奥山真司氏

27 DEC

メディア環境変化に対応したクロスメディア広告効果測定標準化への期待 〜VR FORUM 2022レポート

編集部 2022/12/27 09:00

株式会社ビデオリサーチが主催する国内最大級のテレビメディアフォーラム「VR FORUM 2022」が、2022年11月29日(火)〜12月1日(木)にオンライン開催。過去最大23セッション開催となる今回は、コロナ禍による生活者のメディア接触の変化やDXの流れを踏まえ、放送局や出版社、新聞社など各メディアが模索する「新しいビジネス」にフォーカス。当事者みずからによるプレゼンテーションやディスカッションを通じてヒントを探る。

本記事ではこのなかから、11月30日開催のKeynote「メディア環境変化に対応したクロスメディア広告効果測定標準化への期待」の模様をレポート。公平で信頼性・透明性の高い広告効果測定手法への期待が高まるなか、デジタル広告最大手であるGoogle がとらえる背景、テレビとデジタルの広告効果測定における考え方について、グーグル合同会社代表の奥山真司氏がプレゼンテーションした。 

■Googleが意識する「メディア環境“3つの変化”」

「広告業界のメディアトレンドにもあるように、インターネット広告への投資が大きくなっている」と奥山氏。広告主のブランドを持続的に成長させるためにGoogleが常に意識しているという「メディア環境の“3つの変化”」を語る。 

(1)テレビメディアの視聴変化 

「大容量かつ安価な記録媒体の供給によって、『リアルタイムで放送されるコンテンツを視聴できるもの』として捉えられていたテレビに『オンデマンドで見る』という選択肢が加わった」と奥山氏。その代表例としてコネクテッドTVの視聴動向を取り上げる。 

博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所の「メディア定点調査」では、2020年から2022年にかけて、テレビ視聴時間の内訳における「有料動画」の割合が13.4%→22.1%、「無料動画」が19.0%→27.0%と大きく伸長した。「テレビは『インターネットに繋がったスクリーン』として生活者から捉え直されている」(奥山氏) 

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Googleのデータによれば、コネクテッドTVでのYouTube視聴ユーザーは、2021年3月から2022年5月にかけて2000万人→3500万人へと成長した。 

奥山氏は「無料動画においてYouTubeの存在感が高い」としながら、「ゆったりと視聴できるテレビでは平均視聴時間は長い傾向にある」とコメント。コネクテッドTVの視聴時間はモバイル・デスクトップPCの約2倍にのぼるといい、「大きなスクリーンを共有しながら複数人で同じコンテンツを楽しむ傾向がある」とした。 

「生活者から見て『テレビがいいな』と感じている点と『YouTubeがいいな』と感じている点の双方が合わさる結節点が、広告としての新たな価値を作り出していく」 

(2)デジタルメディアの視聴変化 

テレビ番組をスマートフォンなどテレビ以外のデバイス上で視聴できる環境が整ったことで、「クリエイターやインフルエンサーが発信する動画コンテンツの裾野が数年前と比較ができないほど広がっている」と奥山氏。Googleのデータによれば、日本において登録者10万人以上のYouTubeチャンネルは2022年6月時点で7700以上、100万人超えのものは500以上あり、それぞれ前年比で30%増加しているという。 

「様々なメディアがシームレスに繋がることによって、質と量の双方で『好みのコンテンツ』を視聴できる環境が整い、生活者は『テレビを見る』『スマホを見る』という“メディア起点”の視聴体験から脱却した」と奥山氏。「メディアをまたいで何を見るか、どのコンテンツを見るかという“コンテンツ起点”の視聴体験がなされている」 

(3)広告効果測定のあり方の変化 

「投資に対して適切な形で効果測定を行い、マーケティング活動に対するROIを可視化・最大化する不断の努力は命題だ」と奥山氏は述べつつ、「プランニングに対する適切な効果測定については『言うは易し行うは難し』の状況」と指摘。「信頼性・透明性を担保した上で、生活者の行動データをベースに“統合したメディア効果測定”を適切に行うことの切実さと機運が業界全体の期待になっている」と語る。 

「変化の流れが速い潮流に対応しながら持続的にブランドを成長させていくためには、これまでのマーケティング投資に対する考え方も見直す機会にある」 

■テレビCM×YouTube広告の統合集計で視聴者体験に沿った広告価値を算出

奥山氏は、Googleが協力するビデオリサーチの広告効果測定サービス「Cross Media Reach Report」を紹介。同サービスではテレビCMとYouTube動画広告を統合してコミュニケーションの到達状況を確認できるという。 

「同じ土俵で計測することが難しく、サイロな評価になりがちだったテレビ・ウェブ・アプリそれぞれのメディア効果を生活者の視聴体験に寄り添った形で可視化することは、マーケティングに携わる人々にとっては悲願とも言える」(奥山氏) 

さらに奥山氏は、昨今の生活者におけるプライバシー保護意識について「有用な情報取得への意欲が向上している一方、不利益、無関係な情報に対しては無関心もしくは好ましくない反応が見られる」といい、「環境変化に対応するマーケティングソリューションを開発するためには、こうした生活者意識の背景を念頭におくことが肝要」とコメント。 

これを踏まえ、「Cross Media Reach Report」について「生活者の視聴体験の変化、クロスメディアとして同じレイヤーで効果測定を考慮し、プライバシーセントリック(重視)の形で解決できたことはまさにエポックメイキングだ」と高く評した。 

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■プライバシー保護とクロスメディアの両立で「新たな広告測定の歴史が始まる」

最後に奥山氏はプライバシー保護意識に配慮したGoogleの取り組みの一環として、2022年10月に提供を開始した「マイ アド センター」を紹介。このサービスでは、Googleのサイトやアプリでの広告体験について「好みの企業やサービスや気になるトピックの広告をより多く表示したり、興味のないものをユーザー自身で制限したりできる」という。 

「Googleは広告エコシステムの健全な発展のため、ユーザープライバシーの保護と計測の透明性を高めるクロスメディアの広告効果測定の環境整備をサポートしており、今回ビデオリサーチ様とそれを実現できたことは日本のマーケティングに新たな流れを作る潮目になる」(奥山氏) 

「ビデオリサーチがテレビメディアの効果測定の歴史を築いてきたように、デジタルと統合された新たなクロスメディアの効果測定の歴史がここから始まる」と奥山氏。「信頼性、透明性の高い『Cross Media Reach Report』が業界標準になることで、広告ビジネスが今後より発展することをGoogleも強く期待しています」と述べた。