朴泰輝氏

21 DEC

コネクテッドTV利用実態調査からみるテレビ放送・テレビデバイスの価値~電通主催セミナー(#2)後編

編集部 2021/12/21 09:00

株式会社電通は、「RADIO AND TELEVISION IMPROVEMENT 2021」と題したセミナーを11月10~12日に実施。4編にわたって開催されたセミナーのうち、本稿では11月10日に行われた#2『データ革新により進化する ラジオ・テレビの最新ソリューション』の模様を、前後編に分けてレポートする。

【前編】データ革新により進化するラジオ・テレビの最新ソリューション~電通主催セミナー(#2)前編

本セミナーで紹介されたソリューションから、後編では「次世代テレビの重要領域のひとつ、コネクテッドTV利用実態調査からみるテレビ放送・テレビデバイスの価値」を取り上げる。登壇者は、株式会社電通 ラジオテレビビジネスプロデュース局 データ推進部長の朴泰輝氏。

■テレビ局の放送とYouTubeの差はなくなってきているという調査結果

朴氏はまず、「テレビでOTTサービスの利用を可能にするデバイスやスマートテレビ、加えてFire TVやChromecastなども含めコネクテッドTVと呼びます」と、コネクテッドTVの定義を示すことから発表を始めた。

そして同社が8月に行った、「コネクテッドTVとOTTサービスについての意識調査」の概要を説明。

このインターネット調査は、「近年のOTTサービス普及とコネクテッドTVの利用浸透を鑑み、テレビ局の放送と各種OTTサービスの利用実態、さらにはコネクテッドTVでの各種OTTサービスの利用実態を把握する」ことが調査の目的となる。

この調査の結果を受け、「利用頻度」に対する回答を分析すると、テレビ放送が個人全体、若年層(Teen+MF1)でも最も高く、次に高いのがYouTubeとなった。「テレビ放送はほぼ毎日観ていて、YouTubeは半数程度が毎日観ています。若年層に注目すると、テレビ視聴が若干下がり、YouTubeが上がっています」と解説した。

「利用時間」に関しては、テレビ放送が個人全体、若年層ともに最も長いという結果が出ている一方で、若年層ではテレビ放送の利用時間は短くなり、YouTubeは長くなっている傾向が見られた。

次に「利用頻度」と「利用時間」の平均値をサービスごとに可視化できるグラフを提示し、朴氏は「若年層においては、YouTubeがテレビにほぼ近い力を持ってきている」と分析した。

続いてサービスの間口と奥行を示す「サービス利用率×1週間当たりの利用時間(平均値)」のグラフを提示した。ここでは、「個人全体ではテレビ放送が最大で、YouTubeは他のOTTサービスより間口が広い。若年層ではテレビ放送を上回り、奥行でもテレビ放送と同水準にまで迫っている」ことが明らかになった。

これらの分析から朴氏は改めて、「利用者という面では、ほぼテレビとYouTubeの差はなくなってきている」という見方を示した。

■長時間コンテンツはテレビとの相性が良い。コネクテッドTVの視聴は増えると見込む

「視聴デバイス」についての調査では、Amazonプライム・ビデオ、Netflix、Huluといったサービスにおいて、30%前後がテレビを使って視聴されていることが示された。TVerは約20%となっているが、「コンテンツが長いサービスはテレビと相性が良い」ことが読み取れると朴氏は分析した。

「デバイス別」では個人全体、若年層ともに、コネクテッドTVを介してサービスを利用する方が、PC/SDよりも頻度と時間が長くなるという傾向が見られた。

唯一、YouTubeだけがコネクテッドTVの頻度が低く出ているが、「PC/SDでの視聴が浸透している結果」だと朴氏は言い、「今後、コネクテッドTVの視聴はどんどん増えていくと考えられます」という見通しを語った。

「専念視聴・ながら視聴の比率」においては、YouTubeやTVerといった配信サービスはPC/SD・コネクテッドTVともに、専念視聴率が高く、あまり差がないことが見て取れる結果となった。

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「共視聴・ひとり視聴の比率」では、PC/SDでは一人で観ている人がほとんどだったが、同じ配信でもコネクテッドTVで観る時には、約半数が誰かと一緒に視聴していることが明らかになった。

■「能動メディア」「共視聴・長時間」のコネクテッドTVの可能性の高さが顕著に

調査結果の発表を終えた朴氏は改めて、「若年層においてYouTubeはテレビと同等の観られ方、時間を費やすようになってきている。コネクテッドTVで配信サービスを利用した場合に多くの時間を費やす」といったポイントを強調した。

以上の調査結果などを踏まえ、朴氏はテレビ放送やデバイスの価値についてまとめた。

テレビ放送は「受動メディア」であり、「共視聴・長時間」で観られ、「3up(Scale・Speed・Interest)」という広告効果があるという。一方でコネクテッドTVは「能動メディア」であり、「共視聴・長時間」で観られ、「ターゲティング」ができるのだという。

そして最後に、コネクテッドTVの広告調査について明らかになったことを次のように発表した。

「TVerの協力を得て、難しいとされてきたコネクテッドTVの広告計測を可能にすることができました。その結果、TVerのPC/SDでの広告接触と比較して、同等の広告認知を獲得できていることが分かりました。そして何よりも驚いたのが、ブランド認知や意向、興味関心といったスコアが、PC/SDの接触よりも150%、200%といった効果が得られたということが、実際の接触調査で分かりました」

 

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コネクテッドTVは、大画面でくつろいで観るという視聴態度が多く、この広告効果につながっているのではないか、という考察を語って朴氏の発表は終了した。

【前編】データ革新により進化するラジオ・テレビの最新ソリューション~電通主催セミナー(#2)前編