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2020年の動画視聴時間は大幅増、コネクテッドTVの存在感が顕著に!ブライトコーブ メディアカンファレンス レポート~前編~

編集部 2021/4/9 07:00

2004年に米国で設立され、2008年から日本での事業を開始した、ビジネス向け動画配信プラットフォーム提供に従事するBrightcove Inc.(以下、ブライトコーブ)は、この度ブランド刷新を実施し、3月16日に同社のポジショニング、方針、戦略および新製品やロードマップを発表するメディアカンファレンスを行った。

登壇したのは本社CEOのジェフレイ氏、日本法人代表取締役社長兼本社Senior Vice Presidentの川延浩彰氏、Marketing Managerの大野耕平氏、Director Of Professional Serviceの国谷俊夫氏。動画サービスや新商品のみならず、同社独自のデータを用いた動画市場の動向など、示唆に富んだ内容となったカンファレンスの模様を、前後編にわたりレポートする。

■動画市場の成長トレンドは、コロナ禍が過ぎ去った後も変わらない

ブライトコーブは、昨年の決算で1億9700万ドルの収益を記録し、世界70カ国3,330の顧客にサービスを提供する。「世界中のダウンストリームの2%は弊社のプラットフォームを介して配信されています」(大野氏)と言うように、インターネット上での規模感は非常に大きい。世界13カ国に拠点を展開し、従業員数は約600人。同社は業界のリーダーとして、テクノロジー&エンジニアリング・エミー賞を受賞するなど、さまざまな分野で実績を残している。

同社CEOのレイ氏は、THE POWER OF VIDEO(動画のチカラ)のダイナミズムが変わろうとしていることを強調する。「以前は放送局が動画をコントロールしていました。しかし最近では、動画を観る方々が、いつ、何を、どこで観るのかを選べるのです」と、視聴者やユーザーが動画を観るスタイルを決められる時代であると指摘。動画は物語を伝えることのできる唯一無二の伝達手段であるとし、「新しいダイナミズムにおいては動画で他人とコミュニケーションができ、そのストーリーをシェアする役割を担っています」と説明を加えた。

ブライトコーブは「拡張性の高い、安全で信頼性のあるプラットフォーム」を名だたる企業に提供している。レイ氏はフォードやマクドナルドジャパンの事例を紹介し、加えて今年はオンライン開催で復活したSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト、音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模イベント)の公式動画配信パートナーとなり、650時間のコンテンツを5つのチャンネルでリアルタイム配信を行ったことを報告した。

そしてレイ氏は、2020年の動画市場は前年を大きく上回ったことに触れ、「この成長はコロナ禍が収束した後でも進んでいくでしょう」と語った。

また同社は「多様性を持つブランドリーダーとしてグローバル展開を行い、我々のプラットフォームはイノベーションとエコシステムを推進していく」という見通しを示し、「特に日本市場には特化して注力していく」と力を込めた。

■動画視聴時間は大幅増。コネクテッドTVの存在感が際立つ

続いてブライトコーブ日本事業の責任者である川延氏が、同社によるVideo Index Report 2020 Global Dataの数字を紐解きながら、日本における動画業界の動向を紹介した。同レポートによると、2020年のニュース動画の視聴数は50%増、視聴時間は48%増となった。

一方でスポーツ動画の視聴回数は減少しているものの、視聴時間は58%の増加を記録している。そして小売・ECに関わる動画の視聴数は332%増、視聴時間は176%増と、大幅に増えていることが明らかにされた。

川延氏は「特にリテールのカテゴリーにおいて、コロナ禍での購買活動がオフラインからオンラインに急速にシフトし、そのオンラインの購買活動の中でも動画がいかに重要なパートを占めているのかが数字から分かります」と述べた。

続いて、2020年でもコロナ禍による影響が最も厳しかった4~6月におけるデータが披露された。まずは動画尺別視聴デバイスシェア。デバイスをPC、コネクテッドTV、スマートフォン、タブレットとし、コンテンツの長さを0~1分、2~5分、6~20分、21~40分、40分以上の5つのカテゴリーに分けて、シェアを示したものだ。尺が短いカテゴリーではスマートフォンが、長くなるにつれてコネクテッドTVの存在感が高いことが伺える。

コネクテッドTVとは、スマートテレビやApple TV、Fire TV、あるいはゲームコンソール等を介してインターネットに接続されているテレビデバイスを指す。デバイス別で見た動画視聴数増加率では、2020年にコネクテッドTVの増加率が群を抜いて高いことも、同社データによって明らかになった。加えて、視聴完了率も他のデバイスに比べてコネクテッドTVは高い割合を示している。

■コネクテッドTVは、動画戦略において重要な存在になる

この背景を川延氏は、「コネクテッドTVはリビングルームに置かれているケースが多く、リラックスしてコンテンツを楽しむケースが多いと考えられ、必然的にコンテンツを長く楽しむことができると結論づけることができます」と解説した。

リビングルームのソファで長時間にわたりコンテンツを楽しむことを、同社では「リーンバック エクスペリエンス」と呼び、その状態そのものがコネクテッドTVの視聴完了率を高めているのだと言う。

川延氏は、「コネクテッドTVは、今後も現在のトレンドが確実に続き、シェアが高まってくると我々は予想しています。動画ビジネスにおいて、今後の動画戦略を練るうえで、重要なデバイスグループになってくると考えています」と、リビングルームでインターネットを介してコンテンツを楽しむことが、今後注目するべき体験であると訴えた。

後編では引き続き、ブライトコーブのビジネス構築や製品ロードマップ、新たなサービスについての発表が行われたカンファレンスの模様をレポートする。