Spotify 藤井哲尚氏

06 JAN

生活に寄り添う“音”で広がるSpotify広告モデル「TVer Biz Live with Spotify」開催レポート③

編集部 2022/1/6 09:30

株式会社TVerとスポティファイジャパン株式会社の合同によるオンラインカンファレンス『TVer Biz Live with Spotify』が、2021年10月27日に開催。民放公式テレビポータル「TVer」と世界的な音楽配信サービス「Spotify」、日本と世界を代表するオンラインメディアにおける、最新の広告関連のトピックが4つのセッションで紹介された。

パート① TVer×Spotify “プロ”コンテンツの正しい広告価値

パート② 大手メディアで初導入!完全視聴の課金をスタート「TVer広告」について

パート③ 生活に寄り添う“音”で広がる「Spotify」の広告モデル

パート④ デバイスの進化で変わりゆく生活体験と広告の未来

このパート③では、スポティファイジャパン株式会社 ディレクター 広告事業統括・藤井哲尚氏によるセッション『生活モーメントに寄り添い・語りかけ・つながる 〜デジタル広告が拓く、生活の機微を踏まえた安心のコミュニケーション by Spotify Advertising』を紹介する。

■広告対象“全世界2.1億人”のSpotify、ユーザーの6割強が30代以下

全世界178ヶ国で展開するSpotifyのユーザー数は、2021年6月末の時点で3.65億人。そのうち広告の配信対象となるフリー(無料)ユーザーの数は2.1億人で、平均利用時間は1日あたり137分にのぼるという。

サードパーティーデータによると、2020年9月から2021年9月までの1年間で、MAU(月間アクティブユーザー数)は約654万から約960万と1.5倍に成長。現在、日本におけるユーザー層の6割強は30代以下で、「邦楽のさまざまなアーティストがラインアップに加わり、45歳以上のユーザーもどんどん増えている」という。

そして、音声コンテンツが生活の中にある人々の特徴として「行動的」であることをあげ、高い情報感度やソーシャルメディアとの親和性も持ちあわせていると分析。Spotifyのユーザー層は「ブランド側が、何か新しいことをしたい、何か変化を作りたいとしたときに、『最初に取り込みたい層』を多く抱えている」とアピールした。

■広告表示回数のコントロール、アドフラウド対策に重点を置くSpotify広告

続いて、Spotifyにおける広告商品を紹介。フリー(無料)会員を対象に、複数の楽曲を再生する際の切り替えタイミングを活かして、音声広告を始め、静止画や動画のディスプレイ広告を提供しているほか、予約型、プログラマティック(運用型)の購入方法が選択できるという。

また、Spotifyにおける広告枠は「アーティストの作品と同じように、オーディエンスへ届ける大事なメッセージととらえている」と述べ、広告の表示ペースは1時間あたりおおよそ6分程度に制限し、動画、音声いずれにしても、同時に2つ以上の広告が流れることはない。「広告が流れる時間は、ブランドとユーザーが結び合う『完全なブランド時間』として提供される」と語った。

また、アドフラウド(不正広告)対策についても言及。「マシンなどによる不審なログインが疑われるアカウントを排除し、適切な利用を行うユーザーのみを対象に広告の表示カウントを行うことで、適切な広告料金の請求につなげている」ほか、「グローバル基準でのブランドセーフティ基準を策定するなど、グローバルで音声メディアを代表するプラットフォームならではの動きをしている」という。

■アカウンタビリティの担保として、サードパーティーデータも活用

Spotifyでは、どのユーザーが、どの曲を、どのタイミングでどれぐらい再生したのかをはじめとした、プレイリストや時間帯、言語、ジャンルといったユーザーの利用行動データを、ファーストパーティーデータとして膨大に保持。さらにサインアップ時にはユーザーの性別や年齢をアンケートしており、「単なるデモグラ(属性)にとどまらず、ユーザーの気分や利用シーンに基づいたターゲティングが可能」だという。

その一方で、アカウンタビリティ(説明責任)の視点では、サードパーティーデータの活用も重要だと語り、「多様なメジャーメントパートナーを受け入れながら、透明性アカウンタビリティを高めていく。オンターゲットレート(意図したターゲットへのリーチ率)や広告動画の完全視聴、DCM(DoubleClick Campaign Manager:Googleが提供する広告管理・計測システム)をはじめとした広告主側のツールを通じて、実際のパフォーマンスを計測可能」と述べた。

■「聴覚による広告体験」が作り出す、高いブランドリフト効果

「Spotifyの音声広告は、音楽生活の中においてブランドのメッセージを“作品”のようにお届けする、深い浸透性を持つメッセージングであり、ユーザーのブランド認知や利用意向が極めて高い」と藤井氏。

そして、最適な出稿ボリュームについても分析。「かつてラジオ媒体で『マジック7』と言われたような効果がデジタル上でも起きている」と語り、「フリークエンシー(接触回数)6〜8回にかけて広告想起のリフトが一気に加速するため、8回の接触がもっとも効率がよい」と解説した。

そして、認知におけるインパクトや効果について「『耳から語りかけるように入ってくる』というパーソナルな接触体験、そして生活の中に浸透したプラットフォームを介して情報が伝わることのふたつが組み合わさった提供情報への信頼感がある」と語り、「感情に働きかけるという点でも音には強みがあり、リアクションや態度変容におけるパワーを持っている」と自負した。

また、藤井氏は「ニューロサイエンス(脳科学)の研究でも、聴覚による広告体験が、感情や記憶、関係性をつかさどる脳の部分に強い刺激を与えていることがわかっている」と語り、「音声広告は映像に比べて制作費が比較的安価であり、SoV(Share of Voice:競合間における自社広告への接触率)が100%である」と解説。「タイミングを見て、生活のモーメントの中でコミュニケーションでき、それによって高い認知効果や態度変容や行動喚起を行える」とアピールし、セッションを終えた。

最後となるバート④では、株式会社ビデオリサーチ ソリューション室 マーケティングソリューション部 シニアエキスパート・吉田正寛氏がモデレーターを務め、パネリストとして藤井氏とワーナー ブラザース ジャパン合同会社 映画/マーケティング本部・八木悠水氏、株式会社TVer PO室・中川卓也氏によるパネルディスカッション「新デバイスと広告のこれから 〜スマートスピーカー・コネクテッドTVなど パートナーコンテンツ体験が広告に与える影響」の模様をお届けする。

パート④ デバイスの進化で変わりゆく生活体験と広告の未来