左から読売テレビ帖佐祐樹氏、ADK MS西村雄太氏、読売テレビ東友規氏

08 OCT

字幕放送にスポンサー枠を設置 ADK MSが読売テレビ、中京テレビ、福岡放送と『ミヤネ屋』で新たな取り組み~担当者インタビュー

編集部 2021/10/8 08:00

讀賣テレビ放送株式会社(以下、読売テレビ)と株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ(以下、ADK MS)は、中京テレビ放送株式会社(以下、中京テレビ)、株式会社福岡放送(以下、福岡放送)とともに、9月1日(水)の「言語聴覚の日」に放送された『情報ライブミヤネ屋』において「字幕提供」を実施した。

「字幕提供」とは、聴覚に障害のある方々などを対象にニュースやドラマの台詞やナレーションなどの音声情報を文字にして画面に表示する「字幕放送」にスポンサー枠を設定し、字幕提供スポンサー名のテロップと字幕提供スポンサーの字幕付きCMを流すもの。

業界では初めての取り組みとなる本施策に至った経緯や狙い、今後の展開について読売テレビの営業局東京営業センターデータ推進部兼東京営業推進部の帖佐祐樹氏、同局の営業局東京営業センター東京営業部の東友規氏、ADK MS第1メディアビジネス本部テレビ局第1テレビグループの西村雄太氏に話を伺った。

■「耳の日」のトライアルを経て、「言語聴覚の日」に「字幕提供」を実施

――「字幕提供」の取り組みが始まった経緯を教えてください。

帖佐氏:まず今年の3月3日(耳の日)に弊社グループで字幕付与や字幕付きCMのサービスを提供しているが、テレビ番組内の放送字幕に提供を付ける「字幕提供」のトライアルを行いました。

読売テレビの関西ローカル番組『かんさい情報ネットten.』(毎週月~金曜日16:50~)の本編内で、通常の番組提供とは別になる「字幕提供」(提供はエイデック)を提供表示として出したという経緯がありました。

――字幕放送や字幕付きCMの認知拡大を促す施策ですね。全国ネットでの展開に9月1日を選ばれた理由は?

帖佐氏:エイデックのトライアルを受けて、ADK MSさんから話をいただき実際にスポンサーを募ってようということになりました。3月3日の耳の日に続いて、9月1日は言語聴覚の日でしたので、放送をこの日に決めて取り組みを進めることになりました。

――『情報ライブ ミヤネ屋』(月~金曜日13:55~15:50)を選ばれたのはなぜですか?

帖佐氏:弊社だけではなく、ADK MSから系列の中京テレビと福岡放送も新しい取り組みがしたいという意向があり、それなら全国ネットの番組であれば他局も同様の取り組みが横展開できるうえ、本企画のバリューも上がると考えました。そして、問題点や課題を確認して、放送字幕にスポンサーを付けるというスキームを作りたいという狙いもありましたね。

■社会的意義のある取り組みだが、スポンサーの理解を高めるのは今後の課題

――「字幕提供」に対するスポンサーの反応はどういうものでしたか?

西村氏:聴覚障害のある方に対しての取り組みは、社会的意義もあるとしてご理解いただける企業が多かったのは事実です。しかしながら今回はトライアルから9月1日の放送実施まで時間が短くて難しい点がありました。

――これからスポンサーに対して「字幕提供」を広げていきたいとお考えですか?

西村氏:そうですね。やってみる意義は大きいと思います。ただ、今回は9月1日だけの企画として行った側面が大きいので、これをレギュラーの売り物として確立させていくには、まだまだ高いハードルがあるとも感じています。

――どのような課題があるのでしょうか?

西村氏:東京2020オリンピック・パラリンピックがありましたので、字幕付きCMを制作するクライアントは増えてきています。しかし字幕放送に対する認識や制作・搬入に関するルールや知識はまだ届いていません。今回の取り組みを終えて、字幕放送や字幕提供、字幕付きCMをもっと広めていかないといけないと改めて考えています。

■字幕放送の普及には労力とコストがかかる。欧米のビジネス化モデルを参考にしたい

――字幕放送に関しては、「誰一人取り残さない」社会の実現を目指した取り組みも進んでいると聞きます。実情はいかがですか?

東氏:キー局においては字幕放送のカバー率が非常に高くなってきている一方で、ローカル地区も含めて考えた時、キー局ほどは進んでいません。字幕放送の制作において弊社には字幕センターがありますが、結構な人数を割いていて労力とコストがかかっているという現状があります。

――字幕放送を普及させるためには、どういったことが考えられますか?

東氏:欧米などの海外では、字幕放送にスポンサーが付いてビジネス化されているところがあります。社会的意義があるものを普及させるためのビジネスを考えるのは恥ずかしいことではなく、当然それなりのお金や労力が必要なことですから、広告代理店と知恵を出し合っていきたいと思います。

――それぞれに恩恵のある形が実現される可能性もあるのですね?

東氏:そうですね、字幕放送を必要としている方々と、スポンサーにもメリットがあるものを考えていきたいです。

■字幕放送の拡大とともに、「字幕提供」が広がる可能性は高まるか

――トライアルを含めた今回の「字幕提供」の取り組みをこれからどう展開し発展させていきたいか、みなさまのお考えをお聞かせください。

東氏:そんなに簡単なことではないと実感していますが、エリアを含めてさまざまな所に広げていきたいと思っています。やりたいけれどもできないことを、広告代理店やスポンサーとタッグを組んで進めていきたいですね。

西村氏:正直なところ、「字幕提供」の企画はレギュラー化する所までには至っていません。しかし今はコストなどの問題で字幕放送がカバーされていない地域でも、字幕をフックとして売り物を作っていきたいという思いはあります。

例えばCMの映像は流れなくて、社名だけのロゴが出るカード提供CMと合わせて「字幕提供」を行うとか、あるいは実際にはCMがなくて社名読みだけやっているようなスポンサーには「字幕提供」も提案していけるのではないかと考えます。

帖佐氏:昨今、様々な動画・音声サービスが多くなってきている中で、例えば耳からの音声が他のデバイスや媒体に押さえられていて、セカンドスクリーンとしてテレビが見られている時、音声からではなく字幕などの文字情報から視聴していただく機会もあるのではないか。よくテレビの“ながら見”と言われますが、字幕があることで専念視聴していただくことにも繋がるのではないかと考えています。

「字幕提供」以外にも、字幕の表示の仕方でスポンサーを想起させるような表現ができないかというようなことも含めて、新しい広告フォーマットやセールスの仕方の研究にもつなげていきたいと考えています。