左からビデオリサーチ 吉田正寛氏、スポティファイSpotify藤井哲尚氏、TVer中川卓也氏、ワーナーブラザースジャパン八木悠水氏

06 JAN

デバイスの進化で変わりゆく生活体験と広告の価値「TVer Biz Live with Spotify」開催レポート④

編集部 2022/1/6 09:30

株式会社TVerとスポティファイジャパン株式会社の合同によるオンラインカンファレンス『TVer Biz Live with Spotify』が、2021年10月27日に開催。民放公式テレビポータル「TVer」と世界的な音楽配信サービス「Spotify」、日本と世界を代表するオンラインメディアにおける、最新の広告関連のトピックが4つのセッションで紹介された。

パート① TVer×Spotify “プロ”コンテンツの正しい広告価値

パート② 大手メディアで初導入!完全視聴の課金をスタート「TVer広告」について

パート③ 生活に寄り添う“音”で広がる「Spotify」の広告モデル

パート④ デバイスの進化で変わりゆく生活体験と広告の未来

バート④では、株式会社ビデオリサーチ ソリューション室 マーケティングソリューション部 シニアエキスパート・吉田正寛氏がモデレーターを務め、パネリストとして藤井氏とワーナー ブラザース ジャパン合同会社 映画/マーケティング本部・八木悠水氏、株式会社TVer PO室・中川卓也氏によるパネルディスカッション「新デバイスと広告のこれから 〜スマートスピーカー・コネクテッドTVなど パートナーコンテンツ体験が広告に与える影響」の模様をお届けする。

■接触時間や対応デバイスが増え、さまざまな生活シーンへのタッチポイントを網羅

まずは吉田氏が、コロナ禍におけるメディア環境の変化に関するスライドを紹介。「オンラインメディアへの接触者が増えているだけでなく、利用時間が増えている」とし、「こうした時代のなかでポイントになるのは、個人への最適化なのではないか」と問題提起。「TVerとSpotify、それぞれ接触が増えている要因は何か」と尋ねた。

質問に対し「とくにコネクテッドTVでのアクセスはPCを超えるほどになっている」と応じたのが中川氏。「デバイス別のアクセス時間のヒートマップを見ると、スマートフォン・PCとコネクテッドTVでは見られ方の時間帯にずれが見られる」といい、「ユーザーの方々が自分の見たいタイミング、見たいデバイスでコンテンツに触れられるようになった結果、総量としての接触時間が増えたのではないか」と語った。

すると藤井氏は、「コロナ禍を経て『音がある生活』が一般化するなかで、スマートフォンにとどまらず、スマートスピーカーやコネクテッドTV、また車の中でスマートフォン連動型のコンソールを経由してなど、さまざまな形で音が聞ける環境になってきた」と新デバイスの進化と普及に言及し、「音がある生活時間が延びることで利用シーンとデバイスの組み合わせが広がってきた」とコメント。

また、「コロナ前は朝夕、仕事の行き帰りの時間帯に利用のピークがあったが、コロナ禍においては(おうち時間の増加にともなって)日中の時間帯になだらかな山が形成されるようになった。生活が多様化していること以上に『音が鳴る状態』が多様化し、そこに多様なデバイスが組み合わさっている」と話した。

「映画を商材とする企業としては、大きなスクリーンでコンテンツを見ていただくことにメリットを感じている」と切り出したのが八木氏。「現在は映画やエンタメのファン層にリーチするよう広告をプランニングしているが、そのなかでも媒体間の重複を見つつ、タッチポイントを増やすことを意識している」といい、「インターネットとの親和性が高いTVerやSpotifyは、常に広告配信先として注目している」と語った。

■あらゆる生活シーンをタッチポイント化。コンテンツと親和性の高い広告で印象づける

続いて「新たなデバイスが浸透することと、広告の効果面との間に関係性はあるか」という問いに対し、藤井氏は「接触と広告効果の関係性を個別のデバイスごとにどう計測するかが課題。たとえば、画面を持たないスマートスピーカーの場合、現在の技術では広告から直接ウェブサイトへ誘導させることができないが、ボイスインタラクションなどの新しいテクノロジーを入れることで、計測可能になってくるだろう」と展望を述べた。

