BEAJシニア・アドバイザー、マチュー・ベジョー氏

26 NOV

BEAJマチュー・ベジョー氏に聞く、日本の海外PRの課題は市場変化への対応力【TIFFCOM2021レポートⅣ】

編集部 2021/11/26 09:00

日本で唯一の国際コンテンツマーケット「TIFFCOM」(会期:2021年11月1日~3日)に登壇したBEAJシニア・シニア・アドバイザー、マチュー・ベジョー氏は日本の放送コンテンツPRの課題は「国際競争力の強化にある」と指摘する。モデレーター役を務めた総務省支援企画「Fresh Content from Japan日本の今を見逃すな!渾身の最新コンテンツをご紹介!」を通じて、韓国をはじめとした諸外国と比較する上で、今必要な日本のプロモーションの在り方について語った。

■バイヤーの関心度を高めるショーアップが求められる

今年のTIFFCOMで総務省支援によりBEAJ(放送コンテンツ海外展開促進機構)が企画したセミナー「Fresh Content from Japan日本の今を見逃すな!渾身の最新コンテンツをご紹介!」では、日本の放送コンテンツの海外展開促進活動の一環として、海外バイヤー等に向けて最新情報が発信された。ラインナップされた番組はドラマ2作品『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBSテレビ)、『顔だけ先生』(東海テレビ)、フォーマット2作品「錬金バトルKASEGE」(日本テレビ)、「THE完全犯罪」(読売テレビ)、旅番組1作品『2人で5万円!ニッポン満足旅』(関西テレビ)の全5作品。

『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(C)TBS
『顔だけ先生』(C)東海テレビ
『錬金バトルKASEGE』(C)日本テレビ
『THE完全犯罪』(C)読売テレビ
『2人で5万円!ニッポン満足旅』(C)関西テレビ

モデレーター役を務めたBEAJシニア・シニア・アドバイザーのマチュー・ベジョー氏は改めてこの作品群についてコメントした。


「TIFFCOMマーケットにはドラマやアニメのバイヤーが多く参加しています。そんななかで、BEAJセミナーはバランス良くドラマからゲームショーなどを揃えました。例えば、日本テレビのフォーマット作品『錬金バトルKASEGE』はビジネスサバイバルショーの中にタイムリーな要素を盛り込んだ関心度が高いものです。またTBSの『TOKYO MER~走る緊急救命室~』はディズニーが初めて海外に配信した日本で制作されたドラマとして話題性が大変高い作品です。バイヤーの関心度を高める上で必要なラインナップが揃っていたと思います」。

TIFFCOMセミナー「Fresh Content from Japan日本の今を見逃すな!」に登壇したマチュー・ベジョー氏(左)と日本テレビ海外事業部セールス担当の神﨑萌絵氏

一方、国際マーケットの場で韓国など強力なプロモーション展開を進めている国も多く、残された課題もあるという。

「国際競争力を考えた上で、キー局の作品ラインナップを強化する必要があったと感じています。国際マーケットにおいて韓国がとても素晴らしいプロモーション展開を行っていると思うのは、地上波キー局からローカル局、制作会社に至るまで、海外輸出を見据えた強力なラインナップを揃えているからです。さらに、MBC『ザ・マスクド・シンガー』やCJ ENMの『I can see your voice』、そしてNetflix で1億4000万以上の世帯に視聴された『イカゲーム』など国境を越えて世界で成功している作品が韓国にあることを伝え、注目を集めています。日本にもドラマやアニメ、フォーマットなど国際的に勝負できる作品がありますから、より強力なコンテンツをショーアップしてプロモーションを行うと、効果的だと思うのです」

■日本の競争相手の制作力も開発力も上がっている

世界のテレビコンテンツ業界に精通するベジョー氏は、現在ドキュメンタリーの国際マーケット「Sunny Side of the Doc」戦略&開発ディレクターなども務め、過去にはフランスの映像コンテンツを世界に推進するフランス最大の組織TV France Internationalのエグゼクティブ・ディレクターを長年務めた人物である。業界の変遷を間近で見続けてきた立場から「世界のコンテンツ市場の変化に日本も対応すべき」と指摘する。

「世界のコンテンツ市場は急速に変化しています。韓国だけでなく、ロシアやタイなど注目される国も増えています。国際化が進むなか、各国の制作力や開発力のレベルもスピードも上がり、10年前は国際市場で勝負できなかった国が台頭しています。つまり、日本の競争相手の能力も上がっているのです。日本は企画力が強みだと思いますが、プロデュース実行力において世界の変化に対応できているかどうかというと、断言できないと思います。撮影や音響、キャスティングなど、これまでと同じやり方なのではないでしょうか。同じクオリティのままでは、世界の変化に対応できません」

厳しい意見ではあるが、国際コンテンツ市場から日本を見た客観的で的確な問題点である。では、日本政府の支援を受けて放送局を中心に行っているプロモーション活動全般についてはどのように見ているのか。

「国際マーケットにおいて日本が効果的にプロモーション活動を行っていたと思うのは、官民合同イベント『トレジャー・ボックス・ジャパン』です。世界各国からバイヤーやプロデューサーが集まる世界最大級のフランス・カンヌのコンテンツマーケットMIPTV&MIPCOMの場を活用しながら、恒例企画として定着し、注目を浴びていました。国際ドラマフェスティバルin TOKYOがMIPCOMとの連携事業として継続している『J-Creative Party』も多くのバイヤーの関心を集めていると思います。今年10月にはカンヌ現地で国際ドラマフェスティバルin TOKYO主催の『MIPCOM Buyers’ Award for Japanese Drama』が行われ、私も出席しましたが、プロモーション活動において可能性を感じるものだと思いました」

最後に世界のコンテンツ市場において国際競争力を高めるために求められるポイントを聞いた。

「国際市場のニーズに合わせた開発と制作はもちろんのこと、組織力のよるプロモーションも海外輸出を強化する上で非常に大事なことです。加えて、マーケティング戦略も必要です。先を見据えたビジョンを国内で共有していくと、世界の変化に対応することができるのではないでしょうか」

ドラマ、アニメ、バラエティ、ドキュメンタリーと各ジャンル共に国際化が進み、競争相手のプロデュース力はますます向上している。ベジョー氏の指摘に納得する部分は多い。様々な視点から日本の課題点を洗い直すことで、改善への道が開かれるのではないか。

TIFFCOMオンラインセミナーは11月30日まで配信中。

総務省支援で初の試み、コンテンツ海外展開促進3団体がTIFFCOMと連携強化【TIFFCOM2021レポートⅠ】

日本の今を見逃すな!TBS『TOKYO MER』と東海TV『顔だけ先生』の海外PR展開【TIFFCOM2021レポートⅡ】

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