左から)TVer伊藤有弥氏、KINTO小池瑛之氏、コーセー中村豪氏

08 JUN

広告主が「TVer広告」に感じるメリットと期待 〜TVer Biz Conference 2022レポート(第2回)

編集部 2022/6/8 08:00

株式会社TVer(以下、TVer社)のオンラインカンファレンスイベント『TVer Biz Conference 2022』が、2022年4月27日に開催。同月1日にフルリニューアルを実施した民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」のサービス概況をはじめ、急激な成長を続ける「TVer広告」の戦略方針、広告主や放送局の担当者らを交えたトークセッションなどが行われた。

TVer社からは、同社代表取締役社長・龍宝正峰氏、取締役・須賀久彌氏、プロダクトオーナー室 室長・中島和哉氏、広告営業部長・古田和俊氏、同広告営業部・矢部怜史氏、伊藤有弥氏が登壇。司会進行役はTBSテレビの良原安美アナウンサーが務めた。トークセッションでは動画広告の活用法、リアルタイム配信の現状と今後がテーマに掲げられた。

全4回にわたるレポートの第2回となる本稿では、TVerへ出稿を行う広告主企業の担当者を招いたトークセッションの模様をレポート。動画広告の具体的な活用法と今後の展望、さらに広告主としての要望にフォーカスする。パネラーは、株式会社KINTO マーケティング企画部 主幹・小池瑛之氏と、株式会社コーセー 宣伝部 宣伝企画・PR一課 中村豪氏。モデレーターを株式会社TVer 事業本部 広告営業部 伊藤有弥氏が務めた。

左から)TVer伊藤有弥氏、KINTO小池瑛之氏、コーセー中村豪氏

■TVer広告に感じる魅力は「完視聴率の高さやアフィニティ(興味関心)データなどのターゲティング手法」

日本の直近10年における広告費の推移では、2019年にインターネット広告費がテレビ広告費を追い抜き、2021年にはマスコミ4媒体(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)を逆転。約2兆7000億円の規模へと伸長している。

インターネット広告が台頭する現在、広告主は宣伝戦略のうえで、KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)をどう設定しているのか。小池氏、中村氏は次のように語る。

小池氏KGIは、自社の乗用車サブスクリプションサービスの成約台数の増加。KPIに関してはサイト流入数やコンバージョンレート、申込件数などを指標としているほか、ミドルファネルにおけるサービスへの興味や利用意向の変化など、ブランドリフト調査によるユーザーの態度変容の度合いもKPIとして設定しています。

株式会社KINTO マーケティング企画部 主幹 小池瑛之氏

中村氏KGIは、化粧品の売り上げ。KPIはリーチ数、アスキング(聞き取り調査)ベースで算出されるブランドリフトの度合いとしています。

株式会社コーセー 宣伝部 宣伝企画・PR一課 中村 豪氏

広告主として、インターネット広告にはどのようなイメージを抱いているのか。効果検証の容易さを語る小池氏に対し、中村氏は「あくまで数あるメディアのうちのひとつ」とスタンスを示す。

小池氏マスを使ったオフライン広告と違い、インターネット広告は効果検証がしっかりできるイメージがあります。TVerへ出稿した際も、ユーザーにとって効果があった箇所とそうでなかった箇所との違いを明確なスコアのかたちで振り返ることができ、次の打ち手を定めやすいと感じました。

中村氏インターネット広告は、あくまで様々なメディアのひとつ。取り立てて特別視しているわけではなく、ニュートラルに戦略のひとつとして、目的に合わせて選んでいます。

TVerが2021年度に行った「TVer広告」のブランドリフト調査では、サービス認知、広告認知いずれも平均値レベルでリフト値が上がっている結果となった。動画広告を提供する媒体は数あるが、そのなかで「TVer広告」を選んだ決め手とは何なのか。

中村氏そもそも前提として、OTT市場は全体として態度変容が非常に良いのではないかという仮説を持っていました。視聴完了率、また視聴完了単価が非常に高く、広告媒体として非常に優れているという認識を持っていましたが、今回一番の決め手となったのは、「TVer広告」でアフィニティデータを活用した出稿ができるという点でした。

小池氏完視聴率が高く、広告スキップができないところ、さらに長尺動画が出稿可能であるという点が決め手となりました。こうした強みを持つ「TVer広告」を活用し、サービスの理解度や興味、利用意向のスコアを上げていきたいと考えています。

伊藤氏:KINTO様には2021年10月から「TVer広告」を継続的に出稿いただいていますが、2022年4月から「TVer広告」専用でクリエイティブもご準備いただいていますね。

小池氏今年4月より、「TVer広告」専用のクリエイティブを用意しています。ブランドリフト調査の結果を受けて、「問題提起」「解決手段(=サービス紹介)」「長尺でも見飽きない面白さ」の3軸に訴求するオリジナルのクリエイティブを作成し、媒体別に特化したクリエイティブの出し分けに取り組んでいます。

■興味関心ターゲティングで高いブランドリフトを実感 今後は“細分化”にも期待

欧米では先に個人情報保護に向けた規制強化が進み、日本でも今年4月に個人情報保護法が改正されている。

サードパーティCookieの規制や、iOS端末におけるIDFA(Identifier for Advertisers:広告識別子)のオプトイン化などが原因で、インターネット広告の特徴であるターゲティング手法の転換を迫られるなか、TVerでは潤沢なファーストパーティデータの保有を積極的に推し進めている。そのひとつが、ユーザーアンケートで入力された17項目のアフィニティ(興味関心)データを用いたターゲティングだ。

