左から)TVer中川氏、ADKMS大川氏、電通大島氏、博報堂DY梅本氏

02 JUL

急成長するコネクテッドTV市場 TVerの視聴比率も昨対比3倍超に〜TVer Biz Conference 2021レポート(中編)

編集部 2021/7/2 10:00

株式会社TVer(以下、TVer社)のオンラインカンファレンスイベント『TVer Biz Conference 2021』が、2021年6月9日に開催。現在の民放公式テレビポータル「TVer」(以下、TVer)サービス概況をはじめ、昨年11月より開始した「TVer広告」の最新トピックなどが発表された。

前編では、現在の「TVer」のサービス概況についてのプレゼンテーションを中心に紹介した。中編となる本稿では、トークセッション「成長するコネクテッドTV市場 -広告活用の展望と課題-」の模様をレポートする。

TVer、ユーザー増加が加速で月間再生数1億8305万回到達 サービス認知率は63.2%に〜TVer Biz Conference 2021レポート(前編)

■急成長するコネクテッドTV市場、TVerの視聴比率も昨対比3倍超に

セッション前半では、TVer社 広告営業部 渉外グループ・中川卓也氏が、急速な勢いで拡大するコネクテッド(ネット結線)TV場の現状をプレゼンテーションした。

株式会社TVer 広告営業部 渉外グループ・中川卓也氏

「電通報」のデータによると、テレビのネット接続率は2019年から2020年にかけて、41.6%→50.7%と大幅に増加。動画配信サービスの視聴デバイスにおいてもテレビデバイスの割合が20%→23%に増加しており、国内におけるコネクテッドTVの広告市場規模の増加を裏付ける。

中川氏は、TVerにおけるコネクテッドTV対応の現状についても紹介。今年4月にはJ:COM(※運営会社は7月1日よりJCOM株式会社に社名を変更)のSTB(視聴端末)新機種リモコンへの「TVerボタン」が搭載されたほか、今年6月にはFUNAI製4Kテレビにおいて、過去番組表からTVerへのリンク機能が搭載予定という。

「TVerテレビアプリ」専用ボタンがテレビリモコンに初搭載!「J:COM LINK」新機種に対応

TVerのUB数においては、「テレビデバイスが昨対比4倍に増加し、PCを抜く月もある」と中川氏。デバイス別のUB割合についても、昨年2月時点での7.5%から今年2月は22.7%と大きく伸長し、「コネクテッドTVが非常に存在感を増してきている」と語った。

TVer社では、こうしたコネクテッドTVの普及に伴い株式会社インテージ、青山学院大学と、インターネット接続機能を持つスマートテレビに代表されるコネクテッドTVの影響や効果に関する共同研究も開始している。

TVer、インテージ、青山学院大学とコネクテッドTVの影響や効果に関する共同研究開始

■コネクテッドTVで「視聴時間は増える」。同時に「視聴形態の変化に注目すべき」

セッション後半では、広告媒体としてのコネクテッド(ネット結線)TVの展望、課題についてディスカッション。

パネリストとして、株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ メディアビジネスセンター メディアビジネス推進本部 メディアビジネスアドバンス局 局長・大川英明氏、株式会社電通 第1統合ソリューション局 マーケティングプランニング5部 部長・大島聡氏、株式会社博報堂DYメディアパートナーズ 統合アカウントプロデュース局 局長代理 兼 AaaSアカウント推進2部 部長・梅本翔太氏が登壇した。

左から)ADKMS大川氏、電通大島氏、博報堂DY梅本氏

「CTV(コネクテッドTV)でメディア視聴行動はどう変わるか」という議題については、「地上波だけで見ていた時間より、(テレビデバイスの)視聴時間が増える可能性すらあるのではないか」(大島氏)、「スマホなどの『1:1視聴』から、テレビデバイスの前で視聴する『1:N視聴』を考慮したマーケティングになる」(梅本氏)といった意見が交わされた。

「(TVコンテンツへの)接触の入り口がCTVで動画としてもあるという点が、テレビ放送にプラスの効果を与えるのではないか」と大川氏。その一方で「可処分時間のなかで(テレビ放送以外の)動画を見ることが習慣化し、マイナスの影響となるかもしれない。テレビ放送の視聴のされ方がどう変わっていくのか、今後注目すべき」と語る。

