川中氏:『テレビ朝日360°』は2017年から2020年までの4ヶ年を期間として制定された、局全体の経営企画にあたります。「すべての施策の源泉はテレビコンテンツである」というコンセプトを掲げ、地上波やBS・CSなどの放送チャンネルを中心に、インターネットやSNS、リアルイベントにいたるまでを統合的に展開していくというものです。

セールスプロモーション局では地上波のセールスのみならず、デジタル媒体での展開やクライアント様における店頭との連携、『テレビ朝日夏祭り』をはじめとするリアルイベントまで、自社が持つメディアを文字通り360°活用した施策を『テレビ朝日360°メディア企画』と銘打って実施しています。

──今回の施策にも通じる部分ですが、テレビとネットの連動についてどのような考えを持っていますか。

清水氏:信頼感のあるプロコンテンツを作れるところがテレビ局の一番の資産だと思っています。また、「見ていただく手段を広げる」という意味ではネットの活用も欠かせません。私たちのコンテンツをより多くの方にご覧いただき、クライアント様にとってプロモーションのお手伝いにつなげるためにも、テレビとネットの連動は必要不可欠であると思います。

川中氏:コンテンツとしての軸をしっかりと持てていればいろんな場所へ展開できるので、テレビとネットそれぞれのメリットを両輪で活かすことが重要ですね。

──テレビとネットの連動によって、今後はさまざまなマーケティングデータ同士の連携も重要なニーズとなりそうです。

川中氏:それこそサントリーさんは本当に先進的なマーケティングに取り組まれている会社なので、要求レベルに合わせるためにも視聴データの連携も図り、テレビ局としても唯一無二の武器を持っていなければいけないと感じています。今回の施策でも、地上波とキャッチアップを両方見た人がどのような行動をしたかという相関データの分析に取り組んでいます。

──民放各局のなかでも、とくにテレビ朝日はデータを軸にしたマーケティングに積極的なイメージがあります。

清水氏:テレビ朝日社内には、インターネットにかかわる課題に専門に扱うセールスプロモーション局と同部として「ビジネスソリューション本部 IoTv局」という組織が出来ています。

この部署内にある「データソリューションセンター」がセールス面でプラスになるデータを提供してくれたりと、チームとしてすごく積極的に動いてくれているのです。私たちオンラインビジネス部も常に連携を取りあっています。

地上波テレビが持つ圧倒的な認知力と、メディアとして蓄積してきたマーケティングデータ、これらをクライアント様のニーズと結びつけることができれば、より強力な企画を打ち出して行けるのではないでしょうか。

■Twitter IVSで「関心外」への大規模リーチも獲得

──話題化を強く意識したうえでの360°メディア企画ということですが、拡散しやすいように導入した仕組みや工夫があれば教えて下さい。

清水氏:今回、番組公式Twitterにて「IVS(Instream Video Sponsorship:インストリーム動画スポンサーシップ)」という仕組みを導入しました。

これは指定したコンテンツパートナーが運用するTwitterタイムライン内の動画に対して、プリロール(本編再生前に挿入される)広告を掲載するという仕組みのイメージが強いとおもうのですが、そうではなく、制作チームに通常の番宣同様の番宣風インフォマーシャルを制作頂き、その動画を広告として運用し、且つウェブサイトカードでより遷移しやすくした仕組みになります。

テレ朝では他の番組でもこの仕組みを活用していますが、『アメトーーク!』の番組公式Twitterを使っての広告配信は、今回のサントリーさんとの取り組みのなかで初めて実施しました。

──効果のほどはいかがでしたか。

清水氏:これまでも番組公式Twitterで告知を行ってきましたが、どうしても到達範囲がアカウントを直接フォローしていただいている方たちに限られてしまう部分がありました。

そうした中、今回初めて『アメトーーク!』を主語として(アカウント横断的な)広告配信を実施できたことで、周囲にいらっしゃったテレビファンのみなさんや、これまで番組にタッチできていなかった方など、新たなリーチの獲得に大きくつなげることができました。

実際TwitterからのCTRや再生単価も運用力に加え、コンテンツ力が相まってかなりの良数値となりました。

──これまで関心の外にあった層もいっきに取り込むことができたのですね。

清水氏: Twitterのタイムライン上でも「いままで『アメトーーク!』を見ていなかったが、ストロングゼロというテーマで興味を持った」というような声が多く見受けられました。肌感としても、今回はかなり新規リーチを獲得できたのではないかと感じています。