今回、コーセー社のベースメイクブランド「エスプリーク」にて、新製品の好意認知の獲得を目的としてTVerでの広告配信を実施。「美容」に関心を持つユーザーをターゲットとした広告配信を行い、高いブランドリフトを得ることができたという。

中村氏非接触者を100%として、TVer広告のブランドリフトの平均値が228%であったのに対し、「エスプリーク」では315%と、非常に良いブランドリフトの結果が得られました。

さらに、アフィニティデータの具体的な寄与を検証するため、「美容に関心がある」と回答したユーザーと「無回答」であったユーザーそれぞれにおいて配信を行い、その結果を比較しました。その結果、「美容に関心がある」というユーザーでは783%、「無回答」のユーザーについても589%と非常に高いブランドリフト効果が得られました。

これらの結果を踏まえ、「アフィニティデータによって、高いブランドリフトが得られるという結論が得られた」と中村氏。「このようにリフトの効果を数値として可視化できると、社内でも説得という面でも非常にありがたい材料になる」としつつ、さらなる活用への道として、メディアを横断したフリークエンシーコントロールへの期待を語る。

中村氏クリエイティブや配信面の最適化、メディア横断でのフリークエンシーコントロール、共通の指標による振り返りなどができるようになると非常に嬉しいところです。広告主としては効率が良くなりますし、視聴者にとってもネガティブな印象が減り、媒体側にとっても広告の価値が高まっていく「三方よし」を実現できるのではないかと思います。

「さらに言えば、購入という指標で広告配信の結果が見られるとなお良い」と中村氏。

中村氏は、アフィニティデータの種類についても、単なる興味関心の有無のみでなく、その度合いや志向に応じたターゲティングを求めていると語る。

中村氏デパートでハイブランドを購入される方から、ドラッグストアなどで安価な商品を購入される方がいて、「美容への関心」には程度の差があるはずです。そのあたりを細かくターゲティングできるようになれば、今後さらに個人情報の制限が増えていくなかでも活用の幅や戦略の持ち手を増やすことができ、非常に助かります。

株式会社TVer 事業本部 広告営業部 伊藤有弥氏

「たしかに趣味や興味関心の領域は、年齢とともに進化し、変わっていくもの」と伊藤氏。「商品に限って言えば、学生時代に使う化粧品の単価感と、社会人になってからのそれは変わっていく」と中村氏に同意し、「その辺りも今後検証して商品化、アップデートの必要性も模索していかなければならないと思います」と語った。

■スマホ、コネクテッドTV・・・ デバイス別に特化したクリエイティブの必要性

2022年1月時点におけるTVerの視聴デバイス構成比において、ネット結線されたテレビデバイス(コネクテッドTV)の割合は約25%に伸長。メーカー各社による対応デバイスの生産も増加し、動画市場における存在感を急速に増している。広告主として、今後の動画広告およびメディアにどのようなことを期待しているのか。

「私たちが扱うサービスのように、名前を聞いただけではイメージしづらいものにとって、動画広告の存在は非常に重要」と小池氏。「動画広告は静止画広告に比べて情報量が圧倒的に違い、ユーザーの理解度も変わってくる」といい、「コネクテッドTVしかり、さまざまなデバイスで動画広告に接触する機会が増えていければ」と希望を語る。

小池氏日本で働く人々の多くは電車で仕事場に向かう方が多いですが、ネットの通信環境によって、移動中はなかなか動画を見られないというケースも少なくありません。5Gなどのような高速・大容量の移動通信環境インフラの浸透も期待したいですが、媒体としては、少し前に話題になった音声SNSアプリ「Clubhouse」など、移動時間でも手軽に活用できるものがもっと出てきて欲しいと期待しています。

小池氏の広告事例において、伊藤氏はコネクテッドTVでの効果検証結果を紹介。昨年10月にコネクテッドTVデバイスでのサービス認知率がTVer広告接触者で上昇しており、さらに継続出稿した11月はより上昇し、継続効果が現れているという。

終盤、小池氏、中村氏はデバイスの特性を活かした広告出稿の可能性を語った。

小池氏コネクテッドTVの場合、リビングなどで複数人が同時に視聴するケースが考えられます。これまでこうした視聴環境はスコアに反映されづらい部分でしたが、今後は認知の場として大きなメリットが出てくるのではないかと期待しています。スマホとコネクテッドTVを両方使いながら、それぞれへの出稿の配分を考えていきたいと思います。

中村氏スマホとコネクテッドTVでは視聴態度の違いもありますし、特にコネクテッドTVの場合は「ながら見」されている可能性も考えられます。ある意味、こうした“受動的なユーザー”に対してどう影響を与えるかという部分は、これから考えていかなければいけない課題です。今後はスマホとコネクテッドTVそれぞれに特化したクリエイティブの作り分けなどが必要となってくるでしょう。

「デバイスごとのクリエイティブの"善し悪し"のようなところも、広告面としてはまさに今後検証していかなければならない部分と思います」と伊藤氏。「広告主様、広告会社様、媒体様、そしてユーザー様と、関わるすべての方々と一緒にグロースして、『TVer広告』をよりよいものにしていきたいです」と締めくくった。

〜テレビ局のプロが作った番組に最適なタイミングで配信〜
「TVerの運用型広告」
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