09 MAR

広告×IPの最前線、民放5局が示すIP活用の新潮流【テレビカンファレンス2026レポート】

編集部 2026/3/9 12:00

1月27日、渋谷ヒカリエホールで民放キー5局(日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ)の主催による「テレビカンファレンス」が開催。今回は「3つのシンカ<真価・深化・進化>」をテーマに、テレビマーケティングの最新事例や効果測定、テレビが目指すべき将来の姿が示された。

本記事では、当日メインステージにて開催されたセッション「『広告×IP』の最新トレンド!民放5局の事例を深堀る」の模様をレポート。Z世代向けのデジタルコンテンツから、国民的キャラクターの多角化戦略まで、テレビ局が持つIP(知的財産)を広告価値の最大化に繋げる最新のアプローチが披露された。

本セッションには、日本テレビ放送網株式会社 コンテンツ戦略局 総合編成センター メディア開発DIV. プロデューサーの平岡辰太朗氏、株式会社テレビ朝日 セールスプロモーション局 第2ソリューション部の高石智史氏、TBSテレビ ライブエンタテインメントビジネス局 番組・ライブイベント事業部 部長の青木伸介氏、株式会社テレビ東京 制作局 クリエイティブ開発チーム 「シナぷしゅ」統括プロデューサーの飯田佳奈子氏、株式会社フジテレビジョン IP・アニメ事業局 IP事業部 統括プロデューサーの臼田玄明氏が登壇した。

■日本テレビ:Z世代を捉える「ショートドラマ」で“デジタル発IP”を共創

日本テレビ・平岡辰太朗氏

トップバッターの日本テレビ・平岡氏は、「若者へのアプローチが困難とされる現代において、マスメディアとデジタルの掛け算が重要になっている」と指摘。その中で、TikTokを中心とした1〜3分の縦型ショートドラマがZ世代向けマーケティングとして有効な選択肢の一つと述べた。

「日テレ公式ショートドラマアカウント」で配信されている『毎日はにかむ僕たちは。(まいはに)』は、広告を一切用いずに平均450万再生を記録するなど、Z世代から絶大な支持を獲得。この成功を基盤に、企業との新たなコラボレーションモデルを構築しているという。

「従来のプロダクトプレイスメントと一線を画し、企業の商品やサービスが『キーアイテム』として物語の中核を担う完全オリジナルドラマを制作している」と平岡氏。「Z世代が面白がるエンタメコンテンツを提供しながら、ブランドメッセージを自然な形で届けられる『ハイブリッド展開』が最大の特徴」と強調した。

その後の質疑応答では、TBSテレビ・青木氏が、地上波放送なしでの費用対効果について質問。平岡氏は、縦型ショートドラマ制作に特化したコンテンツスタジオ「ごっこ倶楽部」との強固なパートナーシップが鍵であると回答した。

「『ごっこ倶楽部』が自社所有する多彩な撮影セットを活用し、撮影、編集、分析までを一気通貫で行う効率的なオペレーションを確立することで、事業として黒字化が実現できている」

最後に平岡氏は、「テレビ局として本気でデジタルコンテンツを取りに行くという意思表明」として、昨年10月に新設された日テレ社内のデジタルコンテンツ専門組織「VIRAL POCKET(バイラルポケット)」を紹介。広告主や代理店、さらには他局とも連携し、新たなIPを共創していく姿勢を示した。

■テレビ朝日:表現力と共感を両立する「アニメCM」

テレビ朝日・高石智史氏

テレビ朝日・高石氏は、住宅建設企業「AQグループ」の企業キャラクター「あきゅりん」を主役としたアニメCMの制作事例を紹介した。

「10代〜20代の若年層に響く企画」を求めるクライアントに対し、「情報過多の現代において一方的な広告が届きにくい現状を打破する施策としてアニメCMを提案した」と高石氏。そのメリットとして、実写では難しい表現を可能にする「高い表現力」と、誰もが幼少期にアニメに触れていることから生まれる「生活者の共感の獲得」の2点を挙げた。

