リアルタイム視聴回帰も期待!個々のテレビ接触をオンラインで同時に計測できる新特許技術
編集部

D.A.コンソーシアムホールディングス株式会社(本社:東京都渋谷区、以下 DACHD)とデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(本社:東京都渋谷区、以下 DAC)は8月17日、コンテンツ認識技術により、テレビの音声をとらえることでユーザーが視聴しているテレビ番組やテレビCMなどを特定し、その内容に応じて最適なコンテンツや広告を配信するシステムに関する特許の取得を発表した。そこで、本プロジェクトに携わったDAC ブランドマーケティング本部 副本部長 砂田和宏氏と、同部 プロデューサー 脇幸大氏に、特許取得によりどのようなことが実現するのか、今後の展開と併せてうかがった。
■特許の概要について
今回新たに取得した特許は、テレビ番組やテレビCMなど、テレビから発信される音声をユーザーの許諾(アプリケーション起動)の上、スマートフォンのマイクで捕捉することにより、ユーザーのテレビ接触をオンラインでリアルタイムに把握できるという技術だ。
この技術を用いることで、捉えたデータを他データ(IDFA、ADID、クッキー)と照合し、テレビとデジタルを連動した広告キャンペーンや、番組表や関連情報をアプリ上に瞬時に表示できるといった、オフライン(テレビ視聴)からオンラインまでワンストップでのユーザー捕捉を実現する。

https://www.dac.co.jp/press/2018/20180817_patent (参照)
砂田氏は、「本特許の仕組みを説明すると、音声そのものを取得していると勘違いされることがあるが、実際は識別した音を暗号化し、特徴点のみをマッチングしている。また、SNSやニュースサイトの画面をスクロールしたときに情報が表示される仕組みで、プッシュ型で情報や広告が届くことではない」と補足した。

https://www.dac.co.jp/press/2017/20170713_evixar (参照)
本特許取得の背景には、DACが音声認識技術「ACR(Automatic Content Recognition)」を活用した広告配信システムの開発にかねてから取り組んできたこともあるが、2017年7月に音声信号処理技術の研究開発を行うエヴィクサー株式会社(本社:東京都中央区、以下 エヴィクサー)と、今年3月にコンテンツ配信プラットフォームを運営する株式会社リボルバー(本社:東京都港区、以下 リボルバー)と資本業務提携を締結したことも大きく関わっている。それにより、DACが提供するアドサーバー「FlexOne®️(※1)」とエヴィクサーの音声認識技術、リボルバーのクラウド型CMS「dino(※2)」といった各種ソリューションと組み合わせ、より効果的な広告やコンテンツをユーザーに提供できるようになったのだ。加えて、同社のDMP「AudienceOne(※3)」との連携により、ユーザーごとのオフラインメディアへの接触状況に応じた最適なデジタル広告や、コンテンツのターゲティング配信も実現した。
砂田氏は、「既に一部のプロジェクトでは視聴ログは取得できており、本特許技術の利用の仕方によっては、リアルタイム視聴回帰も期待できる」とコメントした。
(※1)媒体社向けの広告ビジネスの成長に貢献する統合プラットフォーム (※2)モバイルでの閲覧やソーシャルでの拡散に最適化されたコンテンツ配信プラットフォーム (※3)広告配信結果、ソーシャルメディア、提携企業の3rd Partyデータなどを収集・解析し、見込顧客の発見や既存顧客のロイヤルカスタマー化などの様々なマーケティング施策に活用できる国内最大級のデータ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)。https://solutions.dac.co.jp/audienceone
■身近なところでも利用されている音声認識技術の実用例
音声認識技術を利用した取組みというと、スマートスピーカーを筆頭に、各テレビ局でも双方向ツールや視聴施策で活用するといった取り組みがなされているが、それ以外でもあらゆる実用例がある。

例えば、千葉ロッテマリーンズでは、球団公式アプリ「Mアプリ」にて、「Sound Flash(サウンドフラッシュ)」機能が搭載され、ビジョンや場内演出の音楽に合わせてアプリの画面がカラフルに変化。スタメン発表やホームラン、勝利後の演出などで、音と連動してシーンを盛り上げている。同様に、アーティストのライブを盛り上げるアイテムとして、最近ではももクロの屋外イベントや、有名アーティストのコンサートツアーでも活用された。他にも、劇団四季『ライオンキング』では、スマートグラス「MOVERIO」(モベリオ)を使用した多言語字幕サービスが開始されており、外国人観光客はじめ、聴覚障害者の観劇支援としても活用中だ。
■放送局における特許技術の実用化に向けて
本特許技術を活用することで、近い将来どのようなことが実現するのか、今後の展望を砂田氏に尋ねると、「放送前に番組の予告を行うことでリアルタイム視聴を促したり、放送後に出演者や商品情報、見逃し配信への誘導といった取組みにも着手できるのではないか。また、よく視聴するテレビCMをインターネットでも配信するといったことも実現する」と、放送局とユーザー、双方のメリットに触れた。何より、本特許技術はアプリを起動することで提供されるサービスになるため、世帯視聴データではなく、個人視聴データを取得できることから、「番組制作や編成にも活用できるのではないか」と、各方面へ提案中だ。
さまざまな業界であらゆる展開が期待できる本特許技術が、今後どのような施策や実用化へと結びつくのか、引き続き動向を見守っていきたい。