04 FEB

「メタバース」製品も登場「CES2022」で見た“次世代テレビ”まとめ

編集部 2022/2/4 09:30

2022年1月5日から8日にかけて、米ネバダ州ラスベガスで世界最大級のエレクトロニクス関連見本市「CES 2022」が開催された。2021年開催の「CES 2021」は新型コロナウイルスが猛威を振るったことで完全オンライン開催になったが、CES 2022はオンラインとオフラインでの同時開催となった。

昨年のCESまでに出展されたテレビは、液晶テレビのLEDバックライトを細分化して敷き詰めることでより細かな部分駆動を可能にした「ミニLEDテレビ」や、LEDを画素ごとに敷き詰めてすべての画素をコントロールする「マイクロLEDテレビ」など、進化した液晶テレビが注目の中心になってきた。今回のCES 2022は、改めて有機EL(OLED)テレビが注目されることになった。

■サムスンが明るさが最大200%に向上した新型有機ELパネルを発表

有機ELテレビはバックライトにカラーフィルターを組み合わせた液晶テレビとは違う自発光デバイスのため、液晶テレビに比べて圧倒的に暗部の表現性が高く、高コントラストを実現できるのが大きな利点だ。画素ごとに明るさをコントロールするマイクロLEDテレビは有機ELと同等の表現力を持ち、そこにより近付けたのがミニLEDテレビという位置付けになる。

しかし有機ELテレビはピーク輝度(最大の明るさ)が液晶テレビに比べて低い(暗い)というのが最大のウイークポイントだった。最上位クラスの液晶テレビの場合、ピーク輝度が1000ニト(明るさの単位)を超えるモデルも少なくないが、有機ELテレビの場合は700ニト程度と言われている(一般的に仕様は公開されていない)。

暗い部屋で映画などを楽しむのにはぴったりなのだが、明るいリビングなどでは液晶テレビよりもちょっと暗めに感じてしまう……というのが有機ELテレビの弱点だった。

それに対して大幅にテコ入れしたのが、今回のCES 2022に登場した新有機ELテレビというわけだ。

最も注目したいのが、サムスンディスプレイが発表した「QD(Quantum Dot) display」だ。

公式サイトより

これは、光エネルギーが最も強い青色を光源(バックライト)として用いた有機ELディスプレイで、最上位クラスの液晶テレビに引けを取らない、1000ニトレベルの輝度を実現しているという。また、色純度が高いことから従来の液晶ディスプレイに比べて約1.5倍の色域、さらに自発光デバイスのため100万:1ものコントラスト比も実現できるとのことだ。

Quantum Dot Technology on Samsung monitors

QD displayはソニーがCES 2022で発表した「BRAVIA XRシリーズ」の最上位4K有機ELテレビ「A95K」に新有機ELパネル「QD-OLED」として搭載されている。BRAVIA XR A95Kは従来モデルから色の明るさを最大200%向上させたとしている。

新しいBRAVIA XR テレビの発表

また、シリーズ中最も広色域なカラーパレットによって自然な色合いを細部にわたって再現する「XR Triluminos Max」も備えている。

■LGディスプレイの有機ELパネルは約30%の輝度アップを実現

有機ELテレビで世界シェア1位を誇るLGも負けてはいない。LGは白色OLED(有機ELパネル)とカラーフィルターを組み合わせた「WRGB OLEDパネル」によって技術的に困難だった有機ELパネルの大型化に成功した。しかし前出の通り、バックライトを搭載する液晶パネルに比べて明るさで及ばないという弱点があった。

今回のCES 2022でLGディスプレイが発表したのが、その弱点を拭い去った「OLED EX」だ。水から抽出した「重水素化合物」と、独自開発の「パーソナライズドアルゴリズム」に基づいた「EXテクノロジー」を搭載しており、従来の有機ELパネルに比べて輝度を最大30%高めることが可能になったという。

公式サイトより

リリース

機械学習技術に基づいた「パーソナライズドアルゴリズム」は、個人の視聴パターンを学習した上で8K有機ELディスプレイをベースに最大3300万個の有機ELの使用量を予測し、ディスプレイのエネルギー投入量を正確に制御して、再生中の映像コンテンツのディテールや色をより正確に表現するとのことだ。

LGディスプレイは2022年第2四半期以降に韓国と中国の有機EL生産工場で生産するすべての有機ELテレビ用ディスプレイにOLED EX技術を搭載していくとしている。

ここ数年、液晶テレビ(ミニLED搭載)、マイクロLEDの動向が注目され続けてきたが、薄型テレビの世界市場をけん引するサムスン、LGの両社がしのぎを削ることで、今後日本メーカーから登場する有機ELテレビの最新動向も注目したいところだ。

■“元”Facebookの本格参入で注目される「メタバース」製品も登場

米Facebookが2021年10月に社名を「Meta(メタ)」に変更し、「メタバース」(VR<仮想現実>などを含めた3次元の仮想空間やそれに対応するサービス)に本格的に参入すると発表し、世界的に大きなニュースになった。

そんな中、CES 2022で注目された製品の一つが、パナソニックの子会社であるShiftall(シフトール)が発表したメタバース向けのVRグラス「MeganeX(メガーヌX)」だ。

元々パナソニックがCES 2020で4K相当の解像度を持つVRヘッドセットを参考出展したが、MeganeXは、同社の100%子会社であるShiftallが、それをベースに開発。SteamVR対応ヘッドセットで両目5.2Kの有機ELディスプレイを搭載している。

Metaが製造販売する「Oculus Quest」シリーズのようなスタンドアローン型VRヘッドセットではなく、パソコンなどに接続して使用するタイプになっている。とはいえ、従来のVRヘッドセットに比べて軽量化が図られており、装着感においてはかなり向上していると思われる。

VRヘッドセット「MeganeX」公式サイトより

「メタバース」というキーワードはテレビ番組などでも聞かれるようになった。既に産業界では活用が進んでいるものの、今後どこまで一般的なエンターテインメントの世界や家庭にまで浸透するかどうかはまだまだ不透明だ。とはいえ、現在世界的に注目されているテクノロジーであることは間違いない。テレビに取って代わるのか、それとも違う世界観に浸れる機器やサービスとして定着していくのか。「メタバース機器」にも今後注目だ。