また、Spotifyでは、ひとりのユーザーが複数のデバイス環境で聞くことを想定しており、「同じ広告素材であっても、スマートフォンやスマートスピーカーなど、それぞれ聞かれるデバイスによって生活のモードが異なる。現在は、コミュニケーションの入り方や深まり方、“耳残りのしかた”という面において『(デバイス環境を横断し)いかにユーザーへ自然に入ってきやすいか』を狙う風潮が顕著だ」と語った。

続けて八木氏は「リターゲティングや運用型広告と、TVerやSpotifyのようなプロコンテンツへの広告出稿との間には、どのような違いがあるか」との問いに対し、「TVerやSpotifyのユーザーはエンタメへの感度が高く、顔がはっきりと見える。届けたい情報をしっかりご覧いただくという意味でも、親和性の高い媒体は常に出稿先として検討している」とコメント。「直近では、“感動作”の映画をプロモーションするにあたり、『地上波のドラマを見ている層との親和性が高いだろう』ということでTVerへ広告出稿を行ったり、他の作品でもSpotifyで3Dサラウンドによる音声広告を展開したりと、一緒になってチャレンジを行っている」と明かし、「親和性の高いユーザーに対し、印象に残るクリエイティブでリーチするということは常に意識している」と語った。

また、藤井氏は、サービスやデバイスの多様化により、生活の中でのあらゆるタッチポイントが網羅されたことで、「より伝えたいメッセージが伝わるシーンを類推しやすくなった」と、世の中の進化に言及。「たとえば『家族の時間を過ごしているとき』や『家事をしているとき』『寝ようとしているとき』など、それぞれの生活のシーンとデバイスを組み合わせることによって、商材にとってもっとも最適なメッセージでコミュニケーションを図ることが可能になり、ターゲットとの新しいつながりや、新しい効果を生み出すことができる」と話した。

中川氏は、「CMがどこで流れているのかの重要性」について提言。「オーディエンスターゲティングも非常に重要だと思うが、それにプラスして、『このCMがどのコンテンツのなかで流れているのか』という点も、指標としてはすごく大事であると思う」と語った。

■コンテンツやモーメントに対するマッチングが、広告の効果を担保する

藤井氏は「今までにない広告体験を作ることで、オーディエンスとブランドが一緒に楽しむという試みができ、さらにそれが新たな効果を生み出す」と語り、「デジタルならば、誰がどのように反応したかが明確に見える」といい、「コンテンツメディア広告という分野が、これからも成長していく手応えを感じる」と期待を寄せた。

「TVerは、人へのターゲティングをやりつつ、コンテンツに対するターゲティングもできるプラットフォーム」と語ったのは中川氏。「同じ広告であっても、『夜、ひと息ついてドラマを見ているシーン』と、『ランチ休憩中にバラエティを見るシーン』とでは感じる気持ちが違うと思う」といい、「このようなシーンや配信先のコンテンツの違いが広告に対してどのような効果の違いを生むのか、という部分について研究を進めたい」と話した。

八木氏は「TVerとSpotifyのユーザーはエンタメと親和性が高く、なおかつ高い完視聴率を持つという点で、非常に注目している」と共通点をあげ、「引き続き、さまざまな作品のプロモーションで、チャレンジングなご相談ができれば」と語った。

最後に、「ターゲットのマッチだけではなく、コンテンツやモーメントとのマッチングというところに非常に重要性がある」と吉田氏。「これらによって、これからますます広告の効果を担保できていくのではないか」と語り、パネルディスカッションを締めくくった。

■コンテンツの感動や魅力から、より幸せな広告体験を作り出す

左から テレビ東京 冨田アナ、TVer 蜷川氏、スポティファイジャパン 藤井氏

今回のカンファレンスを振り返り、「広告主のみなさまとご一緒しながら、より明るく、幸せになる広告体験を作っていけたら」と藤井氏。蜷川氏も、「これからの広告においては、どういうタイミングで、どんなメッセージを、どんなコンテンツとして届けるかということを、もっと意識していかなければいけない」とあらためて強調。

「TVerは多くの方に見ていただいているコンテンツだが、視聴体験を通じて得られる感動や魅力を共有できるっていうことを、本当に広告に活かしていくためにも、さらなる情報提供をしていかなければならない」と蜷川氏。「これまでのテレビの良さを活かしつつ、デジタル広告の優れた部分を取り込んでいき、われわれにしかできないサービスを提供していきたい」と抱負を語り、この日のカンファレンスを終えた。