■番組の雰囲気と商品体験の「シンクロ」が生まれた

──「これは予想外だった」という反響はありますか。

川中氏:「おつまみドラフト会議」というコンセプトが視聴者のみなさんにとって馴染みやすかったのか、番組で取り上げられた「味わい方」を実際に試す方が多く見受けられたのは予想外でした。

──番組視聴が「ストロングゼロを買いに行く」という行動に直結したのですね。

清水氏:「やばい、ストロングゼロ飲みたくなった!」とか、「深夜に番組を見て、いつのまにかコンビニに走っている自分がいる」など、実際の皆さんの “リアクション”がSNSを通じて伝わってくるのが現代っぽいな、と。

番組としての『アメトーーク!』が持つ「ワクワクする雰囲気」と夜中にお酒を飲む“背徳感”がシンクロしたと言えるかも知れないですね。

■「民放テレビ基準」でブランドセーフティを担保

──昨今、デジタル広告においては行き過ぎた表現に関する問題などが取り沙汰されています。広告の安全性を担保するために行った取り組みがあれば教えて下さい。

清水氏:アルコール飲料を商材に扱う以上、未成年の方が見てしまうことをしっかりと想定して、エクスキューズは入念に行いました。

具体的には民放の広告規定にあわせて「この番組はサントリーのPRである」というクレジットを本編の前に大きく入れ、番組内で話される意見は出演者個人の見解であるという文言を本編開始前にテロップ表示することで、あらかじめ内容を理解していただけるように配慮しました。

本編前のスポンサークレジット
本編前の注意クレジット

──クレームやネガティブな反響はありませんでしたか。

清水氏:広告の性質上、そういった反響もあるかと予想していたのですが、結果としてネガティブな反響はほとんど見受けられませんでした。

──ブランドセーフティの面で、大きな役割を果たしたのですね。

川中氏:良い意味で意外でした。企画段階からサントリーさんとテレビ朝日でしっかりタッグを組んで準備できたことが成果につながりました。キャッチアップの告知も兼ねたインフォマーシャルを地上波の本編中にCMとして放映しているのですが、実はこちらもかなり配慮を重ねたうえで制作しました。

川中氏:今回のインフォマーシャルは先ほど少し触れましたがキャッチアップのPRというかたちで、本編と同じくプロデューサーの加地EPによる監督のもと制作しています。こちらについてはサントリーさんの純然たるCMになるので、民放で定める通常のCM制作規定に則って、かなり丁寧に作りました。結果、ここでのPRも功を奏し、キャッチアップの再生数にも成果となって現れました。

■「量産型」にはしたくない。クライアントと1から作り上げる価値

──最後に、今後取り組んでいきたい、意識していきたいことを教えて下さい。

清水氏:データの連携など、取り組んでいきたいことはたくさんあります。ただ同時に、私たちがより気をつけなければいけない部分もしっかりと意識してなければならないと考えています。

──具体的には、どういったことでしょう?

清水氏:テレビ番組とのタイアップが汎用的な営業パッケージになってしまうと、結果としてクオリティが下がってしまうのではないかという懸念があります。そこはなんとしても避けたいのです。

『ストロングゼロおつまみドラフト会議』は、サントリーさんの思いと商品ターゲットに『アメトーーク!』の方向性がマッチしたことで生まれた完全オリジナル、唯一無二の企画です。安易に「『アメトーーク!』とコラボできますパッケージ」のような量産型の営業商品になっていくようなものではありません。

今回は、地上波の制作チームがクライアント様のターゲットに合わせて特別に番組を仕立ててくれました。だからこそ、私たちも同じベクトルにならなければいけないと思うのです。

──意思を同じくしたチームが1から企画を練り上げることに価値があるのですね。

川中氏:クライアント様とテレビ朝日が同じ方向をちゃんと向くことができる番組や商品があれば、テレビコンテンツを主体としたメディア企画はどんどん作っていきたいと思います。そのぶん、1回1回が新しいと言っていただけるような事例を積み重ねていかなければいけません。

──案件ごとのさまざまなニーズにあわせて、オリジナルを組み上げると。

清水氏:データ連携を行う場合もあるでしょうし、SNS上での展開先もTwitter以外にInstagramなど、そのときどきのニーズによって柔軟に選択することになるでしょう。毎回新鮮になるように、とにかく「量産型」にだけはならないようにしていきたいです。そういった意味でも、クライアント様に対するヒアリング力はこれまで以上に重要になっていくものと考えています。

川中氏:安易なコラボ企画をすれば、視聴者のみなさまにも必ずバレます。やるならば小さくまとまらず、日本中を巻き込むようなコンテンツや世の中を動かすようなドラマを生み出していきたいと思います。

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アメトーーク!「ストロングゼロおつまみドラフト会議」をTVerで視聴する