CM内では、独自の建築技術を訴求するためにキャラクターの首が長く伸びる、企業の理念を可視化するために足元から木々が生い茂るといった、アニメならではのファンタジックな表現を採用。これにより、視聴者に興味を抱かせ「自分ごと化」させ、足を止めさせる効果を狙ったという。

「制作には『SPY×FAMILY』で知られるウィットスタジオや、『鬼滅の刃』の竈門禰豆子役で知られる声優・鬼頭明里を起用するなど、『テレビ朝日ならではの座組』でクオリティを追求した」と高石氏。放映の結果、既存CMではリーチできなかった新規層の開拓に成功し、CM動画のYouTubeは3ヶ月で200万再生を突破したと述べた。

テレビ視聴データを用いた調査では、アニメCM接触者の企業認知度が、非接触者に比べ1.5倍にリフトアップ。またテレビ画面の注視度調査では特に「不動産購入にはまだ若い」とされる男性20〜34歳(M1層)の注視度が顕著に高かったという。

「企業の伝えたいメッセージをどう入れ込んだか」という日本テレビ・平岡氏からの質問に対し、高石氏は「キャラクターに詳細な設定があったからこそ、クリエイティブな飛躍が生まれた」と回答。その一方で「アニメ制作は後戻りができないため、ラフの絵コンテ段階でキャラクターの性格や細かな動きまでクライアントと徹底的にすり合わせるなど、通常とは異なる進行上の工夫が必要だった」と、制作の裏側を明かした。

■TBSテレビ:視聴者を「ファン」へ進化させる番組イベント 『ラヴィット!ロック』が生む「熱狂」

TBS・青木伸介氏

TBSテレビ・青木氏は、朝の情報番組『ラヴィット!』のIPを基に開催される音楽イベント『ラヴィット!ロック』を題材に、番組イベントが持つ特有の価値と体験の提供について語った。

国立代々木競技場第一体育館で3年連続開催された同イベントは、出演アーティスト発表前のイベント告知段階でチケット申込が殺到するほどの人気。応募倍率は17倍に達し、ステージがほとんど見えないと明言された『見切れ席』ですら完売するほどだという。

「番組の熱量は日々の視聴率の数字だけでは測れないが、イベントを通じてどれだけのファンに支えられているかを目の当たりにし、視聴者が『ファン』に進化していく熱量を可視化できる」と、青木氏はリアルイベント開催の意義を強調。「協賛企業も単なるスポンサーではなく、共にイベントを創り上げる仲間として一体感を共有できるメリットがある」と述べた。

「テレビ番組のイベントは、歴史を重ねてブランディングされる一般の興行とは異なり日々の放送がその積み重ねであり、ブランディングに繋がっているため、スタート時点から高い熱量を持つ」と青木氏。「番組と視聴者がイベントを介して横で繋がり、熱狂的なエンゲージメントが生まれる」と力説した。

テレビ朝日・高石氏から「なぜトークショーなど他の選択肢ではなく音楽イベントなのか」と問われた青木氏は、「会場との一体感を最も生み出せるのが音楽である」と回答。『ラヴィット!』で多くのアーティストの生ライブを放送し、音楽と親和性が高かった点を挙げた。

さらに青木氏は、「『レギュラー陣が本気でチャレンジする姿を届けよう』というMC・川島明さんの想いが、現在のイベントの根幹にある」と強調。「番組発IP」だからこそ生み出せる唯一無二の価値を示した。

■テレビ東京:「セグメントマスメディア」社会実装としての『シナぷしゅ』

テレビ東京・飯田佳奈子氏

テレビ東京・飯田氏は、自身が統括プロデューサーを務める番組『シナぷしゅ』の事例を「セグメントマスメディアとして最大出力」と題して紹介した。

『シナぷしゅ』は0〜2歳児という非常に狭いターゲットに特化しながらも、番組認知率は全国の親世代で85%超という驚異的な広がりを見せている。その背景には、地上波放送だけでなく、放送直後にコーナーごとの切り分け動画や長尺のまとめ動画をYouTubeで配信するなど、親子の視聴スタイルに徹底的に寄り添った多角的な展開があるという。

