キャッチアップ配信「TVer」はリアルタイム視聴に好影響を与えるのか?
04JUL

キャッチアップ配信「TVer」はリアルタイム視聴に好影響を与えるのか?

編集部 2016/7/4 07:00

サービス開始から1年が経とうとしている「TVer(ティーバー)」。今回は龍宝氏に、キャッチアップ配信とリアルタイム視聴の相関関係について語ってもらった。たとえば、連続ドラマなどをキャッチアップできるとなると、その後の回にどのような影響を及ぼすのだろうか。

■キャッチアップ視聴が、リアルタイム視聴に与える好影響

キャッチアップサービス「TVer(ティーバー)」では配信番組数がまだそれほど多くないこともあり、リアルタイムの視聴率にどこまで影響を与えているか、数値的に断言しにくいのが現状だ。しかし、一部のドラマでは「最終回に向けて視聴率がアップすると同時に、配信数が減少した」という現象も起きているのだそう。

最終回に向けて視聴率がアップすると同時に、配信数が減少した実例最終回に向けて視聴率がアップすると同時に、配信数が減少した実例

「“配信”ユーザーが『最終回はリアルタイムで見たい』と判断して、視聴率に好影響を与えている可能性もあります。TVerのターゲットの一つは、テレビをリアルタイムで見ることができなかった“テレビ”ユーザーです。これまでは録画や違法配信などの手段を使って見逃したテレビ番組を見ていた人の要望に応えるサービスなので、リアルタイムの視聴率に対してプラスαの効果に期待しています」

では、実際のキャッチアップ配信数の増減には、どういった現象が隠されているのか。第1話をリアルタイムで視聴できなかったドラマファンが、見逃し視聴のツール(キャッチアップ配信や録画等)で番組を見て、面白いとなったら第2話からはリアルタイムで見る可能性が高まるのは安易に想像が付く。ならばドラマの配信数の傾向としては、まず初回が高く、2話目以降は配信数が減少し、視聴率の傾向と合わさって推移するケースが多いのではなかろうか…。

「初回の配信数が多いことは確かです。2話以降の推移については、もちろん視聴率が高く人気のドラマの方が、配信ニーズも高い傾向がありますが、配信数を左右するのはそれだけではなさそうです。評判の高いドラマでは、後半に向かって視聴率は上昇するのに配信数はそれほど伸びないという現象が起こることがあります。これは、ドラマの中盤は見逃し配信でフォローしても、最終回はリアルタイムで視聴したいというユーザーが多いと考えられます。」

龍宝氏の見解では、キャッチアップ視聴がリアルタイム視聴のアップに好影響を与えている可能性も高いということになる。

■キャッチアップ配信がネガティブに働く可能性

今後キャッチアップ配信が定着することにより、「リアルタイムで見なくてもいいじゃないか」というユーザーが増えれば、リアルタイムの視聴率にネガティブに働く可能性は大いに秘めているのではなかろうか。

「それはないとは言えません。今のところ個別のデータでは顕著なものは出てきていませんが、全録機の普及などと相まって、視聴者のテレビ番組に対する接触の仕方が大きく変化していくのではないかという想定はしています。一部の視聴者には、好きな番組だからこそ後でしっかり・じっくり見たい、というニーズもあるようです。だからこそ、リアルタイムで見ることの価値付けを別に検討する必要があります。なかには公式配信がなくても、録画視聴や違法配信で視聴しようとするユーザーがいますから、彼らをリアルタイム視聴の場に戻すためのインセンティブの研究は常にすべきです」

どうしても見たい番組を“録画して見る”のではなく“リアルタイムで見る”ことに意味があるような戦略を練るのは、配信サービスの拡大とは別次元の話として、放送局としての重要な課題だと龍宝氏は付け加えた。

■深夜番組が異例の配信数?新しい接触スタイルが生まれた

「キャッチアップ配信とリアルタイム視聴率には相関性がありそうにも思えますが、まだまだ視聴率と配信数の定型的な相関関係ははっきりとしていません。視聴率の高い人気番組は当然、配信数も多くなる傾向が強いものの、深夜番組などは視聴率のわりに配信数が高くなることもあります。放送に気づいていないユーザーが、配信きっかけでテレビ番組に接触する……ということだとしたら、サービスとしては望ましい広がりを見せていると思います」

まだサービスが定着していないことや、データのサンプルが少ないため、特徴や傾向を判断できるところまでの知見は持ち合わせていない。しかし、これからデータを積み重ね、リアルタイムの視聴率との関係性がはっきり分かるようになれば、より戦略を立てやすくなると龍宝氏は語っている。一方、サービスが拡大してきて、リアルタイム視聴率に比べてキャッチアップ配信の反応の方が高い番組も出始めてきているようだ。

TBSではこの春、水曜日の深夜に放送した「毒島ゆり子のせきらら日記」(番組の平均視聴率は3%弱)を、キャッチアップ配信した。するとその配信数は、GP帯のドラマに匹敵する記録を出したと言う。他にも、昨年放送・配信していた「ラストキス」や「恋んトス」などの若年層向けのバラエティも、関東ローカルの深夜番組としては異例の配信数を獲得していると言う。このように、視聴率と比較して配信数が格段に大きい番組の特徴はどこにあったのだろうか。

視聴率と配信数が相対的となった実例視聴率と配信数が相対的となった実例

「これらの番組は若年層、特に女性に大きくヒットしたようです。深夜のリアルタイムの時間帯には起きていない女性が、自分が一人で楽しめる時間帯でテレビコンテンツを楽しむ、という新しい接触スタイルを確立したのではないでしょうか。このようなターゲットの深夜番組では、視聴率と比べて配信数が相対的に多くなる傾向がありそうです」

これまでの動画配信サービスのメインユーザーはM2・M3の男性層が主流だったが、サービス全体としても、最も欲しいターゲットが動画配信サービスに入ってきていると龍宝氏は言う。これからも、新しい接触スタイルを生めるような番組の配信を増やしていくそうだ。

[vol.1]キャッチアップ配信「TVer」が“トライアル”から‟本格稼働”へ

[vol.2]キャッチアップ配信、最大の目的は何か?見えてきた課題と展望

――TBSテレビメディア戦略室長 龍宝正峰氏プロフィール
1987年に株式会社東京放送に入社、以来営業セクションでキャリアを積み、2013年から編成局、2016年から現職。

テレビドラマの初回はできるだけ全局チェックしたい派。オフはできるだけ仕事に関係のない本を読みたいと思っており、つい最近は「楊令伝」(北方謙三)を2回読破。基本、歴史モノや推理小説を好む。日本メーカーを応援したいという気持ちから、スマホは富士通のAndroid。よく見るwebサイトはニュース系アプリ、一方生粋の阪神ファンなのでプロ野球情報サイトは必須。仕事のモットーは「人の意見を尊重すること」。特に若い人たちの意見に耳を傾けることを大事にしています。

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