「コネクテッドTVにおけるマーケティング活動で重要になることは」という議題については、「ユーザーの生活の中へ、いかにストレスなく溶け込んでいくかが重要」(梅本氏)、「出会い方そのものが多様化している。いいものをどう『いい』と伝えるかが重要」(大島氏)など、ユーザー体験の設計や、テレビが持つ偶然性を重視する意見が。

また、「コネクテッドTVについては、テレビ放送との相乗効果も期待できる点が重要になってくる」(大川氏)と、既存メディアとの連携を重視する意見があがった。

■「強制視聴」に対する配慮は必要

「コネクテッドTVに広告を配信する際のポイント」という議題では、大島氏が「マーケターから見た重要な点」として「デバイスの横断や他メディアとの複合的なリーチ、態度変容などのメジャメント」「コネクテッドTVの持つ専念視聴性を踏まえ、ネガティブさを与えない体験設計」を挙げ、「『いい体験』としてクライアントのサービスをよく見せるにはどうしたらいいか、しっかり設定しなければいけない」と強調する。

電通 大島聡氏

「広告がスキップできない状態で提供されている現状において、(広告が)コンテンツの価値と相まって評価をいただいている」と大川氏。コネクテッドTV広告におけるクリエイティブルールの重要性について言及しつつ、「強制視聴ならではの(ユーザーに対する)配慮などが、広告へのイメージ醸成に大きく寄与するという視点も必要」と慎重な姿勢を見せる。

「テレビモニター(での視聴)だから、(時間の)長いものに耐えうる」という意味では必ずしもないのではないか」と梅本氏。「スマホだとすぐスキップできるが、テレビの場合はリモコンがどこにあるかわからず、『まあいいや』と流してしまう、というユーザー視点もあるはず」とし、「そこを正しく判断してコミュニケーション設計しなければ、ミスリードを招きかねない」と投げかける一幕も。

大島氏も、「長尺のCMやブランドムービーを展開する場合でも、『見せる』というより『興味を持ってもらい、積極的に見てもらう環境をどう作るか』という設計が重要」と意見を述べた。

■コネクテッドTV広告の課題は「メジャメント」と「不快にならないユーザー体験」

「コネクテッドTVを活用したマーケティング活動、今後の課題は」という議題では、「メジャメント・効果測定とターゲティング」と梅本氏。

さらに「1インプレッション、1ビューの価値の定義が必要」といい、「地上波テレビやスマートデバイスの広告と比べてどのような価値を持っているのか標準化していくことは、効果測定・ターゲティングに紐づく課題として起きそうだ」と語る。

博報堂DY 梅本翔太氏

「一番重要なのはユーザー体験」と梅本氏。「『なんでこの広告が表示されるんだろう』というネガティブな印象を抱かせるということは、全てのサービスを横並びで見ている生活者的には離脱の要因になる」といい、「ユーザーにどう楽しんでもらうか、不快な思いをさせずにメッセージを届けていくかということが、コネクテッドTVを活用していく上ですごく必要なのではないか」と語る。

「ショートフォーマットのコンテンツ投入も、視聴の広がりにはすごく貢献するのではないか」と大川氏。

ADKMS 大川英明氏

大島氏も「可処分時間のバリエーションを考えたとき、『やっぱり見たい』と思えるコンテンツがそこにあるかが重要になってくる」といい、「消費者が広告主と一緒に制作するブランドコンテンツなど、自由度、開放感のあるコンテンツプラットフォームとして、どこまで(新たな試み)を受け入れられるかがが課題」と述べる。

「いろんなコンテンツがあふれる中で、どのコンテンツを見るために自分の時間を割くかというのが一番重要」と梅本氏。「みんなが見たいコンテンツがそこにあれば、そこに人は当然集まる。そこを広告的にどう使うか、どんな体験に変えていくかを考えていくことが望ましいのではないか」と語った。

続く後編では、2020年よりスタートした「TVer広告」におけるトピックスと開発ロードマップについての発表の模様をレポートする。

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