「『シナぷしゅ』はテレビ東京の100%自社IPであるため、商品化やコラボレーションの意思決定が迅速に行えるフットワークの軽さが強み」と飯田氏。番組が抱える多彩なクリエイター陣を活かし、2D・3Dアニメやクレイアニメなど、クライアントの要望や商材に合わせた最適な表現のインフォマーシャルを多数制作していると語った。

「森永乳業との協業では、CM提供やインフォマーシャル制作に留まらず、商品パッケージへのキャラクター起用、販促キャンペーン、さらには企業のポリシーを伝えるための特番制作まで、統合的なアプローチでクライアントの課題解決に貢献している」

「クリエイティブにおいては、情報をたくさん詰め込むというより、0〜2歳児のみなさんにとにかく気になってもらう、好きになってもらうことを重視している」と飯田氏。「これにより、言葉を話す前の子どもがスーパーの店頭で商品を指さす、という購買行動に繋がっている」と述べた。

日本テレビ・平岡氏から「セールス時のアピールポイント」を問われた飯田氏は、「『私たちはコンテンツ作りではなく、社会を動かしている』という“哲学”を熱弁している」と回答。『シナぷしゅ』の、社会的アクションとしての意義に踏み込んだ。

「少子化が進む日本においては、クライアントと共に乳幼児業界全体を盛り上げるという大きなビジョンを共有することが最も重要」と飯田氏。「単にコンテンツを売るのではなく、『私たちでこの日本の乳幼児業界を盛り上げましょうね』という目線で提案することで、深いパートナーシップを築いている」と述べた。

■フジテレビ:誕生52年「ガチャピン・ムック」、レジェンドIPの多角化と未来

フジテレビ・臼田玄明氏

フジテレビ・臼田氏は、誕生から52年を迎える国民的キャラクター「ガチャピン・ムック」の多角化展開について語った。

「『ガチャピン・ムック』は『挑戦・友情・応援』をコンセプトとしており、全世代で8割以上、特に30代女性では98%という圧倒的な認知度を誇る。この強力な認知度をさらに進化させ、よりファンを増やしていくことが現在のテーマ」

「近年はSNSにも力を入れ、YouTubeの登録者数が75万人を突破したほか、TBSテレビ『ラヴィット!』への出演など、局の垣根を越えた活動も積極的に実施している」と臼田氏。

『ポンキッキ』シリーズが持っていたアート的な側面を活かし、様々なアーティストとのコラボも展開しており、近年では大阪・関西万博のマスコットキャラクター「ミャクミャク」と共演するなど、幅広いコラボレーションを実現していると述べた。

「広告展開面でも『ガチャピン・ムック』は活躍している。『年齢は5歳』というキャラクター設定上、アルコールやギャンブル関連は除外しているものの、UQ mobile、わかもと製薬など、数多くの企業CMで活躍している」

臼田氏は、ライセンスビジネスに特化した専門会社「フジ・コンシューマ・プロダクツ」が設立されたことにも言及。「“空中戦”(コンテンツ展開)に対する“地上戦”として、ファッションなどを含めた商品化を強化し、キャラクターの魅力を再認識してもらう機会を増やす」と、展望を述べた。

テレビ東京・飯田氏から「最終到達地点はどこか」と問われた臼田氏は、「(ガチャピン・ムックを)100年愛されるキャラクターにしたい」と力強く回答。「国内ではイベントや映画など複合的な展開を、将来的にはアジアを中心とした海外展開も視野に入れている」と壮大な目標を語ると、飯田氏へ「いつか(『シナぷしゅ』とも)コラボレーションさせてください」と呼びかけた。

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